ホンダのレトロ顔「斬新“軽トラ”」!? ターボとMT搭載の“農道最強”「T880」はめちゃ“スゴイ”クルマだった
くるまのニュース / 2023年7月20日 12時10分
世界各国で開かれているモーターショーなどの自動車イベントでは、様々なコンセプトカーなどが発表され、人々の注目を集めます。なかでも、かつてホンダの純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスの「N Lab.(エヌラボ)」が出展したカスタマイズショーモデル「T880」が、いまでも多方面で話題になっているようです。どのようなクルマだったのでしょうか。
■ホンダの斬新軽トラ「T880」はめちゃ作り込まれていた?
世界各国で開かれているモーターショーやオートサロンといった自動車イベントでは、様々なコンセプトカーや新型車、カスタムカーが発表され、人々の注目を集めます。
なかでも、かつてホンダの純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスの「N Lab.(エヌラボ)」が出展したカスタマイズショーモデル「T880」が、いまでも多方面で話題になっているようです。
T880が初めて披露されたのは2017年1月に開催されたカスタムカーイベント「東京オートサロン2017」のことでした。
当時も相当に話題になり、筆者も某媒体で動画レポートをしたところアクセス数も好調で「めっちゃバズッた!」と制作サイドから喜びの連絡があったことを思い出します。
そのT880について、あらためて振り返ってみましょう。
制作した「N Lab.」というのは、ホンダアクセス従業員の有志による自発的な活動のことです。
参加従業員の業務領域にとどまらず、デザインやモデル制作に参加することでモノづくりに対する理解を深めるとともに、東京オートサロンへ出展を通じてお客様とのコミュニケーションを図り、より様々なインスピレーションを感じることで、今後のモノづくりへのモチベーションを高めるのを狙いとしています。
T880は軽商用車の「アクティトラック」をベース車両とし、基本フレームはそのままに、「働くクルマはかっこいい」をテーマに、見てのとおり全てをオリジナルデザインで造り直し、働くトラックの力強さを表現、「かっこよく、パワフルにのれる」モデルとして提案したものです。
具体的な変更点は下記のとおりです。
【エクステリア】
・オーバーフェンダーにより130mmワイド化(片側+65mm)
・キャビンルーフを150mmチョップ(車体高のダウン)
・17mmローダウン
・専用エンジンアンダーパネル装着
・2way開きのゲート
・荷台容量はアクティトラック同様を確保
【インテリア】
・専用インテリアパネル
・専用メーター
・専用ベンチシート(ヒップポイント:-30mm)
・ステアリングホイール角度適正化
【メカニズム】
・VAMOS用のターボエンジンに換装
・ビート用のトランスミッションに換装
・リアをディスクブレーキに変更
そんなT880の開発時やその後には、いくつものエピソードがあります。
コンセプトである「働くクルマはかっこいい」を体現するために、キャビンのチョップやオーバーフェンダー化を行っていますが、そのときには関連メーカーに協力してもらいつつ、N Lab.チーム全員で作業を行ったといいます。また、なんと1/4クレイモデルまで制作したそうです。
荷台容量はアクティトラック同様としつつも、両サイドのあおり機構(開閉機能)を廃止しスムージング化する一方で、後部はあおり開きと観音開きの2wayに変更しているのも特徴です。
さらに、空力を考えてフロア下面のフラットサーフェス化を行なったほか、市販コンプリートカー「Modulo X(モデューロエックス)」でも活用した空力パーツのフィンを追加するなど、ホンダアクセスが低唱する「実効空力」を意識して制作されています。
■MTもエンジンも変わってる!? T880のスゴさとは
ところで、車名の「880」という数字は、かっこいいだけでなく、軽トラ(ベース)でも力強くパワフルに走りたいので、880ccくらいの排気量が欲しいという気持ちを込めて、だったのですが、実際には660ccのままのようです…。
それでも、アクティトラックのNAエンジンをホンダ「バモス」用のターボエンジンに換装するとともに、トランスミッションも適切なギア比にするため、軽ミッドシップスポーツカー「ビート」用のMTを使用しています。
ガワだけの改造じゃない! ホンダ「T880」
さらに、荷物満載で坂道でもしっかりと止まれるよう、リアをドラムブレーキからディスクブレーキに変更しています。
その他、足まわりやフロントブレーキも社外製のパーツなどを用いて適宜チューニングされています。
展示だけのショーモデルにするのではなく、しっかりと走れることを想定していて、ターボエンジンやディスクブレーキの搭載も、まさしく走りを意識した結果といえます。
ホンダアクセスの開発を統括する福田正剛氏はT880のことを、「脱いでも凄い!」と表現していたことを思い出します。
新ジャンル的な受け取られ方もされることを念頭に、加飾だけでなく、走る、曲がる、止まるを基本に、ボディ剛性、空力、エンジン、トランスミッションを自分達で組み上げて走行性能を追求していて、空力向上のため二重アンダーパネルを採用したりするなど、ホンダアクセスが手がけるレーシングカーのノウハウまでを取り入れたりしたそうです。
オートサロン出展前の走行テストが事情によりできなかったため、T880はイベント終了後にわざわざ栃木のホンダテストコースで走行確認を行い、さらに本庄サーキットでの走行も実施し、その模様は一部メディアでも紹介されました。
また、同じく東京オートサロンに出展した日本自動車大学校制作のショーカーと一緒に、同校内のコースでインプレッション取材を受けました。
その後もいくつかのメディアの取材を受け、中には表紙を飾ったこともあったほか、同年5月には浅間ヒルクライムに出走しました。
さらに、初出展から2年後の東京オートサロン2019開催時には、オートサロン事務局の運営で、会場の幕張メッセに隣接する千葉マリンスタジアム内で行われた同乗試乗会に、試乗車として出展したほか、ホンダが全国で行っているイベント「Enjoy Honda」のいくつかの会場で、ときには物販カーとして荷台に商品を並べたりして展示されていました。
※ ※ ※
そんなT880のコンプリートカーとはいかないまでも、T880をモチーフにした何らかの商品が販売されることに期待せずにいられないところでしたが、残念ながらその予定はないようです。
ただし、T880開発の経験で得られたものは、今後の商品開発において何らかの形で活きてくることに違いないでしょう。
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