車内に付いている「謎のスマホ」はなんの意味? ショーファーカーの後席に求められる要素とは
くるまのニュース / 2023年7月22日 14時10分
近年では様々な自動車メーカーが「ショーファーニーズ」に対応するモデルを展開しています。そうした中で後席にはどのような要素が求められるのでしょうか。
■広ければよいわけではない?ショーファーカーの定義とは
トヨタやレクサスが近年力を入れているのが「ショーファーカー」です。
従来は「ロングホイールベースの高級セダン」がショーファーカーの定番条件のひとつとされていましたが、現代ではその意味するところは多様化しているようです。
そのなかでも、ショーファーカーに求められるのはどんな機能なのでしょうか。
2023年6月21日、トヨタは新型「アルファード/ヴェルファイア」を発表しました。
高級ミニバンとして圧倒的な販売台数を記録してきた先代アルファード/ヴェルファイアに対して、さらに後部座席の快適性が追求されている新型モデルは、より「ショーファーカー」としての性格が強められた1台と言えます。
いわゆる「お抱え運転手」を意味する「ショーファー(chauffeur)」は、蒸気機関に火をくべる「火夫」を指すフランス語に由来しています。
つまりショーファーカーとは、オーナーが後部座席に乗車することを主目的としたクルマのことを指します。
近年ショーファーカーに力を入れているのがトヨタやレクサスです。
新型アルファード/ヴェルファイアを筆頭に、新型「クラウン セダン」やレクサス「LM」、さらには「センチュリー」のSUV版も追加されるとの噂もあります。
一方、ショーファーカーというカテゴリー自体に明確な定義はありません。
「ロングホイールベースの高級セダン」がショーファーカーの代名詞的存在として扱われることもありますが、これは既存のショーファーカーの多くがそうであったというだけであり、そうでなければショーファーカーではないというものではありません。
かといって、単に「後部座席が広いクルマ」としてしまうのも少々乱暴です。
新型アルファードの最上位グレード「Executive Lounge」には、様々な操作が出来るスマホのような「リヤマルチオペレーションパネル」が備わっている
たとえば、近年の軽自動車の後部座席の広さは目を見張るものがありますが、それらをショーファーカーと呼ぶことはまずありません。
そのうえで、あえてショーファーカーを定義するなら「後席の快適性を最も優先したクルマ」ということになりそうです。
この定義であれば、室内空間が可能な限り後部座席のスペースに費やされていたり、運転席や助手席に比べて後部座席の方が快適装備が充実していたりといったクルマは、多くの人がショーファーカーと聞いてイメージするものと合致します。
また、ミニバンやSUVなどのボディタイプもショーファーカーに含めることができます。
ただ、これも大ざっぱな定義であることには変わりません。では、ショーファーカーの後席に求められるのはどのような機能なのでしょうか。
■ショーファーカーは「目に見えない部分」も重要?
ショーファーカーと呼ばれるさまざまなクルマの後席を見ると、まずなによりも豪華なシートに目が行きます。
特に、新型アルファード/ヴェルファイアのような高級ミニバンの上級グレードでは大型のキャプテンシートが備わり、まるで飛行機のファーストクラスのような空間を提供しています。
こうしたシートは、電動リクライニングやシートヒーター/クーラー、エアコンやオーディオなどを操作するスイッチなどに加えて、なかにはマッサージ機能が搭載されているものもあります。
また、最近ではテレビなどが視聴可能なディスプレイが搭載されていることも多いようです。
なかでも、LMの4人乗り仕様には世界最大級となる48インチの超大型ディスプレイが備わっており、今後のショーファーカーに大きな影響を与えることは間違いなさそうです。
さらに、一部のショーファーカーには、冷蔵庫や後席用のスピードメーター、ドアに収納された専用の傘などが備わっているなど、一般的なクルマとは大きな違いが見られます。
ただ、こういった目に見える装備だけがショーファーカーの真髄ではありません。
ショーファーカーのおもな顧客となるのは企業の経営者などですが、そうした多忙なユーザーにとってクルマでの移動時間は数少ないリフレッシュの機会であり、限られた時間でリフレッシュするためには、外の世界の音を遮断する高い静粛性が求められます。
しかし、外部からの音を完全に遮断してしまうと、かえって緊張感が増してしまう可能性もあります。
その点、LMでは適度に外部の音を取り込むことで心地よい空間を実現しています。
レクサス新型「LM」の2列目はまさにファーストクラスと言える
また、一代で財を成したオーナー企業の経営者などは、あらゆるものに強いこだわりを持っていることも多いようです。
そうしたユーザーは、他人が設定したお仕着せのスタイルではなく、価値観にあったスタイルを自身で選ぶ傾向が強いといいます。
その点、ショーファーカーの世界最高峰と呼ばれるロールス・ロイス「ファントム」などでは、ボディカラーや内外装の仕様を顧客の好みに合わせて仕立て上げる「ビスポーク」と呼ばれるプログラムが用意されています。
LMも車内のイルミネーションやエアコンの設定などを後席のユーザーに合わせてパーソナライズ可能となっており、顧客の好みを最大限反映させることに注力されています。
価値観が多様化している現代だからこそ、顧客に合わせたパーソナライズは非常に重要な要素です。
豪華な装備ばかりに注目が集まりがちですが、こうした目に見えない部分もショーファーカーに求められることのひとつと言えそうです。
※ ※ ※
1989年に北米で発売されたレクサスの初代「LS400(日本名:セルシオ)」は、静粛性といった日本的な価値観で当時の高級車市場を席巻し、その後のショーファーカーに大きな影響を与えたと言います。
また、近年ではアジア圏を中心にショーファー仕様のミニバンが多く登場していますが、その多くがアルファードを意識していることは疑う余地がありません。
欧州メーカーが強いとされているショーファーカーですが、「おもてなし」の心を持つ日本のショーファーカーもまた、世界で注目を集めているようです。
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