トヨタの“コンパクトミニバン”「シエンタ」なぜ人気? “使って”わかった5つの“メリット”とは
くるまのニュース / 2023年7月5日 18時10分
大人気ミニバン、トヨタ「シエンタ」の現行モデルは、2022年に登場した3代目ですが、2022年10月には登録車(SUV・軽を除く)月間販売台数で日産ノートを抜いてトップを獲得するなど、好調な売れ行きを続けています。人気の秘密はどこにあるのでしょうか、実際に使ってみて考察しました。
■爆売れコンパクトミニバン「シエンタ」人気の理由は?
コンパクトボディなのに両側スライドドアを備え、2列シート/5人乗りから3列シート/7人乗りのモデルまで選べる大人気ミニバン、トヨタ「シエンタ」。初代は2003年に登場し、2015年に2代目、2022年に現行の3代目が登場しています。
日本の道路事情にも使いやすい5ナンバーサイズに、ガソリンだけでなくハイブリッドモデルがラインアップしていたことや、ダウンサイジングの流れで大きなミニバンからの乗り換え、また軽自動車からのステップアップといったファミリー層のちょうどいい受け皿となったことなどで、とくに2代目から爆発的ヒットモデルとなった経緯があります。
そんな2代目とパッケージングはほぼキープコンセプトながら、内外装のデザインはガラリとアットホームな癒し系に変身を遂げた現行モデルもまた、2022年10月には登録車(SUV・軽を除く)月間販売台数で日産ノートを抜いてトップを獲得するなど、好調な売れ行きを続けています。
直近の2023年4月の販売台数を見ても、ガチライバルのホンダ「フリード」が4143台で11位に沈む中、シエンタは9200台で2位を獲得。人気を不動のものとしています。なぜ、そんなにシエンタは売れるのでしょうか。
その理由として、実際に乗って使ってみて「いいな」と感じるところが大きく5つあります。
■シエンタの5つのいいところ
1つ目は、「あるときはコンパクトカー、あるときはミニバン」という、どっちの利点も備える“いいとこ取り”のキャラクター。家族が仕事や学校に出払ってひとりで乗るときや、市街地を走るときにはコンパクトカー感覚です。
試乗したのは7人乗りモデルでしたが、3列目シートが完全に2列目シートの下に床下格納できるので、その存在を消すことができます。
他の多くのミニバンでは、誰も乗っていない時でもルームミラーに跳ね上げ格納した3列目シートが映っているので、常にミニバンであることを意識させられますが、シエンタは気持ちをコンパクトカーに切り替えて運転できるのです。
加えて、シエンタの最小回転半径は5.0mと小さく、小回り性能抜群です。ボディサイズも、フルモデルチェンジのたびに拡大するモデルが多いなか、全長と全幅は従来通りをキープ。全高だけが2cmアップしましたが、それは乗降性や室内の居住性を改善するためのもので、運転しやすさをまったく犠牲にしていません。
1.5リッターのガソリンエンジンモデルもハイブリッドモデルも、キビキビとした乗り味でストップ&ゴーの多い市街地でもストレスがないので、コンパクトカー感覚で運転することができます。
一方で2列目・3列目シートに人が乗るときには、しっかりとミニバンの良さを発揮。まずスライドドアは、地上からわずか33cmという低いステップで、開口部の高さが従来より6cmもアップして120cmになったため、子供から長身の大人まで乗り降りがスムーズになりました。
1列目と2列目のカップルディスタンス(前後席間の距離)が8cmも拡大しているので、室内のゆとりはたっぷり。天井まで130cmという高さを確保しており、小学校3年生くらいの子どもでも立つことができます。
現行モデルには6人乗りモデル(2列目の中央に空間がある「キャプテンシート」仕様)の設定がないため、3列目シートまでのウォークスルーはできませんが、1列目と2列目はウォークスルーが可能で、これも子どものお世話をすることが多い子育て世代にはありがたい機能です。
スライドドアから子どもを抱っこしたまま乗り込み、チャイルドシートに座らせたら、いちいち降りずにそのまま運転席へ、ということができるのは、雨の日や猛暑日など助かるシーンが多いのです。
■室内空間に安心感…残り4つの「いいところ」とは
2つ目のいいところは、おウチ感覚の室内空間。これはコロナ禍を経験したからこそ、さらに良さが引き立っているポイントだと感じます。
外食をせずテイクアウトしたり、子どもの習い事に送って行っても保護者は教室内に入ることができず、終わるまで車内で待つことが多くなったり…そんな時に、シエンタの車内はホッとできるプライベート空間として優れています。
