なぜ軽の「64馬力規制」は続く? 軽EV登場でトルクは小型車並み! 一方最高出力の「自主規制」は残る理由とは
くるまのニュース / 2023年10月13日 7時10分
2022年5月に登場した日産「サクラ」と三菱「eKクロス EV」は、これまでの軽自動車にはない性格を持っている一方で、最高出力は「64馬力規制」を意識したものとなっています。そこにはどのような背景があるのでしょうか。
■軽BEVにも影響を与え続ける「64馬力規制」とは?
軽自動車には昔から自主規制として最高出力を「64馬力まで」とするものが存在します。
そのため2022年5月に登場した日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」においても最大トルクはコンパクトカー並みながら最高出力は64馬力以下となっているのです。
なぜ現在においても最高出力は「64馬力規制」が存在するのでしょうか。
サクラとeKクロスEVは、これまでの軽自動車にはない性格を持っている一方で、最高出力は「64馬力規制」を意識したものとなっています。
現在販売されている軽自動車のスペックを見ると、多くのモデルが「全長3400mm以下」「全幅1480mm以下」「全高2000mm以下」「排気量660cc以下」「定員4名以下」「貨物積載量350kg以下」、そして「最高出力64馬力以下」となっていることがわかります。
これは、軽自動車という規格自体が道路運送車両法によって規定されているためですが、正確に言えば「最高出力64馬力以下」については法律で規定されたものではなく、あくまで自動車メーカー間の自主規制によるものです。
こうした自主規制がおこなわれるようになった背景は、1980年代に軽自動車ブームが到来したことと大きく関係しています。
当時、自動車メーカー同士の競争が激化したことでよりハイパワーな軽自動車が登場するようになったものの、行き過ぎたパワーは交通違反や交通事故の増加を招くおそれがあるとして、最高出力に一定の制限を設けることになりました。
その際、1987年に発売されたスズキ「アルトワークス」が当時最もハイパワーな軽自動車であったことから、64馬力が上限とされました。
現在、この自主規制が実施されるようになってから30年以上が経過していますが、その間ごく一部の例外をのぞいて、64馬力を超える軽自動車が登場することはありませんでした。
一方、ここ数年で軽自動車にも電動化の波が訪れています。
軽自動車市場でのBEV普及をけん引する日産「サクラ」(左)と三菱「eKクロスEV」(画像はオフライン式の様子)
前述のサクラ/eKクロスEVは、発売直後から好調な売れ行きを記録するなど、日本におけるBEV普及の立役者となることが期待されています。
ただ、そのサクラ/eKクロスEVのスペックを見ると、いずれも最高出力は64馬力となっています。
BEVの最高出力は、バッテリーマネジメントシステムの調整によって比較的容易に調整が可能であるとされていますが、それでもサクラ/eKクロスEVの最高出力が64馬力となっているのは、やはり自主規制の影響と考えられます。
実際、自主規制の影響を受けない最大トルクについては、サクラ/eKクロスEVは一般的な軽自動車の2倍程度となっています。
革新的な軽自動車として高い評価を得ているサクラ/eKクロスEVですが、自主規制を打ち破ることはできなかったのでしょうか。
■「64馬力規制」を守り続ける意外な理由
実際のところ、BEVはもちろん、ガソリン車であっても64馬力を超える最高出力を持つ軽自動車を開発すること自体は難しくないようです。
にもかかわらず「64馬力規制」を撤廃しようという動きが見られないのは、そもそもユーザーがこれ以上ハイパワーな軽自動車を望んでいないという側面があるようです。
この点について、日産の担当者は次のように話します。
「軽自動車をお選びいただくお客さまは、サイズや維持費などを重視している人が多いと考えています。
そういった意味では、軽自動車は現状の枠組みのなかでも様々なシーンで必要十分な性能を有しています。
サクラについてもお客様より『期待以上の加速性能』との評価をいただいておりますので、必ずしも馬力(出力)が足りていないとは考えていません。
日産としては、今の軽自動車という枠組みのなかで、より魅力的なクルマを提供したいと考え、日々開発を行っています」
三菱が展開する「eKクロスEV」
日本の新車販売における軽自動車の比率はおよそ4割となっており、そのほとんどは日常の生活の足として活用されています。
もちろん、一部のユーザーはよりハイパワーなクルマを求めるかもしれませんが、その際にはコンパクトカーなどを選ぶことで事足りるケースがほとんどです。
そうした現状を考えると、実際には「最高出力64馬力以上の軽自動車」に対するニーズはほとんどないのが実情です。
つまり、サクラ/eKクロスEVをはじめとする現代の軽自動車は、「64馬力規制」に囚われているというよりも、それを打ち破るメリットがほとんどないため、結果として自主規制の範囲内でのクルマづくりを行っているというのが実際のところのようです。
※ ※ ※
バイクのなかには、軽自動車と同等の排気量のエンジンを搭載しながら、軽自動車をはるかに凌ぐ最高出力を持つモデルも珍しくありません。
たとえば、ホンダ「CBR650R」は650ccのエンジンで95馬力を発揮するほか、輸入車の中には100馬力を超えるものも存在しています。
このことからも、技術的には64馬力以上の軽自動車を開発することは難しくないことがわかります。
ただ、高性能なバイクのようなエンジンを搭載した軽自動車が扱いづらいことからも、ユーザーが軽自動車に求めているものとはかけ離れていると言えそうです。
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