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伝統の「スカイライン」はどうなる!? ビッグネーム「ブルーバード」「サニー」「セドリック」はなぜ廃止されたのか

くるまのニュース / 2023年6月30日 19時10分

日産は2000年前後に、伝統の車名を次々と廃止してしまいました。一体なにがあったのでしょう。そして唯一残ったビッグネーム「スカイライン」は、今後どうなっていくのでしょうか。

■日産最初のビッグネームは「ブルーバード」から始まった

 1950年代から1960年代に登場し、日産の躍進を支えた「サニー」「ブルーバード」などの車名も、消えてからかなりの時間が経ちました。
 
 老若男女に関わらず、国民の誰しもが知るほど有名だった「ビッグネーム」は、どうして消えてしまったのでしょうか。

 個人所有の「マイカー」が夢のまた夢だった1950年代。しかし1954年、のちに東京モーターショーに発展する「全日本自動車ショウ」が日比谷公園で初開催され、続く1955年に日本初の純国産乗用車となるトヨタ「クラウン」が、1958年には軽自動車のスバル「360」が誕生し、日本にもマイカーを所有する機運が到来しました。

 そのなかで日産は、1952年にイギリスの「オースチン」と提携してオースチン車のノックダウン生産を行い、乗用車製造の技術を取得。1955年からは「ダットサン乗用車(ダットサン110/210型)」を販売しています。

 そして1959年に発売された「ブルーバード」(310型)は、大幅に改善された操縦性や乗り心地、近代化されたデザインも相まって大成功しました。

 アメリカでも堅調な売れ行きを示し、日産が北米市場で躍進する足がかりを作ります。

 その後ブルーバードは2001年まで10世代にわたり販売され、日産を代表するファミリーカーとして多くのユーザーに愛されていました。

 しかし2000年登場の直接的な後継モデルは、サブネームがついた「ブルーバード シルフィ」という車名に(しかも車格はひとつ下のサニークラス)。

 さらに2012年には「ブルーバード」の車名が外れることになり、53年の歴史を誇ったビッグネームのブルーバードはここに終了しました。

■「サニー」や「セドリック」「グロリア」も過去のネーミングに

 また、ブルーバードよりもコンパクトなクラスを狙い、1000ccエンジンを搭載して1966年に生まれたのが「サニー」です。

一時はトヨタ「カローラ」と販売台数を競い合った大衆車ブランド「サニー」[写真は「トラッドサニー」の愛称で知られる、6代目の日産「サニー」(B12型)]一時はトヨタ「カローラ」と販売台数を競い合った大衆車ブランド「サニー」[写真は「トラッドサニー」の愛称で知られる、6代目の日産「サニー」(B12型)]

 軽快なデザイン、低価格、必要十分な性能と装備を持つ大衆車として大ヒット作となったサニーもまた、日産の主力小型車として多くの人にその名を知らしめ、時代の要請に合わせた発展により9世代を重ねました。

 しかし2006年に、2004年登場の「ティーダラティオ」に後を継いでその名を消すこととなりました。

 なお現在では、一部の海外市場では「ラティオ」や「セントラ」をベースとしてその名が復活しています。

 一方、初代サニーが誕生した1960年代頃には、日産初となる高級車ブランドも誕生しました。

 1950年代における日産の上級車種は、ノックダウン生産された「オースチンA50ケンブリッジ」が充てられていました。

 しかしライバルのクラウンと比べると車体が小さく、不利な要素があったことから、1960年に純国産の「セドリック」を発売して、それを置き換えました。

 全長4.6m、全幅1.7mという堂々とした体躯や、同時代のアメリカ車の影響を大きく受けたデザインにより、高級車にふさわしい威厳を備えることに成功しました。

 1966年に日産はプリンス自動車工業を吸収合併したため、同社の上級車種「グロリア」が「セドリック」と併売されるかたちとなっていましたが、1971年には「セドリック」と同一車体を持つ兄弟車となり、販売店ごとにその名を使い分けることになりました。

 セドリック/グロリアは長年にわたり「セドグロ」と称され、日産の高級車として親しまれましたが、1999年、タクシーなどの営業用モデル(セドリック営業車)を除き、後継の「フーガ」に一本化され、名前が消滅しています。

■日産の「ビッグネーム」が消えた理由とは

 このように日産では、1990年代末から2000年代、そして現代にかけて「サニー」「ブルーバード」「セドリック」「グロリア」といったビッグネームが次々と消えて行きました。
 
