瞬時に完売した“幻のワゴン”がスゴすぎる! スバル「レヴォーグ」のSTIコンプリートカーが驚愕の性能だった!?
くるまのニュース / 2023年7月27日 22時10分
スバルが限定車を発売すると即完売することが多いのですが、2023年1月に発表された「レヴォーグ STIスポーツ#」もそのひとつです。どのようなモデルなのか、実際に試してみました。
■まさかの500台が一瞬で売り切れた!?
2023年1月13日、スバルはステーションワゴン「レヴォーグ」のスペシャルモデルとして「STIスポーツ#」を発表し、同月26日に注文受付を開始しました。
「レヴォーグ STIスポーツ#」は限定500台が用意されたものの、瞬時に売り切れてしまうという、ある意味“幻のモデル”となったわけですが、今回特別に試乗することができました。
ベースとなったモデルは2.4リッターターボ搭載の「STIスポーツR」。STIスポーツ自体はスバル/STI社(スバルテクニカインターナショナル)の共同開発で生まれたカタログモデルですが、STIスポーツ#はSTI社が独自で量産の域を超えたアップデートが施した特別モデル。
STI社は古くから独自開発のコンプリートモデルをリリースしていますが、その最新版というわけです。
STIスポーツ#は一体何が違うのか、もう少し細かく見ていきましょう。
エクステリアは専用フロントグリル(漆黒メッキ加飾、ダークグレーシリカ塗装)や光物を抑えた各部のブラックコーディネイト、さらにレヴォーグ初採用となる19インチタイヤ&アルミホイールも相まって「スポーツ×プレミアム」を表現。筆者(山本シンヤ)にはこの分野で大先輩となるアルピナのような品格を感じました。
4色のボディカラーが用意されているなか、専用色「オフショアブルー・メタリック」が加飾とのバランスがもっとも整っているように感じました。
インテリアは、カタログモデルの「STIスポーツ/STIスポーツR」がボルドー内装なのに対して、STIスポーツ#は「ブラックのモノトーン×シルバーステッチ」の専用コーディネイトに加えて、レヴォーグ唯一となるレカロシート(電動式)を採用。
エクステリア同様、華やかさやインパクトよりも「余裕」「落ち着き」を感じさせる室内空間に仕上がっています。
ちなみに見た目の変化だけでなく、専用制振剤(スペアタイヤパン/リアカーゴスペース)による静粛性アップも施されているのですが、個人的には、そこまでこだわるならばオーディオにもこだわってほしかったなとも思いました。
メカニズムはフットワーク系のアップデートが中心です。フルインナーフレーム構造のSGP(スバルグローバルプラットフォーム)の実力をより引き立たせるべく、独自理論のフレキシブル系補剛アイテムを適材適所に追加しています。
車体に適度なテンションをかけ応答性を高める「フレキシブルドロースティフナー(フロント/リア)」に加えて、フレキシブルタワーバーの進化版「フレキシブルドロータワーバー」を採用。
左右をピロボールで繋ぎ、外圧を適度にいなす構造のフレキシブルタワーバーにドロー機能(=車体に適度なテンションをかける)をプラスすることで、快適性を犠牲にすることなくハンドリング精度を更に引き上げています。
ちなみにフレキシブルドロータワーバーは5代目「レガシィ」用としてひっそり設定されていましたが、STIスポーツ#から本格採用されたようです。
サスペンションはZF製電子制御可変ダンパーを含めて変更はありませんが、タイヤは225/40R19サイズのミシュラン・パイロットスポーツ5とアルミホイールはBBS製鍛造を装着。
ちなみにBBS製鍛造アルミホイールは、デザインこそ市販されているRE-V7ですが、何とSTIスポーツ#に合わせて剛性バランス最適化した専用品です。
また、カタログには記載されていませんが、湾曲タイロットエンド(しなりを利用して操舵に対する挙動をマイルド&無駄のない動きにする)、リアサブフレームフロントブッシュの締結ボルト大経化(サブフレーム取り付け剛性の前後バランス変更で応答性、ステアリング手ごたえ向上)など、細部までこだわりの調整がおこなわれています。
パワートレインはノーマルに準じており、SPT(スバル・パフォーマンス・トランスミッション)にオイルクーラーをプラス。サーキット走行を始めとする極限走行でも安心・信頼が高められています。
■とにかくハンドリングがスゴい!
