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「マイカーに乗客」日本解禁なるか ライドシェアで「ちょい乗り移動」どう変わる? 首相明言で導入議論が本格化

くるまのニュース / 2023年10月25日 20時10分

岸田首相が所信表明演説で「ライドシェアの課題」に言及しました。地域の移動の足が不足する中でこのライドシェアが解禁されると、どのような影響があるのでしょうか。

■解禁に向けた本格的な動きが加速

「地域交通の担い手不足や移動の足の不足といった深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んでまいります」

 2023年10月23日、岸田文雄首相が臨時国会での所信表明演説中に、こう発言しました。数日前から一部メディアが所信表明演説の内容を入手し、ライドシェアに関して報じたことで、テレビやネットで様々な意見が出ていたところです。

 今回の発言は、日本でのライドシェア解禁に向けて、政府としては基本的にGOサインを出し、法整備に向けた協議を進めることを示すものだと考えられます。無論、ライドシェアについては、すでにタクシー業界や地方自治体などで賛否両論あるのですから、それなりの「落としどころ」を探ることになるでしょう。

 ライドシェアは、2010年代半ばから米国で段階的に普及が始まり、そのトレンドが欧州、中国、インド、東南アジアなど世界に広がっていきました。

 きっかけは、スマートフォンの普及です。

 ライド(移動)が必要な人と、移動のためのクルマの座席を提供できる個人を、アプリでマッチングするという考え方です。

 では、ライドシェアが日本で解禁されると、社会にどのような影響があるのでしょうか。

 利用者の視点では、ポジティブとネガティブの両面が考えられます。

 ポジティブな面は、移動が便利になり、しかもタクシーと比べて運賃が安くなる可能性があります。

 岸田首相が「地域交通の担い手不足や移動の足の不足」と指摘したように、近年は全国の様々な地域で、運転手の不足により路線バスが減便や廃止になったりしています。また、タクシーを呼んでも台数不足でなかなか迎えに来てもらえなかったり、京都などの観光地では駅や有名観光地でタクシー待ちの長蛇の列ができたりしています。

 こうした、ライド(移動)の需給バランスが崩れている現状にライドシェアが加わることで、利用者が不便だった状況が改善される可能性があります。

 また、運賃についても、海外では需給バランスで変動する場合が多く、状況によっては日本でもタクシーと比べて運賃が安く済むケースが出てくることが考えられます。

■「ライドシェア導入」ネガティブな点は?

 一方、ネガティブな面は、プロではない普通の人が運転することでの安全性と信頼性です。

 海外では、ライドシェアのドライバーの運転やマナーを利用者が評価して登録します。別の利用者は乗車前にこの評価をスマホアプリで確認できるため、こうした方法を日本にも導入すれば利用者の安心感を高める一助になるかもしれません。

 次に、事業者の視点では、仮に海外のような形態のライドシェアが日本に導入されると、商売を奪われる可能性があります。実際、海外では多くの地域でタクシー事業者はライドシェアに反対の立場を示し、状況に応じて共存したり、または廃業するケースがあります。

 日本へのライドシェア導入に反対しているタクシー事業者は、タクシーの数が足りないことについては、タクシー配車アプリの拡充、時間や曜日によっては他地域のタクシー事業者との協調、そして外国人ドライバーの採用など、「ライドシェア解禁の前に、まだ打つ手はいろいろある」という意見を持っている人もいます。

タクシー配車サービスは様々なアプリが登場している(写真はイメージ)タクシー配車サービスは様々なアプリが登場している(写真はイメージ)

 また、すでに神奈川県の黒岩祐治知事が提案しているような、「日本版ライドシェア」だと、タクシー事業者が理解を示す場合があります。

 これは、タクシー会社など交通事業者がサービスの受け皿になって、普通免許所有ドライバーとその所有車の管理を行うという仕組みで、例えば地方自治体から事業を受託することで安定収入につながるという形も考えられるからです。

 いずれにせよ、利用者にとっては「必要な時に」「できるだけ安く」、そして「安心して」使える移動サービスが求められるところです。

 最後にひとつ、別の観点で最近のライドシェアに関する各種報道を見ていて気になることがあります。

 それは、すでに全国の一部地域で実用化されている「自家用有償旅客運送」と、岸田首相が今回発言したライドシェアとが、ごちゃ混ぜになって報じられているような印象がある点です。

 自家用有償旅客運送は、2006年の道路運送法の一部改正によって導入されました。

 その理由は、バスやタクシーがあまり走っていない「交通空白地域」や、福祉を目的とする場合に限り、地域の人がドライバーとして乗用車をタクシーにように使うことが許されています。少し古いですが、2018年の資料だと全国440の市町村で、2852の事例があります。

 運営するのは、市町村などの地方自治体、または特定非営利活動法人などで、地域住民や地域の交通事業者などで作る協議会で実施に向けた議論を積み重ねた結果、国土交通省から許可を得るという、かなりの期間を要するプロセスを踏むものです。

 つまり、日本ではすでにライドシェアは存在しているといえます。

 ただし、岸田首相のいうライドシェアが、この自家用有償旅客運送の許可手続きを簡素化したり、または交通空白地域ではない、都会での運用を認めるという流れになるのかは、現時点では不明です。自家用有償旅客運送とは別枠の法解釈によって、日本版ライドシェアを成立させるのかもしれません。

 または、基本的な法整備をした上で、地域の状況に応じて、日本版ライドシェアはカスタマイズされる可能性があるのではないでしょうか。

 タクシー事業者、そして市町村などの地方自治体、そして新規にライドシェアサービスを立ち上げる企業などにとっては、今後の国の動きから目が離せません。

 いずれにしてもライドシェアは、まず利用者の安全性と安心感の確保が最優先されるべきでしょう。その上で、利用者の利便性が上がることが期待されます。

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