「あ、ワイパー動いたw」 なぜ「輸入車のウインカー」は左側? 国産車は右側がほとんどなのに…将来は左側になる可能性も?
くるまのニュース / 2023年8月13日 6時10分
クルマのウインカーレバーと言えば、国産車の場合右側に付いていることがほとんどです。しかし輸入車では左側に付いていますが、なぜ異なるのでしょうか。
■国産車は「右」、輸入車は「左」の理由はなぁぜなぁぜ?
国産車と輸入車の違いは多くありますが、ウインカーレバーの配置もそのひとつです。
なぜ、ほとんどの輸入車は「左ウインカー」を採用しているのでしょうか。
「ウインカーを出したつもりがワイパーが動いてしまった」というのは、はじめて輸入車を運転するユーザーが1度は経験することかもしれません。
一部の例外はありますが、国産車ではハンドルの右側にウインカーレバーがあり、左側にはワイパーなどを操作するレバーがあることが一般的ですが、輸入車ではそれらが逆の配置となっていることが多いです。
ウインカーは、道路運送車両法によって公道を走るすべてのクルマに搭載が義務付けられています。
一方、ウインカーの操作は必ずしもレバーによって行なう必要はなく、ボタンによって操作する車種もわずかですが存在しています。
ただ、ウインカーはクルマにおける最重要保安部品のひとつであることに加え、頻繁に操作するものでもあるため、なによりもまず「操作のしやすさ」が求められます。
その意味では、デザイン性や先進性からは最も遠い存在にある部品と言えます。
であるならば、ウインカーレバーの配置も統一するほうが合理的であるように思われますが、なぜ国産車と輸入車では異なるのでしょうか。
結論から言えば、国産車が「日本産業規格(JIS規格)」を採用していることに由来しています。
かつては「日本工業規格」と呼ばれていたJIS規格は、産業標準化法によって定められたものであり、現在の日本の国家標準となっている規格です。
JIS規格は産業に関わるあらゆる物事の呼称や寸法、計測方法などの基準を定めることにより、効率的な経済活動が行われることを目的としています。
クルマに関してもさまざまな事柄が規定されており、ウインカーレバーをハンドルの右側に配置するというのもそのひとつです。
JIS規格はあくまで「標準」を定めたものであるため、準拠しないからといって罰則があるわけではありません。
ただ、日本の自動車産業のほとんどがJIS規格を採用しているため、特別な事情がない限りはJIS規格に準拠しないクルマを生産・販売するメリットは皆無です。
一方、輸入車のほとんどは各国の標準化団体で構成される「国際標準化機構(ISO)」による「国際規格(ISO規格)」を採用しており、これによると、ウインカーレバーはハンドルの左側にあることが好ましいとされています。
つまり、国産車と輸入車でウインカーレバーの位置が異なるのは、JIS規格とISO規格のどちらを準拠しているのかが関係しているということになります。
■国産車もいずれは「左ウインカー」に? その可能性はあるのか?
JIS規格とISO規格はまったく異なるものではありません。
実際、JIS規格を策定している「日本産業標準調査会(JISC)」はISOの加盟団体のひとつであり、JIS規格もISO規格と協調しつつあります。
そういった意味では、JIS規格におけるウインカーレバーの配置についても、将来的にISO規格に準拠する可能性が考えられます。
そうなると、日本においてもハンドルの左側にウインカーレバーを配置することが「標準」となります。
日本のユーザーにとっては歓迎できないことかもしれませんが、自動車メーカーにとってそのメリットは少なくありません。
現在の自動車産業では、ひとつの車種を多くの国や地域で販売する手法が大きなトレンドとなっています。
こうした車種は「グローバルモデル」と呼ばれますが、世界中で多くの販売台数が見込まれることから、特定の国や地域でしか販売されない「ローカルモデル」に比べて、多額の開発費を投入できるというメリットがあります。
一方、「グローバルモデル」は特定の市場のユーザーの好みを反映させにくいという弊害もはらんでいます。
国産車の右ウインカーレバーがグローバル化する可能性もある?
トヨタ「クラウン」が国内販売をメインとしていた先代までは日本の道路事情に合わせて全幅1800mm以下を死守していたのに対し、「グローバルモデル」となった新型では1840mmへと拡大したのがその一例です。
世界的に見れば、ハンドルの左側にウインカーレバーを配置するほうが多数派であるため、数の論理にしたがえば日本のユーザーが「割を食う」かたちとなる可能性が高いのが実情です。
現時点では、ウインカーレバーの配置に関して、JIS規格がISO規格に準拠するという具体的な動きはありません。
また、ウインカーレバーは安全に直結するものでもあるため、その配置や操作方法についても慎重な議論が求められます。
とはいえ、今後さらにグローバル化が進むことを考えると、ウインカーレバーの配置もグローバル化が進む可能性は十分にありそうです。
※ ※ ※
たとえば、トヨタ「GRスープラ」は日本の自動車メーカーのクルマでありながらウインカーはハンドルの左側に配置されています。
これは、GRスープラがBMW「Z4」とプラットフォームを共有していることが理由ですが、GRスープラ自体がターゲットが限られているモデルであるため、ウインカーレバーの配置に対して大きな不満は出ていないようです。
一方、コンパクトかつ低価格な輸入車として2011年に登場したシボレー「ソニック」はウインカーレバーをハンドルの右側に配置するなど日本のユーザーへの配慮が強いモデルでしたが、その販売状況は決して良好とは言えませんでした。
こうした事例を見ると、ウインカーレバーの配置だけでクルマの評価が決まるという単純な話ではないことがわかります。
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