「タイヤに窒素ガス注入」? 空気とは何が違う? なかには有料サービスの場合も タイヤ交換時の定番メニュー 効果はあるのか?
くるまのニュース / 2023年9月25日 11時10分
タイヤ交換時に、窒素ガスを入れるか聞かれることがあります。有料の場合もありますが、通常の空気とは違い、どのようなメリットがあるのでしょうか。
■「タイヤに窒素ガス入れますか?」 効果はある?
整備工場やカー用品店などでタイヤを交換するとき、通常の空気か「窒素ガス」を入れるか、聞かれることがあります。
オプションとして有償の場合もありますが、タイヤに窒素ガスを入れるとどのような効果があるのでしょうか。
そもそも窒素とは、空気中の約78%を占める気体で、もっとも身近で安定した気体といえます。
自動車整備士のT氏は窒素ガスについて以下のように話します。
「空気(大気)中に多く存在している窒素は多くの生体物質中に含まれており、構成する元素の窒素分子は(常温では)無味無臭で非常に安定した気体と言われています。
この安定している窒素のおかげで地球の表面に大気が形成されている、とも言えます」
現在タイヤに注入されるエアーはその名の通り、単なる空気です。そして空気に含まれる窒素以外の気体のなかには微量の水分が含まれており、この水分が温度など環境の変化によって膨張や収縮を繰り返す性質があるのだといいます。
「もともとタイヤは、ごく微量ながら空気が抜けていく構造になっています。
そして空気を入れたタイヤでは気温などの外的要因で空気の体積の変化が起きやすいために、減り方も窒素のみより早くなります。
つまり逆説的に言えば窒素のみを入れていれば、気温などの変化があっても体積の変動が少なくて済むため、タイヤのエアーが抜けにくくなると言われています。これがタイヤに窒素ガスを入れる最大のメリットでしょう」(T整備士)
また、この体積変化の少なさに加え、発火しやすい酸素を含まないというのも大きなメリットかもしれません。
たとえば、レースカーなどではこの「引火性の低さ」という特徴から、早くから窒素が使われているという話もあります。
「ただし、レースカーのような高速走行を続けるわけでも、同じくタイヤに窒素を使っている航空機のように高度何千mになるわけでもない通常の使用環境では、その違いをあまり感じられないかもしれません。
それに体積変化が少ないとはいえ、窒素ガスでも少しずつタイヤから漏れ出してしまうのは仕方のないところ。
通常のエアーでは1ヶ月でタイヤ全体の空気が3〜5%抜けてしまうのですが、窒素ガスはその半分程度に抑えてくれると言われています。ただし、それでもタイヤの空気圧がずっと適正値にとどまるわけではなく、定期的なチェックと補充は必要です」(T整備士)
T整備士が懸念するのは、窒素ガスを入れることで安心してしまい、定期的な空気圧チェックなど、タイヤのケアがおろそかになってしまうこと。もちろん窒素ガス注入にはメリットもありますが、完全ではないということなのです。
■意外なデメリットもある?
この窒素ガス注入ですが、カー用品店によっては1本500円前後の費用がかかることがあります。
4本注入なら2000円前後、2ヶ月に1回の注入として年6回とすると、それだけで1万2000円前後の費用がかかる試算になります。
通常のエアーであれば給油などのついでに無料で入れてもらえるので、その差はかなり大きいかもしれません。
分かりやすいメリットは少ないかも…
また窒素ガスを取り扱っているお店でしか入れられないというのもデメリットになるでしょう。しかもタイヤの空気圧が下がってきた場合、追加で補充するのも設備があるお店でしか補充できないという“お店しばり”が発生します。
「そのほか、通常のエアーに含まれる酸素がないため、タイヤ内部にあるワイヤーや接している金属製のホイールなどの酸化を防ぐメリットがあると言われていますが、これも通常の走行ではそこまで気にするほどでもないでしょう」(T整備士)
T整備士によれば、わざわざ窒素ガスを入れるほどスポーツ走行を予定していたり、長距離を走る人はともかく、多少エアーの減りが遅くなる程度のためにお金を出して窒素ガスを注入するのはお勧めしないのだとか。
それよりも、「マメに空気圧とタイヤの状態をチェックするほうが、より安全で快適なドライブが楽しめるはず」といいます。
このように、窒素ガス注入はメリットがあるものの、コストをかけて入れてもさほど効果を感じられないケースもありそうです。
一方で、気温による体積変化が少ないことを考慮すると、低気温の環境で使用するために空気圧が低下しがちなスタッドレスタイヤでは、それなりにメリットを実感できるかもしれません。
もし気になっていたのであれば、一度窒素ガスを注入して試してもいいかもしれません。
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