なぜ軽の売れ筋は「スーパーハイトワゴン」ばかり? ホンダ「N-BOX」みたいな“背の高い軽“に人気が集中する訳
くるまのニュース / 2023年10月12日 10時10分
軽自動車の人気が高まるなか、とくに売れているのが背が高くスライドドアを装着した「軽スーパーハイトワゴン」です。一体なぜ人気が集中するのでしょうか。
■「軽スーパーハイトワゴン」なぜ人気?
いま、軽自動車のなかでもっとも勢いがあるのがホンダ「N-BOX」です。ダイハツ「タント」、スズキ「スペーシア」が後に続きますが、販売ランキング上位の軽自動車は全高が1700mmを上まわり、後席スライドドアを装備した「軽スーパーハイトワゴン」です。
軽自動車ではスーパーハイトワゴンが好調に売られる一方で、車種ごとの販売格差も広がっており、スーパーハイトワゴン以外の売れ行きが下がっているのです。
顕著なのはホンダで、2023年度上半期の1か月平均販売台数を見ると、N-BOXは1万6735台でしたが、ハイトワゴンの「N-WGN」は2477台とN-BOXの15%でした。
2代目N-BOXは2017年に登場しましたが、N-WGNが登場したのは2019年と設計が新しく、N-BOXに比べると天井は低いものの、4名で快適に乗車できます。収納設備が豊富に装着され、棚のように使える荷室も便利です。
そしてN-WGNの価格は、同程度の装備を採用するグレード同士で比べると、N-BOXに比べて20万円以上も安く、N-WGNの割安感や優れた実用性を考えると、売れ行きがN-BOXの15%では少なすぎるでしょう。
この売れ方を販売店ではどのように見ているでしょうか。ホンダの販売店スタッフは次のようにいいます。
「N-BOXは車内が広くて便利に使えるため、子育て世代のお客さまを中心に、以前から人気が圧倒的に高いです。立派な外観も人気ですし、高値で売却できることも魅力です。
価格は高いですが、お客さまの半数が残価設定ローンを使うため、月々の返済額はN-WGNと比べてあまり差が付きません」
そんななか、N-BOXが2023年10月6日に全面刷新し、3代目モデルが発売されました。残価設定ローンを利用して購入した場合、5年間/均等払いでの月々の返済額は、新型N-BOXの標準仕様が約2万3000円、一方のN-WGNのLは約2万円です。
「月々3000円の違いなら、便利で快適に使える人気のN-BOXが欲しい」と考えるユーザーは多いようです。
ただし改めて計算すると、月々3000円の差額で5年間/60回払いなら、返済額の合計では18万円の差が生じます。しかも残価設定ローンでは、上記の金額を支払っただけでは車両が自分の所有にならず、返却することになります。
所有権を手に入れるには、最後に残価を支払って買い取る必要があり、その金額は、5年間/60回払いの場合、新型N-BOXは約64万円でN-WGNは約49万円です。つまり月々の返済額に加えて、買い取る時の金額も新型N-BOXは15万円高いのです。
このように新型N-BOXは、N-WGNに比べて明らかに高価格ですが、残価設定ローンを使うと「月々3000円の違い」になってしまいます。一種のマジックといえますが、実用性や価格以前の話として「軽自動車を買うならスーパーハイトワゴンのN-BOX」になっているようです。
■軽スーパーハイトワゴンが“定番”となったわけ
スズキの販売店は、N-BOXやスーパーハイトワゴンについて、以下のように述べました。
「スズキでもファミリーのお客さまを中心に、スーパーハイトワゴンのスペーシアが人気です。その次は『ハスラー』です。
ハスラーはSUV風の軽自動車でスーパーハイトワゴンではありませんが、お客さまが値引きなどで選択に迷う他メーカー車にはN-BOXが多いです」
N-BOXは軽自動車の定番になり、ハスラーの購入を検討している人も意識しているようです。
スズキの軽スーパーハイトワゴン「スペーシアカスタム」
軽自動車のスーパーハイトワゴンが人気を高めた背景には、クルマの値上げもあります。日本の平均所得は1997年頃をピークに下がり、直近では増加傾向ですが、今でも26年前の水準には戻っていません。
それなのに、クルマの価格は同じ車種同士で比べると、2000年前後の1.2倍から1.5倍に上がっています。
値上げされた一番の理由は、安全装備の充実と環境性能の向上が挙げられるでしょう。かつてよりも現在のクルマの価格が高くなってもそれ以上の価値が加わり、むしろ買い得になっているともいえます。
しかし、そうはいってもクルマの購入資金には限りがあります。
そのために、ボディやエンジンの排気量を小さく抑えた軽自動車に注目が集まるようになり、なかでも、200万円前後で購入できる軽自動車のスーパーハイトワゴンが人気となっているのです。
軽スーパーハイトワゴンはミニバンと違ってシートは2列ですが、後席を格納すると自転車を積むことが可能です。
学習塾などの帰りや雨が降ってきたときなど、自転車で出かけた子どもを親がクルマで迎えに行くといった状況で、自転車をクルマに載せるという使い方をしている人も多く、メーカーの商品企画担当者からは「学校が指定する27インチの自転車を積めることも大切な条件です」という話も聞かれます。
また、スライドドアの採用により乗り降りもしやすいのも軽スーパーハイトワゴンの特徴のひとつ。以前のホンダ「ステップワゴン」の使い勝手が、今はN-BOXをはじめとした軽スーパーハイトワゴンに変わったというわけです。
※ ※ ※
残価設定ローンの普及やクルマの値上げ、所得の低迷など複数の理由により、軽スーパーハイトワゴンが定番の選択になりました。
今では新車として売られる軽乗用車の50%以上がスーパーハイトワゴンとなっており、特にホンダの場合、国内で売られる新車の約40%をN-BOXが占めています。
このような状態になると国内に投入される新型車にも偏りが生じ、ホンダはN-BOXとそのほかの軽自動車、小型ミニバンの「フリード」で国内販売の約70%を占めるため、小型/普通車には力が入りにくいです。
軽スーパーハイトワゴンを好調に売りながら、ほかのカテゴリーの販売促進も入念に行い、幅広いニーズに応えることが大切だといえるでしょう。
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