新型「シエンタ」はプライベート空間としても優れている
たとえばシートはツイードのような温かみのあるファブリックで、リビングのソファ感覚。
スタバなどで買ったドリンクのカップもすっぽり収まるドリンクホルダーもあり、そのすぐ脇にはペットボトルのキャップを置くのにぴったりの小さなトレイまであります。
ここはのど飴やヘアゴム、夕方になると指がむくむため外した指輪など、無くしたくない小物の指定席にも便利。運転席アームレストにフックが装備されるのも、ゴミ箱がわりにコンビニ袋をかけておくにしても外から見えにくく、いいアイディアだと感じました。
また、コンパクトカーには後席用のエアコンアウトレットがない場合も多いですが、シエンタは天井にサーキュレーターを備えるグレードがあり、室内全体にエアコンの風を素早く循環させることができるのも、快適に過ごせる理由です。
3つ目は、安心感。これは運転中にうっかりミスをしても助けてくれる、先進の安全運転支援技術が揃っていることと、コネクテッド機能が日々のカーライフをサポートしてくれることの両方で感じる安心感です。
たとえば安全運転支援でいえば、高速道路を走る時だけでなく、一般道でも常に前走車との距離や歩行者などの動きを見守って、減速やカーブの走行などをスムーズにしてくれるPDA(プロアクティブドライビングアシスト)もそのひとつ。
前を走っていたタクシーが急停車したり、想像よりも急なカーブだった時の「ヒヤリ」を救ってくれるのは、とても安心できると思います。ちなみにこのPDAは全車標準装備です。
そしてナビの設定だけでなくエアコンの調整などさまざまな操作を、エージェントに話しかけるだけでサポートしてもらえるのも嬉しいところ。運転中にも信号待ちなどの際に、最新ニュースや周辺のイベント情報などを届けてくれるので、常に誰かが一緒にドライブしてくれているような心強さや楽しさを感じるものです。
この機能はX以外のグレードに標準装備されており、新車購入から5年間は利用料が無料となっています。
4つ目は、やはりデザイン。先代はスポーティ路線のデザインでしたが、登場した当時、オリンピックの開催地が東京に決まり、国民のスポーツ熱がいつになく高まりを見せていたものでした。
子育て世代は子どもの部活動に熱が入るなど、シエンタのターゲット層にスポーティさを求めていた人が多かったのではないかと推測できます。
でも現行モデルが登場した2022年は、そんな東京オリンピックの喧騒もすっかり去ったタイミング。アウトドアブームも、本格的なスタイルだけではなく、公園でのんびりしたり、愛犬を連れてドッグランに行く、くらいの手軽なスタイルの方が親しみやすくなってきています。
そんなシーンに似合うのがほっこり癒し系となった現行シエンタ。「シカクマル」と呼ばれるシルエットで、日常に馴染む愛着の湧くデザインは、車名のロゴをバンパーに刻印するなど、さりげないオシャレさもポイントとなっています。
5つ目は、なんといっても価格です。
これは高い安いという単純なものではなく、価格の幅を広く設定して選択肢を多く見せているところが絶妙。実際に購入するのはトップグレードの「Z」か中間グレードの「G」がメインとなりそうでも、ガソリンモデルのエントリーグレード「X」は5人乗りが195万円、7人乗りが199万円と、200万円を切っているので、購入までの敷居が低くなり、「これなら手が届きそう」「ちょっと見に行ってみよう」という気にさせるのです。
■人気のシエンタ…弱点はある?
さて、こうしてシエンタの人気の秘密を探ってみましたが、もちろん弱点もあります。
新型「シエンタ」はちょっと後席へのアクセスが大変…そんな一面も
それは3列目シートに乗り込む際に、いちいち2列目シート中央席のヘッドレストを外す手間があること。これはシートアレンジの際にも同様なので、頻繁に3列目シートを使う人ならそのうちに「面倒くさい」となって、ヘッドレストを外しっぱなしにして乗ってしまうのではないかと心配になります。2列目中央席に誰も座らなければいいのですが、ここは改善してほしいところです。
また、5人乗りでも7人乗りでも自転車を積むことができますが、車中泊をする予定があるならば、7人乗りモデルはラゲッジの段差が大きめになってしまうので、5人乗りモデルがオススメです。
ということで、コンパクトボディなのに両側スライドドアで3列シートまで選べて、おまけにハイブリッドで低燃費。そんな、世界中どこを探しても見当たらないようなシエンタは、売れるべくして売れている渾身の1台と言えそうです。
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