まさに「“コンパクト”センチュリー」!? 全長4.5m以下の「小さな超高級車」! お値段700万円のトヨタ「オリジン」がスゴすぎた
くるまのニュース / 2023年10月8日 8時10分
2000年にトヨタが発売した「オリジン」。1000台のみの少量生産にも関わらず、観音開きドアのオリジナル車体を熟練工が組み立てて生産した規格外の「小さな高級車」でした。その「トヨタの本気度」をご紹介します。
■初代クラウンをモチーフにしたボディは職人による手作り!?
トヨタが自動車生産台数累計1億台を達成したことを記念して、2000年に1000台限定で販売した4ドアセダンがオリジンです。
同車は「プログレ」をベースに開発されましたが、単なる限定車とは思えないほどに変更箇所が多く、外観的にはまったく違うクルマに仕上がっていました。
そのデザインは、1955年に発売された初代『クラウン』がモチーフとされました。トヨタが累計1億台に至った礎、そしてクルマづくりの原点が、まさに初代『クラウン』にあったからです。
「起源」という意味を持つオリジンという車名が与えられたのも、同様の理由によるものです。
既存車種をベースに外観をレトロ風に仕立てる際には、フロントの変更やメッキパーツの装着などにとどまることが普通ですが、オリジンではそれだけではなく、なんとボディ全体の設計も異なっていました。
フロントは丸いヘッドライトにメッキのバンパーを装着。グリルは、初代クラウンのそれをイメージしていました。
さらに大きな驚きはリアドアの開閉方法の変更で、リアドアは初代クラウンと同様の後ろヒンジ式を採用。いわゆる「観音開き」とされていました。
しかもリアの窓も、初代クラウンのように、ピラー側に大きく湾曲した曲率の強いガラスを使用。リアフェンダーには初代クラウンのような峰が走り、テールランプも後期モデルの造形をトレースしていました。
しかもフェンダーやリアドアなどの造形は、量産困難な複雑な面を有していたため、細かなパネルを組み合わせる方法を選択。そのため、外板に関しては事実上の手作りとなりましたが、継ぎ目がわからないほどの精緻な仕上がりを誇っていました。
塗装においても工程は手作業。一度塗装した面をさらに耐水ペーパーで磨き、再度塗装・磨きを繰り返しており、平滑さ・塗装の美しさは群を抜いていました。
これらの作業を可能としたのが、最上級セダン「センチュリー」の生産ラインを担うトヨタの職人(クラフトマン)たちです。
トヨタでは、オリジンの開発にあたり、「匠の技を21世紀に残す」こともテーマとしました。
どれだけクルマの生産が自動化しても、ものづくりの現場では熟練したクラフトマンの技術が重要で、そのチカラを人から人へ伝えることも、よいクルマづくりには重要であるとトヨタは考えました。そこでオリジンのボディは、彼らの手に委ねられることになったのです。
内装では、ダッシュボードのデザインはプログレを踏襲しましたが、厳選された素材を丁寧に縫製した本革シートや、本木目パネルなどが備えられ、外観に負けぬクラフトマンシップを感じることができました。
■まさに“小さなセンチュリー”?
見た目にはクラシカルなオリジンですが、ベースは1998年デビューのプログレのため、発売された2000年当時の最新技術はそのまま盛り込まれていました。
限定車なのに観音開きまで採用…オリジンは本気すぎる1台だった
エンジンは215psを発生する3リッター直列6気筒エンジンが搭載されており、動力性能は十分以上でした。ノスタルジックな外観と最新の走りの組み合わせは、ある意味クルマ好きの理想ともいえます。
安全面においても、手作業で外板を組んだクルマでありながら、衝撃吸収ボディ・高強度キャビンの「GOA(ゴア)」はそのままキープされていたことも現代流でした。
オリジンの魅力はそれだけではありません。
設計の基礎となったプログレは、クラウン、もしくは『セルシオ(現在のレクサスLS)』に匹敵する品質を誇る「小さな高級車」でありながら、クラウンよりも全長が20cm以上小さいボディが特徴でした。
全長約4.5mというサイズは、ひとクラスコンパクトな『コロナ・プレミオ』とほぼ同じでした。BMW「3シリーズ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」、アウディ「A4」などの欧州製高級セダンもほぼ同サイズだったのですが、日本にはその直接的なライバルとなる4.5m級プレミアムコンパクトが販売されておらず、「プログレ」は貴重な存在と言えました。
オリジンでも、プログレが持つ「適度で乗りやすいサイズの、小さな高級車」という美点は引き継がれていました。クラフトマンシップに溢れた内外装により、「小さなゼンチュリー」とも称されることさえあるほどです。
オリジンの価格は700万円と設定されていました。20年以上前では高額な国産車でしたが、手作業で生まれたクルマという価値を考えると、現在ではバーゲンプライスに感じるほどです。
いわゆる「パイクカー」にも含まれるクルマでありながら、トヨタの高い技術力と、それを継承する本気度が詰まったオリジン。今後も、このようなコダワリや本気が詰まったクルマの登場が期待されます。
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