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なぜ「100万円以下」の軽自動車激減? 小型車と立ち位置逆転? 「安いクルマ」の代名詞が過去の物となった訳

くるまのニュース / 2023年9月25日 9時10分

かつては「安いクルマ」の代名詞であった軽自動車ですが、現在では乗り出し価格が300万円を超えるものも登場するなど、そのイメージは払拭されつつあります。そこにはどのような背景があるのでしょうか。

■いまや250万円からも!軽自動車は「安いクルマ」ではなくなった

 かつて、軽自動車を選ぶユーザーのほとんどは、コンパクトカーなどの登録車と比べて車両価格が低いことを最大の理由としていました。
 
 しかし現在では、乗り出し価格が300万円を超えるものも登場するなど、そのイメージは払拭されつつあります。
 
 そこにはどのような背景があるのでしょうか。

 軽自動車が、戦後日本の経済復興を助けるための安価な移動手段として誕生したことを考えると、これは極めて自然な流れと言えます。

 その結果、軽自動車は機能や装備が簡素であることが多く、簡単に言えば「コンパクトカーを買う予算がないから軽自動車を買う」というユーザーが少なくありませんでした。

 しかし、現代では軽自動車のそうしたイメージは払拭されつつあります。

 たとえば、軽自動車販売台数ランキング上位を占めるホンダ「N-BOX」やダイハツ「タント」、スズキ「スペーシア」といったスーパーハイトワゴンでは、乗り出し価格が200万円を超えることも珍しくなく、装備内容によっては300万円に達することもあります。

 また日産の軽EVとなる「サクラ」は254万円からとなるなど、もはやコンパクトカーを超えた存在です。

 一方、これまで軽自動車と比較されることの多かったトヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」といったコンパクトカーを見ると、乗り出し価格は上に挙げた軽自動車と同等以下です。

 むしろ、ガソリン車を選べばコンパクトカーのほうが軽自動車よりも割安である場合もあります。

 そのため、「コンパクトカーを買う予算がないから軽自動車を買う」という図式はもはや崩れ去ったと言えます。

 逆に言えば、スズキ「アルト」やダイハツ「ミラ」、あるいは軽バンや軽トラックなどの商用車のように、経済性が最優先される一部のモデルをのぞけば、新車価格が100万円を下回る軽自動車はほとんどありません。

 そこにはインフレや原材料高騰などの影響もあると思われますが、現代の軽自動車の特徴は、必ずしも車両価格が低いことにあるわけではないと言えそうです。

 もちろん、維持費を含めて考えれば、軽自動車には多くのコストメリットがあるのも事実です。

 ただ、単に車両価格の低さを優先するのであれば、中古車を選ぶという選択肢もあります。 

 にもかかわらず、新車で高額な軽自動車を購入するユーザーが多い背景には、残価設定ローンや個人向けリースのような、月々の支払い額を抑えながら新車を手に入れる方法が浸透してきたことがあると言われています。

 より高額な新車を手に入れやすくなったことも、軽自動車の高額化の一因と言えそうです。

■軽自動車が高くなった理由は「グローバルモデル化」?

 軽自動車の高額化には、コンパクトカーの置かれている状況も大きく関係しています。

 2000年代前半の頃の国産コンパクトカーの多くは、日本市場をメインターゲットとしていたことから、日本のユーザーのニーズを最優先して開発されていました。

 実際、当時のヴィッツ(ヤリス)やフィットは軽自動車をしのぐ販売台数を誇っており、まさに日本のユーザーのためのクルマとなっていました。

 しかし、2000年代後半以降になると、多くの自動車メーカーがグローバルモデルとして同じ車種を多くの市場で販売するようになり、ヴィッツ(ヤリス)やフィットもグローバルモデルへと変貌を遂げることになります。

 グローバルモデル化には多くのメリットがある反面、特定の市場のニーズを反映させづらいという側面もあります。

 その結果、コンパクトカーの多くは、かつてのように日本のユーザーだけを最優先させることが難しくなってしまいました。

 たとえば、日本の道路環境では全幅の大きなクルマはあまり好まれませんが、海外市場では居住性や走行安定性の観点から一定の全幅がある方が好まれます。

 この場合、販売台数の多い海外市場のニーズが優先されてしまうことは避けられないのが実情です。

グローバルで展開されるトヨタ「ヤリス」 日本の登録車では1番売れているモデルグローバルで展開されるトヨタ「ヤリス」 日本の登録車では1番売れているモデル

 一方、軽自動車はそもそも日本独自の規格であるため、日本のユーザーのニーズを満たすことに専念することができます。

 こうした事情もあり、自動車メーカー各社はかつてのコンパクトカーに求められていた要素、つまり必要十分な機能や走行性能を軽自動車へと盛り込むようになりました。

 そうして誕生したのが、2011年に登場した初代N-BOXです。

 コンパクトカーと同等以上の機能を備えていたことに加え、高速道路でも非力さを感じさせないターボエンジンを搭載し、さらには圧倒的な室内空間を持っていたN-BOXは、当時の軽自動車としては高額であったにもかかわらず、またたく間にベストセラーモデルへとなりました。

 現在は3代目へのフルモデルチェンジを控えているN-BOXですが、すでに公開されている情報によると、これまで以上に充実した機能や装備を備えているなど、高額路線が継続される見込みです。

 このように考えると、「軽自動車は安い」というのはすでに過去のイメージなのかもしれません。
 
※ ※ ※

 初代N-BOXの登場から10年以上が経過した現在、日本の新車のおよそ4割が軽自動車となっています。

これを日本の貧困化の象徴とする声もありますが、売れ筋の軽自動車の多くが高額なスーパーハイトワゴンであることを考えると、そうした指摘は必ずしも正しくありません。

 むしろ、現在の軽自動車が、日本のユーザーにマッチしたクルマとなっていることの証左であると言えそうです。

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