走行中の「ハイドロプレーニング現象」どう対処すべき? やっちゃいけない「NG行為」も!? スリップ事故を防ぐ方法は
くるまのニュース / 2023年7月9日 7時10分
「ハイドロプレーニング現象」は、雨の日に走行していて、クルマのコントロールが効かなくなるという怖い現象です。実際にハイドロプレーニング現象が起こったらどうなるのでしょうか。
■ハイドロプレーニング現象の経験者はどう行動した?
雨の日のクルマの運転でもっとも注意したいのが「ハイドロプレーニング現象」です。
ハイドロプレーニング現象は、タイヤと路面の間に水が入り込み、グリップ(摩擦力)が失われる状態のことをいい、「水膜現象」とも呼ばれています。
通常は、路面との間に入り込む水をタイヤの溝が排出しているのですが、水たまりや大雨でタイヤの排水能力を超えると、タイヤが水に浮いたような状態になってアクセルもブレーキもハンドル操作も効かなくなってしまうのです。
とくに雨の高速道路で発生しやすく、大事故につながる恐れもあり危険です。
実際にハイドロプレーニング現象が起きるとクルマはどうなるのでしょうか。経験者に話を聞いてみました。
Fさん(50代・男性)はスポーツクーペを所有しており、行楽に出かけたそうです。その日は快晴で、気温が高く蒸し暑い気候だったといいます。
「遠出した帰りに高速道路を順調に走行していたのですが、天候が急変して薄暗くなったと思ったら、突然のゲリラ豪雨に見舞われました。
土砂降りのなかに突入したとたん、一気に視界不良になりました。それでも何とかなると甘く考えていたんですが、突然クルマがコントロールを失ってしまいました」
Fさんは法定速度の時速100kmで追い越し車線を走行していたとのことですが、嫌な予感がしたのですぐにアクセルを緩め、ハンドルを軽く左に切ると、まるで滑空するがごとく、スーッと前に進むだけの状態になったそうです。
「ハイドロプレーニング現象だと思い、速度を落とすためにアクセルから足を離し、バランスを崩さないようにハンドルはまっすぐ、ブレーキペダルを踏みたい気持ちを抑えて、とにかくそのままグリップが回復するのを待ちました。
体感的には数十秒でしたが、多分実際はほんの数秒だったのでしょう、その姿勢をキープしたのですが、幸いにも路面が排水性の良い舗装に切り替わり、グリップが確保できた感触がハンドルから伝わってきたことが感じられ、事故にならずに済みました」(Fさん)
Fさんの場合は、かなり幸運が重なったことで生還できた可能性があります。
まず良かったのが、アクセルやブレーキ操作をしなかったことです。また闇雲にハンドル操作しなかったのもラッキーでした。下手にハンドルを切った場合、グリップが回復した途端、前輪が左右どちらかに舵を切っていればその方向へと姿勢が変わり、スピンする可能性もあります。
また高速道路が直線だったことも幸いしました。これが緩やかな曲線が続くような高速道路であれば、左右どちらかに流れていた可能性もあったでしょう。
そして路面が排水性舗装(透水性アスファルト舗装)に切り替わったのが最大の幸運でした。そうでなければ、流されたままの状態が続くことでコントロールを失い、中央分離帯や路肩、または周囲のクルマと接触していたかもしれません。
「タイヤは数年替えてなかったので、硬化していたんだと思います。それからは、必ず天気情報を確認し、タイヤの状態をより気にするようになりました」(Fさん)
※ ※ ※
ハイドロプレーニング現象に陥った場合は、ハンドルをどちらかに切ったり、アクセルやブレーキ操作はせずに、グリップが回復するまで挙動を乱さないようにすることが何よりも大事ということが分かりました。
■ハイドロプレーニング現象はなぜ起きる?
ハイドロプレーニング現象の原因はいくつかあります。
もっとも多いのはタイヤ本来の排水能力を超える降雨量のなかを走行することですが、タイヤの摩耗具合(溝の減り具合)や経年で硬化したことによるグリップ力の低下、空気圧不足、そしてスピードの出し過ぎなどが挙げられます。
雨の高速道路で「ハイドロプレーニング現象」発生しやすい
タイヤは消耗品といわれており、経年によって確実に劣化していくパーツです。走行距離が短く溝も十分に残っていたとしても、実際はタイヤのゴムが硬化して路面をしっかりとらえられなくなってしまうこともあります。
またタイヤの空気圧が不足すると、タイヤがたわんで接地面積は大きくなるのですが、タイヤを路面に押し付ける接地圧が不足します。そうすると十分な排水能力が確保できなくなり、結果としてハイドロプレーニング現象が起きやすくなるのです。
そして、こういったタイヤの状態とともに、ハイドロプレーニング現象の引き金になるのが速度です。
時速80kmを超えると発生のリスクが高まるため、高速道路で悪天候になると「最高速度80km」に規制されますが、これはハイドロプレーニング現象が発生しにくくなる時速80km以下にまで走行速度を落とさせる目的があるといいます。
※ ※ ※
水溜まりの深さによっては低速でもハイドロプレーニング現象が起きてしまうことがあります。
バンパー付近まで冠水してしまったような状況では、タイヤがほぼ浮いた状態になり、コントロール不能になるのは当然のこと。事故や立往生といった危険な状況に発展する可能性もあります。
梅雨シーズンで予測不能なゲリラ豪雨に遭遇する可能性も多いため、タイヤの点検だけでなく雨の日は速度を十分に落とし、安全運転を心がけましょう。
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