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なぜクルマによって「ボンネット」の長さ変わる? 「SUVは長い」対「ミニバンは短い」 背景には何が関係してた?

くるまのニュース / 2023年7月4日 10時10分

クルマには様々なボディタイプが存在します。近年では「SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)」が人気を博しています。その一方で日本では多人数&多積載が特徴の「ミニバン」も人気ですが、なぜ両者はボンネットの長さが異なるのでしょうか。

■SUVのボンネットが長く、ミニバンのボンネットが短いワケ

 様々なボディタイプのなかでも高い人気を誇るSUVとミニバンには、ボンネットの長さという外見上の大きな違いがあります。
 
 SUVとミニバンのボンネットの長さは、なぜこれほどまでに異なるのでしょう。

 6人以上の多人数乗車ができるクルマを求めると、基本的には3列シートSUVかミニバンから選ぶことになります。

 それぞれのボディタイプには一長一短がありますが、外見上の大きな違いで言えば、SUVが長いボンネットを備えているのに対し、ミニバンのボンネットは比較的短いという点が挙げられます。

 近年のSUVは、「都市型SUV」や「スポーツSUV」といった様々なスタイルへと派生しており、かつてよりもその言葉が意味するものが広がっています。

 しかし、どんなスタイルであっても「SUV」と名が付くものは基本的に長いボンネットを備えており、SUVの特徴のひとつとなっています。

 ボンネットの長さは、その下におさまるエンジンの大きさと配置方法(駆動形式)によって決まりますが、クルマにとって最大級の重量物であるエンジンをどのように配置するかによってそのクルマの特性は大きく変化します。

 物理法則から言えば、重量物はできるだけ車体の中心に配置した方が走行安定性や旋回性の面で有利になります。

 しかし、車体中心部にエンジンを配置してしまうと、乗員のためのスペースの確保が難しくなるため、一部のスポーツカーやレーシングカーなどを除いて採用されることは皆無です。

 そこで、ほとんどのクルマではフロントにエンジンを置くわけですが、居室空間を確保するためにエンジンをあまりに前に置いてしまうと、フロントヘビーになりクルマとしてのバランスが悪くなってしまいます。

 ただ、居室空間も確保しなければならないため、ボンネットを延長することでエンジンをできるだけ車体の中央部に寄せ、全体のバランスを保っています。

 SUVはセダンなどに比べて車両重量が大きくなりやすいため、エンジンも大きなものが採用される傾向があります。

 加えて、SUVは重心が高いため、ボンネットを長くしてエンジンの配置を工夫しなければバランスが悪くなってしまうという問題があります。

 その結果、SUVの多くはボンネットが長いデザインが採用されているようです。

 一方のミニバンは、その名のとおり「(商用)バン」を源流としているため、乗用車から派生したSUVとは少し事情が異なります。

SUVには「美しいデザイン」が求められることも多いSUVには「美しいデザイン」が求められることも多い

 ミニバンに求められるのは多くの人や荷物を乗せることであり、運動性能などは基本的に二の次です。

 そうなると、コンパクトなエンジンをできるだけ前方に寄せることで最大級の荷室空間を確保するようなパッケージとなります。

 もちろん、ミニバンにもボンネットを長くすることで得られるメリットはありますが、全長が長くなるなどのデメリットも同時に発生します。

 海外のミニバンではボンネットの長いものもありますが、特に日本国内向けのミニバンでは、取り回しのしやすい全長や見切りの良さを重視してボンネットの短いデザインとすることが多いようです。

■いまでは「ボンネットの短いSUV」も可能?それでも実現しない理由とは

 ここまで述べたように、SUVとミニバンのボンネットの長さの違いは、それぞれのボディタイプの成り立ちに大きく関わっています。

 一方、技術が進歩した現在では、かつてよりも小さなエンジンでより多くのパワーを引き出すことができるようになっています。

 また、BEVやPHEVといった新たなパワートレインも登場し、内燃機関における常識が通用しなくなりつつあります。

 つまり、「ボンネットの短いSUV」を開発することは、技術上難しくないということになりますが、近年登場する新型SUVの多くは、やはり長いボンネットを備えています。

 この点は、SUVを求めるユーザーの心理が大きく関わっているようです。

 SUVのメリットは、余裕のある室内空間と優れた走り、そして美しいデザインを兼ね備えている点にあります。

 この「美しいデザイン」を実現するために、フロントウィンドウを寝かせることでクーペのような流麗なシルエットを作り出す手法が採用されることが多くあります。

 フロントウィンドウを寝かせた上で一定の視界を確保するためには、フロントウィンドウそのものを長くしなければなりませんが、そのうえで流麗なシルエットとするためには、ボンネットを長くして全体のバランスをとる必要があります。

ミニバン×SUVという唯一無二の存在「デリカ D:5」ミニバン×SUVという唯一無二の存在「デリカ D:5」

 一方、ミニバンは多くの人や荷物を乗せることがデザインよりも優先されるボディタイプであることから、そのシルエットは基本的には箱型となります。

 多くの人が「美しいデザイン」と感じる流麗なシルエットではないことから、一部のユーザーはミニバンを敬遠することがあるのも事実です。

 逆に言えば、居住性を追求してボンネットを短くしたSUVは、もはやミニバンの一員であり、SUVとは呼べないモデルです。

 SUVとミニバンを掛け合わせたモデルとしては、三菱「デリカ D:5」などが挙げられますが、自動車市場全体から見ればそうしたクルマはごく少数です。

 クルマのデザインは、技術の進歩やさまざまな規制によって変化してきた歴史があるのは事実ですが、その時々のユーザーのニーズも色濃く反映されてきました。

 電動化が進む昨今では、これまでの常識にはないさまざまなデザインも実現可能と言われていますが、実際に市販されるクルマのデザインのほとんどは、内燃機関車の延長にあります。

 結局のところ、多くのユーザーが「SUVらしさ」や「ミニバンらしさ」を求める限り、技術的には可能であっても、「ボンネットの短いSUV」や「ボンネットの長いミニバン」は主流とはならないということのようです。

※ ※ ※

 空気抵抗を現象させることで燃費性能を向上させたり、クラッシャブルゾーンが大きくなることで衝突による被害を軽減させたりというように、ボンネットを長くすることのメリットはほかにもあります。

 ただ、電動パワートレインの採用や先進安全運転支援システムの搭載などによって、ボンネットが短いクルマでも一定以上の基準を満たすことは可能であるため、これらの理由によってボンネットを長くしなければならないというわけではありません。

 それでも、ボンネットの長いクルマが多く存在するのは、やはりユーザーのニーズによるものが大きいと言えそうです。

 そういう意味で言えば、ボンネットの長さは、クルマのなかでもユーザーの好みを最も色濃く反映させている部分のひとつなのかもしれません。

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