みんなが「ガードレール」だと思ってるもの 実は違った!? じゃあ一体何? 道路脇に設置される“柵”の正体とは?
くるまのニュース / 2023年10月27日 9時10分
道路脇などに設置されている「ガードレール」は、よく見ると様々な形や色のものが存在しています。しかし、そのすべてがガードレールというわけではありません。それらは何というものなのでしょうか。
■「ガードレール」は「防護柵」の一種だった!
車道と歩道のあいだに設置されていたり、あるいは車道の上下線を隔てるように設置されている鉄製の柵などを、十把一絡げに「ガードレール」と呼んでいます。
しかし、実はこれらの総称は「防護柵」といい、ガードレールは数ある防護柵のひとつでしかありません。
そもそも防護柵とはどういう目的で設置され、そのなかのどういったものがガードレールと呼ばれるのでしょうか。
防護柵は、車両を対象とする「車両用防護柵」と、歩行者などを対象とする「歩行者自転車用柵」に区分されます。
国土交通省は、車両用防護柵について「進行方向を誤った車両が路外、対向車線または歩道等に逸脱するのを防ぐとともに、車両乗員の傷害および車両の破損を最小限にとどめ、車両を正常な進行方向に復元させることを目的とした施設」と定義しています。
一方の歩行者自転車用柵は、歩行者や自転車の転落、もしくはみだりな横断を抑制する目的で設置されています。
また、車両用防護柵は「剛性防護柵」と「たわみ性防護柵」に大別され、前者は主たる部材を変形させない構造で車両逸脱防止性能に優れるのが特徴です。簡単にいうとコンクリート製の壁で、形状の違いにより「単スロープ型」「フロリダ型」「直壁型」などがあります。
後者のたわみ性防護柵は支柱と水平材から構成され、部材が変形することで車両衝突時の衝撃を和らげる防護柵です。
水平材の種類により4つのタイプがあるのですが、波形断面の横長な鋼板を使用しているタイプがガードレールになります。ちなみに鋼板が平面でないのは、強度を高めるためだといいます。
そのほか、複数のパイプを水平に配置する「ガードパイプ」、鋼製ロープを使用した「ガードケーブル」、そして大きめの角パイプがいかにも堅牢そうな「ボックスビーム」があります。
また、近年増えてきているのが、弱めの支柱と張ったワイヤーロープを組み合わせた「ワイヤーロープ式」です。これは、車両がぶつかったときに支柱は折れるものの、残ったワイヤーでクルマを受け止め反対車線への逸脱を防ぐ仕組みになっています。
それぞれの使い分けは、設置箇所、つまり道路の区分や幅(路側の余裕)、設計速度、交通量、気象条件などが考慮されます。たとえば、高速道路の分離帯には強度の高いボックスビームが、降雪地帯では雪の積もりにくいガードケーブルが採用されることが一般的です。
■車両用防護柵の課題とは?
万一の際に車両の逸脱を防ぎ、乗員の安全を確保し、車両を誘導するなどして被害を最小限に食い止める優秀な車両用防護柵ですが、問題点がまったくないワケではありません。
なかでも、かねてから課題とされていたのが「防護柵が景観に与える影響」についてです。
道路に沿って連続的に設置される防護柵は、道路景観を構成する要素のひとつといえます。しかし、被視認性や視線誘導性の観点からガードレールは白色が標準とされていたため、景色に溶け込まず悪目立ちしてしまっていたのも事実です。
景観に配慮したガードレール
21世紀に入り「美しい国づくり」を進める日本としては、防護柵も景観に配慮していくことが必要と景観法が施行されました。それと同じ2004年には、国土交通省が「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」を策定しました。
白色以外にダークグレー(濃灰色)、ダークブラウン(こげ茶色)、グレーベージュ(薄灰茶色)なども選べるようになり、現在は景色が見やすいガードパイプやガードケーブルの設置数も増加中です。
そのほかでは、たわみ性防護柵の特性なので問題とまではいえませんが、クルマが衝突すると変形して壊れてしまう、緩衝材としての役目を終えてしまうのも一考の余地がありそうです。
鋼製ガードレールの耐用年数は20年から40年とされていますが、少しの変形でも機能を果たせない可能性があるため交換しなければいけません。
また、防護柵は長い距離でつながっているため、ぶつけた所だけでなく離れている所まで被害が及んでしまうのも難しいところです。
※ ※ ※
少しの衝突でも広範囲にわたる交換が必要になる防護柵に万が一クルマをぶつけてしまったら、当然ながら弁償しなければなりません。
代金は防護柵の種類や強度により異なりますが、1mあたり5000円から4万円程度。もちろん1mだけで済むことは少なく、さらには支柱やその基礎、工事の人件費や通行止めにする必要があればその費用も加算され、ちょっと当てただけなのに数十万円の請求なんていう話もザラにあるようです。
ただ幸いなことに、ほとんどの自動車保険(任意保険)の対物賠償保険で補償の対象になっているので、加入していれば個人で支払うことはありません。しかし、翌年以降の保険料を考えたら気を付けるに越したことはありません。
なお、防護柵に車両をぶつけてしまったら、運転者は警察と道路管理者に報告する義務があります。もしそのまま走り去ってしまうと当て逃げになり、違反点数と罰則が科せられますので、くれぐれもご注意ください。
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