トヨタ「セリカ」お披露目! 28年ぶりの復活を遂げて全開走行! 4000万円かけた伝説マシンとは
くるまのニュース / 2023年6月28日 17時10分
トヨタの佐藤新社長が就任した際、SNSで「セリカ復活」が話題となりました。実はに2年の月日と4000万円の費用をかけて完全復活を遂げた実車が東京オートサロン2023でお披露目されていたのです。どのようなセリカが復活を遂げたのでしょうか。
■1995サファリラリー優勝車をフルレストア!約28年ぶりの全開走行を実現
日本人初のサファリラリー優勝へと導いた伝説的なマシンが2年にも渡るレストアを完了させ、約28年ぶりとなる全開走行を実現させました。
「セリカ復活」が話題に!? 2年の歳月と4000万円をかけて完全復活を遂げた95年の優勝マシンとは?(画像提供:テイン)
1995年、アフリカ・ケニアの大地を4日間で約3000キロ走破する(1980年代は3カ国ケニア、ウガンダ、タンザニア)5000km、1990年代はケニアだけで3000km「サファリー・ラリー」で日本人初、そして現在でも日本人唯一となる優勝をおさめた人物がいました。
その人物が現在、サスペンションメーカー「テイン」の専務取締役を務める藤本吉郎氏です。
同氏が駆ったのは1992年より世界ラリー選手権(WRC)に投入された「セリカ GT-FOUR(ST185)」、3S-GTE型2リッター直列4気筒エンジンを搭載する真のラリーマシンです。
2つのマニュファクチャラーズ・タイトル、そして4つのドライバーズ・タイトルを獲得したST165を置き換えるマシンとしてST185は登場し、4年連続のサファリラリー優勝や日本車初のモンテカルロ優勝など、トヨタの「ラリー黄金時代」における重要な存在となりました。
藤本氏は1994年のサファリラリーでトヨタのドライバーとしてデビューを果たしましたが、コ・ドライバーの負傷で完走とはなりませんでした。
その後、アクロポリス・ラリーで総合7位、ラリー・ニュージーランドで総合7位、そしてRACラリーではアクシデントでリタイアとなり、1994年のシーズンに幕を下ろしました。
ですがその翌年、WRC併催の「FIA 2リッター世界ラリーカップ(2L-WC)」シリーズ第4戦として開催されたサファリラリーにて藤本氏はついに総合優勝を飾り、前年の雪辱を果たします。
日本人初のサファリラリー優勝という快挙を成し遂げた藤本氏のST185は1995年4月、ゴール直後の状態で日本へと空輸されて各地を転々とする展示車両生活を送ることとなりました。
2021年12月に惜しまれつつも閉館した、東京・お台場(旧・13号地)にあるトヨタのショウルーム「メガウェブ」でも常設で展示されたほか、東京オートサロンなどのイベントでもよく出張する姿が見られます。
ですが、約23年もの間にあらゆる場所へ赴いた影響は凄まじく、腐食や風化、移動の際に生じた損傷は隠しきれない状態となっていました。
この状況をなんとかするべく、藤本氏はこの個体をトヨタより譲り受け、完璧にレストアすることを決意したのです。
藤本氏がレストアの委託先として選んだのは、元・TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)のジェラール・フィリップ・ツィジック氏が率いるCAR-ING社。2019年6月にドイツ・ハノーファーへと出発しました。
数々の損傷を受けたボディは外装パーツがすべて取り外され、参戦当時に補強を担当していたフランスのマター社によって修復がおこなわれました。
錆や腐食は補修、そして再利用不可能と判断された部分は同型の市販車を部品取りとして入手し、移植をおこなったそうです。
幸いにも根幹となるエンジン自体に大きな損傷はなく、CAR-ING社によって軽度な修復と洗浄によって当時の状態へと蘇りました。
ですが、2020年には新型コロナウィルス感染症の影響でレストア作業が中断、2021年にようやく組み付けを再開させ、同年6月にすべての作業が完了。2年の月日と4000万円の費用をかけて完全復活させました。
フルレストアを果たした藤本氏のST185は日本に戻ってきた直後から数々のイベントに引っ張りだことなります。
ですが、展示イベントがほとんどで、実際にエンジンをかけて走行する機会はなかなかなかったとのこと。それが今回、テイン主催のイベントにてようやく実現した形になります。
■いざ28年ぶりに「セリカ」が全開で走る! その印象は?
場所はドリフト愛好家にとっての聖地とも言える福島県二本松市の「エビスサーキット」。
貸切状態になった東コースでテイン新製品の減衰力コントローラ「EDFC5」の試乗体験がおこなわれるかたわら、藤本氏のST185はようやくドイツで受けたレストアの真髄をお披露目することとなりました。
藤本氏によれば、普段このST185は横浜市戸塚区にあるテイン本社に保管してあるとのこと。
定期的にエンジンをかけては本社敷地内を2速でゆっくり走る程度にとどめており、しっかりと走らせるのは実に28年ぶりのことと語りました。
ただ、レストアは施されているものの、エンジン保護のために当時と同じチューニングは施されておらず、出力が抑えられた状態でのECUセッティングがなされているとのこと。
ラリーではタイムを争う競技用の「SSモード」、そしてリエゾン区間を走るための移動用「ロードセクションモード」の2種類があるが、このST185は後者のセッティングにしてあると明かしました。
復活を遂げたセリカと藤本吉郎氏
それでも、「名機」3S-GTEはとてつもないパワーとトルクを繰り出します。
筆者も実際にコ・ドライバーになりきって同乗体験が実現しましたが、競技用より30馬力ほど落とされているとは思えないほどの俊敏さをピットから出た瞬間に感じました。
コーナリングでの荷重移動や剛性感もまさに「ホンモノ」でしか成し得ないものであり、それを藤本氏本人の操縦で体感するというまたとない貴重な体験にはただただ感激するばかりでした。
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