今回の試乗はSTI社がある東京・三鷹を拠点に、近隣の一般道やワインディング、高速道路を走行。評価は限界云々ではなく日常領域が中心となりましたが、STIスポーツ#の実力は走り始めて数百メートルで即座に実感できるレベルにあります。
一番驚いたのは、すべてにおいて「雑味がない」スッキリ爽快な走行フィーリングです。
スバル「レヴォーグ STIスポーツ#」(限定車)
具体的には、カチッとしているのに突っ張った印象がない車体、穏やかなのにあうんの呼吸で反応するステア系、一般道や高速道路では19インチの40偏平タイヤを装着していることを忘れる優しい足さばきなどの、格上のプレミアムセダン顔負けの上質かつ繊細な乗り味と、ワインディングなどではリアルスポーツカーさながらの俊敏で一体感の高い走りを両立するフットワークを実感。
そのなかでももっとも驚いたのはハンドリングで、スッとノーズがインを向く感覚に「VTD-AWDの駆動配分が変わった?」、さらに旋回姿勢の良さやリアタイヤをより積極的に使ったトラクションに「前後重量配分変わった?」と錯覚してしまったほどです。
これはフレキシブル補剛パーツや湾曲タイロットエンド、リアサブフレームフロントブッシュの締結ボルト大経化などの相乗効果で、クルマを今まで以上に旋回しやすい姿勢に導きやすくしていて、その結果、ノーマルが持っている能力をあまりなく引き出せているのでしょう。
つまりSTI社のチューニングは飛び道具ではなく、クルマの原理原則に対して愚直に向き合った結果なのです。
乗り心地に関しては、スポーツタイヤなのにしなやかで転がり抵抗も低いミシュラン・パイロットスポーツ5と、ノーマルの18インチアルミホイールよりも2.3kg軽量かつサスペンション機能を持たせたBBS鍛造アルミホイールが良い仕事をしています。
ちなみにSTIスポーツのサスペンション(ZF製連続可変ダンパー)は、ドライブモードセレクトで走りの味付けの変更ができますが、正直いうと「ノーマルで十分」と感じたくらいでした。
パワートレインはノーマルのはずですが、よりスムーズな旋回が可能になり無駄な加減速が減り、ネガな印象(アクセルを踏んだ時のレスポンスの悪さ)が薄れたように感じるのです。
ちなみに試乗車はSTIスポーツパーツのパフォーマンスマフラーが装着済みで、音量は控えめながらも低音の効いた雑味のないスッキリしたサウンドを響かせており、見た目よりも武闘派な音量でしたが、そう感じさせなかったのは専用制振剤の効果が効いているのでしょう。
※ ※ ※
ノーマルのSTIスポーツもハンドリングと乗り心地のバランスは国産車の中でトップレベルだと思っていましたが、STIスポーツ#はそのストライクゾーンをよりセンターに持ってきた印象で、「これがノーマルでも良いでしょ!」と思ったくらいの完成度です。
個人的には、より車両全体に手が入ったSTIコンプリートカー最上位の「Sシリーズ」のなかでも最高傑作だと思っている「S206」に非常に近い乗り味に感じました。
「ノーマルにパーツをつければ限定車にできる」と思う人もいるでしょう。実は筆者は以前、別のモデルでそのトライをしましたがが、結論からいうと「近づくが再現はできない」を実感済み。つまり、生産の仕方など、目に見えない部分にも「STIマジック」が盛り込まれているのです。
残念なのは、前述のように500台がすでに完売しており、今から新車で買えないことでしょう。
ただし、このタイミングで試乗会がおこなわれたことを考えると、「もしかしたら、もしかするかも!?」とも思ってしまうのですが、どういう形になるかは分からないものの、多くの人にこの乗り味を体験してほしいと思いました。
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