えっ…! 太いタイヤが「カッコいい」はもう「古い」!? オジサン層もびっくり! 「細くてデカい」が令和の「タイヤ新常識」だった?
くるまのニュース / 2023年8月29日 20時10分
効果的なクルマのカスタマイズとして、タイヤの大径化は、古くから使われてきた手法です。しかし近年は、大径化しつつタイヤ幅を補足するのがトレンドだといいます。ベテランドライバーたちにはちょっと馴染みのない「大径・細幅」化とは、どのような効果があるのでしょうか。
■「大径・細幅タイヤ」はカッコよくて「エコ」だった!?
2023年1月に発売となったトヨタの新型「プリウス」には、19インチという大径タイヤが装着されていますが、幅がかなり細いことも特徴的です。
プリウスだけでなく新型「クラウン」シリーズにも採用されている「大径・細幅タイヤ」には、一体どんなメリットがあるのでしょうか。
タイヤのインチサイズ(リム径)を大径化するのは、まずデザインを良くすることが目的です。
大径・太リム化はカスタマイズの定番アイテムとして、ベテランドライバーたちにも古くから馴染みの手法といえます。
トヨタの開発担当者によると、新型プリウスでもやはりデザイン向上を目的として大径化をしたといいます。
先代プリウスでは17インチ(215/45R17:最上級グレード)が装着されていましたが、新型では19インチ(195/50R19)を装着。サイドから見たときにホイールの面積が増えたことでタイヤ周辺の迫力感が増しており、走行性能の高さが感じられるようになりました。
ただ同時に、タイヤの幅は細くなりました。
先代では215mmだったタイヤ幅が、新型では195mmにまで細くなっており、新型プリウスを後ろから比べると、明らかにタイヤ幅が細くみえます。
この点についてもトヨタの開発担当者に話をうかがったところ、細幅化の目的は「燃費対策」だそう。
燃費改善には空気抵抗を下げることが効果的ですが、タイヤ幅を細くすることで前面投影面積(クルマを正面からみたときの水平断面面積)を減らすことができ、空気抵抗を下げることができていると説明します。
タイヤが細くなったと聞くと、走行性能が不安になりますが、タイヤの最大外径が増しているため、地面とタイヤが接する面積(接地面積)が縦方向に伸び、トラクション性能とコーナリング性能は犠牲になっていないのだといいます。
実際、新型プリウスのカタログ燃費は、先代を上回る28.6km/L(WLTCモード燃費)を達成しています。
この新しい大径・細幅タイヤという考え方は、BMWの電気自動車「i3」も採用していました(2022年に販売終了)。
i3は、フロント155/70R19、リア175/60R19という超特殊サイズを装着していましたが、こちらもやはり燃費(電気自動車なので正しくは「電費」)改善が目的だと思われます。
タイヤの細幅化はまた、クルマの小回り性能向上にも効果的です。
ハンドルを端まで回す「フル転舵」をしたとき、タイヤ幅が太いとタイヤとボディ内側が干渉してしまいますが(干渉しないところでストッパーを付けています)、細幅化することで、この干渉を減らすことが可能となります。
新型プリウス(19インチタイヤ)の最小回転半径は5.4m、先代プリウス(17インチタイヤ)は5.5mですので、改善に成功しているといえます。
ただ、タイヤの大径・細幅化は、いいところだけではありません。
大径化したことでタイヤホイールが重たくなる、つまりバネ下重量が重たくなることで、路面の凹凸を受けてクルマがバタバタするようになり、乗り心地が悪くなったり、ロードノイズ(走行中の騒音)の悪化が起こりがちです。
実際、新型プリウスは、低・中速時こそ静かですが、高速走行中のロードノイズはやや高まる傾向にあるようです。
乗り心地やロードノイズは、タイヤの性能だけで決まる性能ではありませんが、タイヤは唯一地面と接している部品のため、影響は非常に大きいものがあります。
また、これまでの市販タイヤには無かった珍しいサイズであるため、現時点は交換用タイヤが割高かつ種類が少ないというのもデメリットとして挙げられます。
※ ※ ※
ただ、こうした大径・細幅タイヤを採用するクルマが増えれば、種類も増えて価格も下がるはず。
何より大径タイヤの欠点であった燃費性能を、細幅化することでクリアしてきたことは、カッコいいクルマが欲しいクルマ好きとしては嬉しいところでしょう。
大径・細幅タイヤは、最先端の技術が込められた凄いタイヤなのです。
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