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「通りゃんせ」最近聞いた? 道路の「歌う信号」が絶滅寸前 数を減らしている背景は

くるまのニュース / 2023年9月15日 14時10分

横断歩道の信号が青になると同時に音楽が流れてくる「メロディ式信号機」が、大きく数を減らしています。どのような背景があるのでしょうか。

■メロディを奏でる信号は、何のためにある?

 横断歩道の信号が青になると同時に音楽が流れてくる「メロディ式信号機」が、大きく数を減らしています。どのような背景があるのでしょうか。

 横断歩道を渡るとき、信号機から「通りゃんせ」の曲が流れてくることがあります。あるいは「夕焼小焼(夕焼け小焼け)」や「春の小川」を聞いたことがある人も多いでしょう。

 こうした曲は多くの人が知る童謡や文部省唱歌が多く、以前には様々なものが使われていました。1975年当時では、全国で21曲に上ったといいます。例えば「赤とんぼ」や「お猿のかごや」のほか、動物園の前で“お馬の親子は仲良しこよし”の「おうま」が流れていた例もあります。

 青信号で音楽が流れる信号機は「メロディ式信号機」といいます。

 また、音が聞こえる信号機といえば、「ピヨピヨ」「カッコウ」と鳥の鳴き声を発する信号機もあります。これらはメロディ式に対して「擬音式信号機」といいますが、両者をあわせて「音響式信号機」と称します。

 では、音響式信号機にはどのような役割があるのでしょうか。日本視覚障害者団体連合の担当者は次のように話します。

「音響信号機は視覚障がい者に青信号になったことを伝えるために存在します。また、視覚障がい者が信号を横断する際に危険なポイントとして、まっすぐ歩くことが難しいことが挙げられます。

 そのため、音響信号機が音を出すことで、視覚障がい者にとって道標のような役割も果たします」

 音響式信号機は、視覚障がい者など信号の色を認識しにくい人が、より安全に通行できることを目的にしています。

 そのため、設置場所も目の不自由な人がよく利用するところが選ばれています。具体的には、視覚支援学校(盲学校)やリハビリテーションセンター、役所など公共施設を含む地域が優先されます。

■メロディ式信号機は激減 新たな信号機が誕生するかも

 音響信号機は時代とともに増加しています。2017年には全国で1万9500基でしたが、2022年には2万838基と、より身近な存在になっているようです。

 ところが内訳を見ると、擬音式の2万531基に対し、メロディ式は301基と全体の1%しかありません。2003年に約2000基あったといわれるメロディ式信号機は、その後、激減しているのです。

 理由は、視覚障がい者から「青信号の合図かどうかが分かりにくい」という意見が出されたためです。地域で曲が違うと混乱するということです。

 これを受けて、1975年に警察庁から規格を統一する通達が出されました。この際に、メロディ式は「通りゃんせ」と「故郷の空」に、擬音式は「ピヨピヨ」と「カッコー」だけに絞られることになりました。

 ちなみに「ピヨピヨ」と「カッコー」の両方を設置している交差点は、南北方向と東西方向、もしくは幅の狭い道と幅の広い道で音を使い分けています。

歩行者向けの信号機に設置されている音響スピーカー歩行者向けの信号機に設置されている音響スピーカー

 さらに、認識されやすい音の研究は進みます。

 ひとつは、横断歩道の両端から同じ音を交互に鳴らしたらどうか。あるいは、「ピヨ」「ピヨピヨ」と違う音を鳴らしたらどうなのか。

 実験の結果は、「ピヨ」「ピヨピヨ」と違う音を鳴らしたほうが聞き取りやすく、進行方向も分かりやすいというものでした。この方式は異種鳴き交わし方式と呼ばれています。

 一方、メロディ式信号機だと、交互に違う曲を流すと音楽がぶつ切れになり方向がつかめません。そこで、警察庁は2003年に異種鳴き交わし方式に統一する通達を出し、メロディ式信号機は姿を消していくことになったのでした。

 しかし音響信号機に全く問題がないわけでもありません。音がうるさいという近隣住民からの声を受けて、夜間に運用を止めるケースもあるのです。ただ、東京都内では運用停止中に死亡事故も起きています。

 そのため、警察庁は音響信号機に代わるものとして、新たな歩行者支援システムを開発し、運用を始めています。

 これは、信号機からBluetoothでスマートフォンに情報を提供するというもの。スマホ上で信号機の色や方向、位置情報などを音声で聞けるほか、バイブレーション(振動)でも信号の状態が分かります。また、信号機によっては、スマホ画面を長押しして青の時間を延長できます。

 対応する信号機は、2022年3月時点で全国に331基あります。詳しくは最寄りの警察などに問い合わせると良いでしょう。また、サービスを利用する際は専用アプリが必要ですが、現在は日本信号から「信GO!」が提供されています。

 一方で、日本視覚障害者団体連合の担当者は信号機に関して次のように話します。

「最近では専用アプリの普及が進んでいますが、スマートフォンを使用できない視覚障がい者もいたり、アプリに対応している信号機が少なかったりなど課題は多くあります。

 視覚障がい者が一人でも信号を渡れるように、どの信号でも周囲の状況を把握でき、安全に横断できるようになってほしいと思います」

※ ※ ※

 以前は聞くことの多かった「通りゃんせ」が流れる信号機。時代とともに数が減り、現在では東京など以外ではほとんどなくなっているといいます。

 しかし、その背景には、利用者のためを考えた改良や研究がありました。誰もが安心して道路を歩ける日に向けて、今後も信号機のさらなる進化が期待されます。

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