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スバルがMT車に「アイサイト」を初搭載! 新たな「運転支援機能」なぜ導入? 開発の裏にある3つの理由

くるまのニュース / 2023年6月22日 13時10分

スバルはMT車向けの「アイサイト」を新たに開発し、「BRZ」の改良モデルに初めて搭載します。一体どのような背景があるのでしょうか。

■MT車でも運転支援機能は必要!

 スバルが同社の運転支援システム「アイサイト」をMT車に搭載することになりました。第1弾となるのは、2023年秋に改良される「BRZ」です。
 
 それにしても、なぜ、MT車向けアイサイトがこのタイミングで登場するのでしょうか。

 今回、オンラインで会見したスバルのアイサイト開発者らは、質疑応答の際、「スポーツカーでも安全安心を提供するため、以前から(アイサイト搭載を)検討をしてきた。(今回は)新しい技術や機能による品質がユーザーに満足していただけるタイミング」という、少々まどろっこしい回答でした。

 そこで、これまでのアイサイト開発の流れや、スバルの事業戦略方針、さらに自動車産業界におけるスバルの立ち位置など多角的な視点で、「なぜ、このタイミングでMT車向けアイサイトが登場するのか?」について考えてみたいと思います。

●理由その1:2025年問題への早期決着

 ひとつめの理由は、規制対応です。衝突被害軽減ブレーキの義務化が2025年に実施されることが関係しているのでしょう。

 国連の欧州経済委員会・自動車基準調和世界フォーラム(WP29)という国際的な枠組みのなかで、保安基準等の改正において、自動車の衝突被害軽減ブレーキの義務化が決まり、これに日本も準拠しています。

 国産車については、新型車は2021年11月から、また継続生産車は2025年12月から適用。この継続生産車について、衝突被害軽減ブレーキ搭載適用が難しいモデルは2025年12月以降に姿を消すことになりかねないといわれてきました。

 BRZに関しては、2021年のフルモデルチェンジでAT車に先行してアイサイトを搭載しましたが、MT車は非搭載となっていたのです。

 BRZの変速機別販売比率はMTが6割、ATが4割。BRZはもちろん、兄弟車のトヨタ「GR86」もMT車の人気が高く、今後のMTの存続について心配するユーザーも少なくなかったでしょう。

 そこで、規制実施の約2年前である2023年秋の時点で、現行車の量産は2025年12月以降も続けていくという意思をユーザーに知らせることを、スバルが重視したといえるでしょう。

 むろん、ほかの領域における商品改良との絡みもあり、「まずはできるところからやる」(アイサイト開発者)という姿勢です。

※ ※ ※

 今回新開発されたMT車向けアイサイトの機能は、衝突被害軽減ブレーキと追従機能付クルーズコントロールが主体で、操舵支援については採用していません。

 理由について開発担当者は「BRZはステアリングコラムにギアシステムがあり、(ほかのスバル車と比べて操舵支援に対する)制御の指示から操舵までの間に応答遅れが出る懸念があるため」と、ハードウエアにおける制約があると指摘しました。

 そのうえで「やれるところからやる」と、BRZの商品改良に対する前向きな姿勢を示しています。

■アイサイトは「スバルらしさ」のシンボル

●理由その2:半導体メーカーとの綿密な連携

 前述の「やれるところからやる」という点について、これは見方を変えると、「やれるところからやれる」といえるでしょう。

 背景にあるのは、スバル社内およびサプライヤーとスバルとの間での設計、開発、実験との連携が、現行「レヴォーグ」から採用している次世代(また新世代)アイサイトから、さらに綿密になっていることが挙げられます。

BRZに搭載される「アイサイトver.3」BRZに搭載される「アイサイトver.3」

 2023年4月に横浜で開催された、第27回自動車の安全性に関する国際会議(ESV国際会議2023)を取材した際、アイサイトの開発に長年携わってきた、技術本部上級PGMでスバルラボ所長の柴田英司氏に改めて、アイサイトの強みについて聞きました。

 柴田氏は「イメージセンサーなどの開発で、(ほかの自動車メーカーと比較すると)スバルは半導体メーカーなどのサプライヤーと極めて近い関係性を持っている」という点を指摘しています。

 アイサイトの開発では、実験部門がリアルワールドにおけるドライバーのフィーリングなど目標をしっかり定め、設計部門と緊密に情報交換してきました。

 アイサイトのハードウエアとソフトウエアについては、バージョン3までは国内部品メーカーが開発していたのですが、次世代(新世代)アイサイトでは、カメラ本体がスウェーデンとアメリカの合弁会社であるヴィオニア、イメージセンサー用の半導体はアメリカのオン・セミコンダクター、そして画像認識用の半導体はアメリカのザイリンクスが担当しています。

 こうした海外サプライヤーとスバルの設計、調達、実験それぞれの部門が連携することで、バージョン3までは構想はあっても、量産化のハードルがあったMT車向けアイサイトに対する道筋が見えていったのだと筆者(桃田健史)は考えます。

 また、現状でのスバルの開発体制においては、複数のモデルに対して同時並行でアイサイトを開発することは難しいと、これまでのアイサイト関連の複数の開発者から指摘がありました。

 そのため、次世代(新世代)アイサイトが、レヴォーグや「フォレスター」、「WRX S4」、「レガシィアウトバック」、「クロストレック」、そして「インプレッサ」と順次採用されるなかで、MT車向けアイサイトの量産化に向けた開発が進み、結果的にこのタイミング(2023年秋)の登場になったと考えるのが自然なのではないでしょうか。

 また、追従機能付クルーズコントロールについては、エンジン排気量との関係もあることが今回の会見で明らかになりました。

 現行の2代目BRZのエンジン排気量は、初代の2リッターから2.4リッターに拡大したことで低回転域でのトルクが増し、それが2速から6速での対応にプラス効果になっているのです。

 そのほか、2022年シーズンからスバル本社のチームとして参戦している、スーパー耐久シリーズに参戦するBRZでアイサイトとの関係についても、会見のなかで記者から質問がありました。

 これについては、現時点で採用した技術は特になく、「今後、量産向けのフィードバックについて検討する」というにとどめました。

●理由その3:自動車産業界の大変革期における「スバルらしさ」の追求

 スバルの事業全体の視点では、スバル安全技術の真骨頂であるアイサイトのさらなる進化を対外的に、またスバル社内・取引先・販売店などにアピールする狙いもあったのではないでしょうか。

 改めてですが、自動車産業は100年に一度の大変革期に突入しています。

 そうしたなかで、スバルと事業で連携しているトヨタは2023年6月上旬、「トヨタテクニカルワークショップ2023」を実施し、BEV(バッテリーEV)向けの次世代バッテリー各種や、次世代BEV向けにまったく新しい車体の製造工程など、大量の次世代技術を世界初公開しました。

 この現地取材を通じて、筆者も含めて参加したメディア関係者の多くが、大きな時代変化の前兆を実感したばかりです。

 本格的なBEV時代到来を前に、トヨタとの連携強化が確実視されるスバルとしては、まさに今、将来に向けた「スバルブランド」存続を判断するため、スバル史上最重要な岐路に立っていることは明らかです。

 こうした局面で、スバルとしては「スバルらしさ」のシンボルとして、アイサイトの進化を「できるところから」世に出したように感じます。

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