車の「ワイパー」近年は「役割」に変化? 種類はあれど基本機能は約100年継続 求められる性能とは
くるまのニュース / 2023年9月20日 9時10分
クルマのワイパーは雨の日には必要不可欠なものですが、今後どのような進化を遂げていくのでしょうか。
■クルマの「ワイパー」 役割に変化がある?
クルマを所有している人でお世話になったことがない人はいないといっても過言ではない装備、それはワイパーではないでしょうか。
雨の日などに視界を確保するために必要不可欠な装備であるワイパーですが、今後、どのように進化していくのでしょうか。
ひとくちにワイパーといってもさまざまな形状(動作)のものが存在しています。
もっとも一般的なのは「スイング式」と呼ばれるもので、通常時はフロントウインドウ下部に寝た状態でスタンバイしていて、動作させるとワイパーが上下動をしてフロントウインドウを拭き取ってくれるタイプです。
このスイング式はステアリング位置によって右スイングと左スイングが存在しており、右ハンドル車では左スイング、左ハンドル車では右スイングが一般的。
これは拭き残してしまう場所が少なく、ドライバーに影響を与えない方向をチョイスしているためですが、一部の輸入車などは右ハンドル化はなされているものの、ワイパー位置は左ハンドル用右スイングのままというものも存在していました。
スイング式ワイパーは派生タイプが多く、一般的なものは2本のワイパーでフロントウインドウを払拭するタイプとなりますが、窓の横幅が広いトラックなどでは3本のものも存在しています。
逆に1本タイプも存在していますが、こちらはトヨタ「ヴィッツ(3代目)」やホンダ「トゥデイ(初代)」などに採用された、ワイパーアーム部にリンク機構を持たせて1本で広い範囲をカバーするコスト重視仕様のほか、過去にメルセデス・ベンツが一部車種で採用していた「パノラマワイパー」というタイプも存在しています。
パノラマワイパーとは、ワイパーアームの回転軸にリンク機構を備えることによって、ワイパーの動作に合わせてアームを伸縮させ、1本でフロントウインドウのほぼ全面をカバーするというもの。
その独特な動きも必見ですが、部品点数が多く、故障のリスクと修理費用がかさむという欠点があり、現在は一般的なスイング式が採用されています。
それ以外で比較的採用例が多いのが、対向式ワイパーと呼ばれるものです。
こちらは動作自体はスイング式と同じですが、左右のワイパーが内側からウインドウ外側に向かって動くタイプとなっており、作動するときにワイパー同士が当たりそうに見えることから「ケンカワイパー」という愛称で呼ばれることもありました。
そのほか、乗用車ではあまり見られませんが、路線バスなどにはフロントウインドウ中央に縦の状態で備わる、合掌型というタイプも存在します。
これは路線バスなどの広く大きなフロントウインドウを持つ車両の一部で、2枚などに分割されたウインドウを装備している場合、1本のワイパーがそれぞれ左右のガラスを担当しているものです。
このようにさまざまな形状が存在するクルマのワイパーですが、ゴム製のブレードをバネ式のアームによりフロントウインドウに密着させて動作させ、雨粒などを払拭するというおおまかな構造は、1903年に生みの親であるメアリー・アンダーソン氏が特許を取得して以来、大きく変化はしていません。
現在のように電動モーターを使用してワイパーを作動させるシステムは、1926年にドイツのボッシュ社が発表したもので、それからおよそ100年間、基本的な仕組みが踏襲され続けていることになるのです。
とはいえワイパーが全く進化していないかというとそういうわけではありません。
例えば近年の自動車のフロントウインドウは平面ではなく、湾曲したものがほとんどとなっています。
そういった曲面ガラスにも、払拭面が均一に当たるようなブレード構造になっていますし、高速走行時もワイパーが浮き上がって機能しないということがないように、空力特性も常に進化しています。
さらに、現在では先進安全装備を構成するカメラ類もフロントウインドウ内部に装着されるケースが増えてきています。
ワイパーはドライバーの視界だけでなく、カメラの視界を確保するためにも重要な要素となっているため、基本構成は変わらずとも「水分を拭き取る」という本来の性能自体は今後も進化していくことは間違いないでしょう。
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