 国民の多くがその名を知っていたような伝統・由緒ある車名ですが、どうして消滅してしまったのでしょう。

広く定着したはずの車名をあっさりなくしてしまった日産の政策は、果たして正解だったのでしょうか[写真は7代目「セドリック」(Y31型)]広く定着したはずの車名をあっさりなくしてしまった日産の政策は、果たして正解だったのでしょうか[写真は7代目「セドリック」(Y31型)]

 その理由の根本には、当時の日産の経営不振があげられます。

 高い技術力で多くのファンを獲得してきた日産ですが、1990年代には各モデルの販売台数が低迷。経営改革の遅れなども合わせ、経営危機に陥ります。

 そこで1999年、日産はフランスのルノー傘下に入って立て直しに着手することになりました。

 新たに就任したカルロス・ゴーンCEOは、「コストカッター」の異名の通り工場の集約と廃止、国内生産台数キャバシティ・大幅な人員削減など大胆な施策を断行してV字回復に成功しました。

 しかしその際、車種の整理統合も実施され、「ローレル」「パルサー」「シルビア」などもカタログから落ちてしまったのです。

 とはいえ、サニー、ブルーバード、セドリック、グロリアなどのメイン車種には後継車もあったので、長年培われたブランド車名まで消してしまう必要があったのだろうか、と筆者(遠藤イヅル)は考えずにはいられません。

 当時、各車ともユーザー層が高齢化していたことから、リバイバルを機に新たな名前を与えることでイメージを一新、新たなユーザー・市場の開拓を目指していたのも事実です。

 ブランドイメージが古くなる、というのは日産に限ったことではありません。

 トヨタでも「コロナ」を「コロナプレミオ」と改名、かのカローラでさえ、「アクシオ」といったサブネームを与えていた時期もありました。

 しかしカローラは2018年から2019年にかけて実施したフルモデルチェンジで、「高齢層が乗るクルマ」を脱して若返りに成功。

 クラウンも姿形こそ大きく変わったものの、「伝統の国産高級車」というブランド力をむしろ積極的に誇示して販売を行なっており、時代が変わってもブランド名を残し続けることの重要性を説いています。

 そう考えると、かつて日産が打った「ビッグネームの主力車種まで車名を変えてしまう」という手は、少しやりすぎだったのではないでしょうか。

■最後のビッグネーム「スカイライン」は生き残れるのか

 カローラやクラウンと同じように、日産がもしビッグネームを残していたら、今頃どうなっていたのでしょうか。

 というのも、セダン市場の斜陽化という側面は無視できなかったにせよ、改名し誕生した後継モデルは、いずれも大成功を納めたとはいえないからです。

 現に「ティーダラティオ」「シルフィ」「フーガ」はすでに、すべて消えてしまっています。

もはや伝説級のブランドといえる「スカイライン」を紹介する日産自動車 星野朝子 副社長[写真は2019年に行われた現行型(V37)スカイラインのマイナーチェンジ時の記者発表の模様]もはや伝説級のブランドといえる「スカイライン」を紹介する日産自動車 星野朝子 副社長[写真は2019年に行われた現行型(V37)スカイラインのマイナーチェンジ時の記者発表の模様]

 そのなかで、ひとり気炎をはく日産のビッグネームがあります。消滅の危機を乗り越え、いまも存在を続ける「スカイライン」です。

 スカイラインはプリンス自動車工業から1957年にデビュー。日産との合併も経ながら、65年以上が経過した今も根強いファンが多く存在します。

 現在もスポーツセダンとして存続していますが、現行型(13代目)は2013年のデビューから10年が経過し、SNSなどではそろそろ新型の登場を、と期待する声も多く見られます。

 ほぼ同時期の1955年に初代がデビューし、スカイライン同様に今も歴史を重ねているクラウンは、SUV化や海外市場への進出を敢行して賛否を巻き起こしました。

 しかし単に延命させるのではなく、新たな4つの車系へ分化させる積極策に打って出たことは注目されるところです。

 歴史あるクラウンというビッグネームをベースに、トヨタやレクサスとは異なる新たな流れを生もうとする気迫すら感じさせます。

 スカイラインもまた、現代の潮流に合わせた変化を行ってでも、生き残り続けて欲しいと筆者は強く願っています。

 もはや伝説ともいえるそのブランド力を消すには、あまりにも惜しいビッグネームだと思うのです。

※ ※ ※

 日産の星野朝子 副社長は2021年6月、一部の新聞が「スカイラインが廃止される」と報じた直後、会見で「日産自動車はスカイラインを決してあきらめない」と宣言したことで、クルマ好きの間で話題を呼びました。

 しかしそれから丸2年が経過したものの、新たな発表はみられません。

 期待し待ち続ける日産ファンのためにも、そろそろ次なる“宣言”を待ちたいところです。

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