国産車のメーター表示「180キロ」なぜ? 法定速度より出せる理由は? 海外では速度引き下げの動きも
くるまのニュース / 2023年10月4日 9時10分
日本の道路は普通車の場合、一般道60km/h、高速道100km/h(一部で120km/h)という法定速度が決まっています。しかし、クルマのスピードメーターを見ると180km/hまで表示できる場合が多いですが、なぜ法定速度以上の数値が表示されているのでしょうか。
■メーターは180km/hまで表示されているのに…一般道の法定速度が60km/hなのはどうして?
日本車のスピードメーターは180km/hまで表示できる場合が多いです。
しかしながら、日本の法定速度は一部の高速道路でも最高で120km/hと定められており、スピードメーターよりも低く設定されています。ではなぜ180km/hに設定されているのでしょうか。
日本の道路交通法では速度制限標識がない道路を走行した場合、車両ごとに法定速度が定められています。
普通自動車の法定速度は、一般道を走行した場合で60km/hです。
また高速道路の最高速度は100km/h、最低速度は50km/hと定められています。
最高速度で走行できる場所は、高速自動車国道の本線車道や加速車線、減速車線を走行した場合に限られています。
1963年に名神高速道路の一部が開通して以降、約半世紀に渡り、高速道路の最高速度は100km/hと定められていました。
しかし国では制限速度を見直す議論が行われて、2019年3月から新東名高速道路と東北自動車道の一部区間で試験的に制限速度が120km/hまで引き上げられました。
その背景には、比較的渋滞の発生が少ないことに加え、死傷事故や1km当たりの交通事故率が低いことなどが理由となっています。
同様に、東北自動車道の起点である川口JCTから宇都宮IC間も2017年から段階的に最高速度が引き上げられ、2020年に最高速度が120km/hとなっています。
なお、東関東自動車道(千葉県)の一部でも、最高速度110km/hへの引き上げをおこなっており、試験運用ののちに120km/hに引き上げています。
日本の最高法定速度は120km/hになりますが、日本自動車工業会に参加している国内メーカーは、スピードメーターの制限を180km/hで統一しています。
日本自動車工業会の担当者は「180km/hの表記は自工会によるものではなく各個社の判断による表記です」と話します。
それでは、なぜメーカーは日本の道路交通法では法定速度が60km/h、高速道度でも100km/hもしくは120km/hと定められているのに、180km/hまで表示される設計になっているのでしょうか。
■なぜ日本では180km/hの表示なの? 海外では速度制限を下げる動きも…なぜ?
日本でスピードメーターの表示が180km/hとなっている理由にはどのようなものが考えられるのでしょうか。
主な理由として、スピードリミッター搭載当時の自動車技術が関係しているという説です。
当時は、高速道路の最高速度が100km/hとされており、上り坂の勾配は最高で6%となっていました。
100km/hの速度を維持して勾配が6%の坂道を登るには、平坦路で180km/hの速度を出せる性能が必要とされており、スピードメーターが180km/hになったというのです。
またドライバーに速度を知らせる装備として1974年から速度超過警告ブザーが装着されていました。
普通車では車速が約105km/h、軽自動車では約85km/hを超えた際にドライバーに警告するためのものです。
初期には、小型の鉄琴を鳴らす仕組みで「キンコン」と音を発するものでしたが、次第に電子音のブザーが鳴る車種も増えました。
しかし、1986年に装備の義務付けが廃止されたことを受けて終焉を迎えています。
このようなクルマのスピードメーターですが、日本国内を走るすべてのクルマのメーターが180km/hまで表示されているわけではありません。
国産車でもスポーツモデルやグローバルモデル、日本に輸入されている海外メーカーの車種では260km/hや320km/hまで表示されているものもあります。
日産「GT-R」の速度表示は340km/hまである
一方でスウェーデンのボルボは、2020年5月にスピードリミッターの上限速度を、全モデル180km/hに引き下げることを発表しました。
欧州などでは、ドイツのアウトバーンといった速度無制限の道路もあり、日本に比べて平均速度が高い区間が存在し、前述のようにスピードメーターが200km/h以上で表示されることも珍しくありません。
しかしボルボは、ドライバーのより良い運転をサポートし、死亡事故や重傷事故をなくすことを目標として掲げており、その第一歩としてスピードリミッターの上限速度引き下げに踏み切ったとしています。
この際ボルボは「たとえ一部の顧客を失うとしても、最終的に人命を救うためには自動車メーカーの権利と義務をめぐる議論の先駆者であり続けるべきだと考えている」として、事故のリスク低減について強い姿勢を示しています。
さらに、ボルボはクルマの所有者が、周囲の人にクルマを貸す際などに、さらに低い上限速度を設定できる「Care Key」という機能も搭載しています。
国内外の自動車メーカーは、自社製品の性能を高め商品力を向上させていく一方で、「交通事故死傷者ゼロ」といったことにも真摯に取り組んでいます。
今後、スピードメーターの表示や、条件による速度制限といった機能に関しては、安全を意識した新たな動きが出てくる可能性も考えられます。
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