ビッグモーターが説明ナシで「冠水車」を販売! 判決は「販売代金」の支払い命じる! ずさんな対応で何があったのか
くるまのニュース / 2023年10月12日 9時10分
2023年9月20日にビッグモーターが「冠水車ということを説明せずに販売した」として、クルマの販売代金の返還を求めた裁判が行われました。どのような経緯があったのでしょうか。
■ビッグモーターで買ったクルマが実は冠水車だった!? ひどい対応に前橋地裁が下した判決とは
ビッグモーターが「冠水車ということを説明せずに販売した」として、2023年9月20日にクルマの販売代金の返還を求めた裁判が行われました。
判決はビッグモーター側がクルマの販売代金を支払うよう命じられましたが、どのような経緯があったのでしょうか。
近年、ゲリラ豪雨や台風、高潮による大雨で多くの水害が発生している日本では年間で数万台規模の「冠水車」(水没車)が出ることも珍しくありません。
フロアやエンジンまで浸水すると修理代は数百万円に及ぶこともあるため車両保険に入っている車両であれば全損扱いとなり、多くの場合は満額の保険金が契約者に支払われることになります。
その後、全損扱いの冠水車は保険会社が引き上げて廃車にするか、冠水車として中古車オークションに出品される、もしくは海外に輸出されています。
輸出先として多いのがロシアで冠水車専門の修理業者が数か月かけて修復し、市場で販売されています。
購入者は日本で冠水した車両だということを理解して購入しますが、安価で満足度の高い修理済み冠水車は非常に高い人気があるようです。
日本で冠水車を販売することは違法なことではありませんが、その際は必ず冠水車であることを告知する義務があります。
告知せずに販売し後に冠水車であることが発覚すれば販売店はそのクルマを引取り、契約を解除する義務があることが自動車公正競争規約にて定められています。
ーーー
1.「冠水車」である旨の表示・説明がなかったため、「冠水車」であることを知らずに契約した消費者は、錯誤による契約の取消しを求めることができます。(民法95条)
2.虚偽の表示・説明をする等、「冠水車」であることを販売店が故意に隠していたときは、詐欺による契約の取消しを求めることができます。(民法96条)
3.販売店から「冠水車」ではないとの虚偽の表示・説明をされた場合や、「冠水車」である旨の表示・説明がなかったことにより、消費者が「冠水車」ではないと誤認をして契約結んだ場合、当該契約の取消しを求めることができます。(消費者契約法4条)
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なお、2023年4月には自動車公正競争規約が改正されており、規約違反措置基準に「冠水車」に関する不当表示に対する厳罰規定を新設。
初回から「厳重警告」を行い、悪質なものは併せて「違約金」を課す」とされています。
※ ※ ※
そうした中で、2019年にビッグモーター館林店でホンダ「シャトル」を購入し、その後、冠水車であることが判明。
購入代金などの返金を求めて裁判を起こした群馬県内の男性Aさんの場合は、上記の3.に該当します。
契約時、冠水車であることの説明は全くありませんでした。どの様にして冠水車とわかり、そして裁判を起こすことになったのでしょうか。
購入から2年近くたって冠水車であることが分かったAさんのシャトル
Aさんがシャトルを購入したのは2019年1月のこと。
走行距離わずか1500kmで初度登録から半年しか経過しておらずほぼ新車同様の状態でした。
その後、約1年8か月は問題なく乗っていましたが、ある時もらい事故で損傷してしまい、Aさんは修理のためにシャトルを板金工場に入庫します。
修理後、板金工場から「バックができなくなっている」と指摘を受けたAさんは原因究明のためにホンダのディーラーで見てもらったところ、冠水車であることがわかりました。
驚いたAさんでしたが、契約時に「最長10年間か10万kmの保証」を付けていたことから、当然保証がされると考えて冠水車であることを店に申し出ました。
しかし、ビックモーター館林店の対応は意外なものでした。
■驚きの対応!? ビックモーターに対して裁判も! 果たしてその結果は?
Aさんの申し出に対してビックモーター館林店は「購入から1年8か月も経過しているので誰が冠水させたかわからない」としてまったく対応なし。
その後の調査で前オーナーの男性が冠水した道路に突っ込んで水没させたことが判明しましたが、ビッグモーター側は最終案としてこんな提示をしてきたと言います。
「冠水車として30万円で(相場より高く)下取りするから新しいクルマを買ってください」
前所有者が水没させたのであれば、ビッグモーターはそのクルマを買い取るときに冠水車であることを知っていたはずです。
プロの買取業者であるビッグモーターが「冠水車であるとは気づかなかった」では済まされないでしょう。
全く解決になっていない提案であったため、Aさんが店で無償修理するか契約解除を訴えたところ、ビックモーター館林店は「うちで修理をする」といってシャトルを引き上げていきました。
しかし、その後長い間、修理をすることなく店の駐車場に放置。
そのためAさんは2021年9月にビッグモーターを提訴しており、その判決が2023年9月20日に出ることになります。
なお、事前に裁判官から「和解」の提案もされましたが、ビッグモーター側が提示した和解金額は10万円。
内訳は3年間の保管料と代車代金を差し引いた残りの金額ということでした。
ビックモーター館林店側は「修理をする」と言って持ち帰ったのに修理をすることなく3年近く放置した分の保管料まで請求してきたのです。
日本自動車査定協会の査定書には「冠水車として扱う車両」と明記されている。査定額は購入額の10分の1以下
そして2023年9月20日に群馬県前橋地裁太田支部で開かれた裁判ではAさんの主張を全面的に認め、ビッグモーター側に約320万円の賠償を命じました。
ちなみにビッグモーターではこのようなトラブルがあると、担当した営業社員がペナルティとして自腹で支払うという風習があります。
この件について、ビッグモーター広報部は「裁判で出された賠償命令に関して、従業員が自腹で支払うことはありません」と回答しています。
※ ※ ※
ビッグモーターでの購入や買取に関してはAさん以外にも多くのトラブルが発生しており泣き寝入りをしている被害者も少なくありません。
Aさんは今回の裁判の結果で「判決は当然の結果だと思っています。この裁判で、ほかの被害者に少しでも勇気を与えられるなら嬉しいです」と話してくれました。
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