商用車の絶対王者「ハイエース」なぜ大人気? 次期型は4ナンバー継続か!? トヨタの「商用バン」が魅力的すぎる訳
くるまのニュース / 2023年11月6日 16時10分
トヨタ「ハイエース」は、商用車全体のシェアの8割を占めるほどの人気を誇ります。一体どのようなところが支持されているのでしょうか。
■ハイエースの人気は圧倒的! なぜ?
街中で頻繁に見かけるクルマとして、トヨタのワンボックス商用バン「ハイエース」が挙げられるでしょう。小型/普通車サイズの商用バンは、日本で毎年10万台前後が売られていますが、その内の約80%、つまり8万台くらいをハイエースが占めます。
1年間に約8万台、1か月あたりでは6000台から7000台と販売規模はかなり多いです。乗用車であれば、トヨタ「ライズ」や「ルーミー」に相当します。
また軽商用バンの売れ行きは、最も多いダイハツ「アトレー/ハイゼットカーゴ」が1か月に約7100台、スズキ「エブリイバン」が約5200台ですから、ハイエースは商用バン全体で見ても好調に売られています。
ハイエースのライバル車は日産「キャラバン」で、最近は商品改良によってシェアを徐々に増やしています。それでも依然として、小型/普通車の商用バンはハイエースが80%を占めており、キャラバンが対抗するのは難しい状況です。
では、なぜハイエースが大人気なのでしょうか。その背景には複数の理由があります。
ハイエースの歴史を振り返ると、初代モデルが1967年に発売されたハイエースは、海外市場も視野に入れて商品力を高めていました。
いっぽう、ライバル車のキャラバンは1973年に登場。しかし1980年代に入ると、ユーザーから「ボディが弱い」という欠点を指摘されていました。
例えば1輪だけを歩道の上に乗せて、スライドドアを開いて荷物の積み降ろしをした場合、「キャラバンはボディがよじれてスライドドアが閉まらなくなることがある」というのです。
平らな場所に移して時間が経過すれば、元に戻りますが、仕事の効率は悪化します。その点で「ハイエースは丈夫」と評判になり、キャラバンとの差を広げ、シェアを拡大しました。
もちろん現行型のキャラバンでは、ボディの弱さは完全に払拭されていますが、仕事で使う商用バンでは特に耐久性が重視されます。
今の小型/普通車サイズの売れ筋商用バンは、実質的にハイエースとキャラバンの二者択一ですから、多くのユーザーがハイエースを選んでおり、「商用バンといえばハイエース」という状況になると、人気がますます高まります。
初めて商用バンを買う人も「ハイエースにしておけば間違いない」と考えるためです。
さらにハイエースの保有台数が増えると、外観のドレスアップを始めとするアフターパーツも積極的に開発され、「ドレスアップを楽しみたいから、乗用車のミニバンではなくハイエースを選ぶ」ユーザーも増えました。
この点は日産も気付いており、アフターパーツメーカーと連携して開発を行っていますが、なかなか差は縮まりません。アフターパーツの販売効率を考えると、やはり保有台数の多いハイエースに力を入れるでしょう。
この点についてトヨタの開発者は以下のように述べています。
「ハイエースのお客さまのうち、純粋に荷物の運搬だけに使っているのはおそらく40%程度でしょう。残りの60%のお客さまは、平日は仕事に使いながら休日はレジャーを楽しんだり、あるいは仕事には使わず、バイクや自転車を積むなどレジャー専用のクルマとしています。
そのためにハイエースのグレードでは、内外装の質感を高めて装備をミニバン並みに充実させた『スーパーGL』が人気です。
またレジャーの目的に応じて選べる豊富なアフターパーツも重要で、ハイエースの人気を押し上げています。ありがたいことだと思います」
■次期ハイエースはどうなる?
ハイエースが人気を高めた背景には、同じトヨタが用意する小型商用バン「タウンエースバン」の衰退もあるでしょう。
販売店では「今は軽商用バンの荷室が広がり、タウンエースバンに近付きました。そのためにタウンエースバンは需要を奪われています。またインドネシア製を輸入するため、コロナ禍の前から納期が長引きやすかったです」と述べています。
ずらりと並ぶハイエース
タウンエースバンの荷室長は2045mmですから、ハイエースの3000mmに比べて約1m短く、ハイゼットカーゴの1915mmに近いです。そうなると商用バンのニーズは「ハイエースか、軽商用バンか」に絞られそうです。このことは先に述べた販売台数にも表われています。
そしてハイエースが人気を得た背景には、高値で売却できる事情もあります。
中古車の買取店は以下のように説明しました。
「ハイエースは耐久性が優れているため、海外市場でも人気が高く、中古車を輸出するバイヤーも注目しています。乗用車では価格が付かないような低年式の走行距離が伸びた車両でも、ハイエースであれば流通価値が残っています」
要は、ハイエースはビジネスで長く使っても、資産としての価値が残るのです。複数の車両を使う企業がハイエースをそろえれば、万一の時に数台を売却して、運転資金に充当することも可能でしょう。
高い売却額は、通常の乗り替えも含めて、複数の車両を所有する企業にとって大きな付加価値になります。
なお今はハイエースの受注が停止しており、販売店では以下のように述べています。
「ハイエースの受注が停止した時は、フルモデルチェンジかと思いましたが、実際には安全装備などの法規対応を目的にした改良です。
受注はすでに3~4か月停止しており、2023年12月から2024年1月頃に受注を再開して、改良版が発売されるようです。
ハイエースがボンネットを装着した海外仕様に切り替わる噂もありますが、それはないでしょう。ボディが過剰に大きくなるからです」
ハイエースの販売総数の内、70%程度は全長4695mm×全幅を1695mmに抑えた4ナンバー車になるとのこと。
このサイズで3000mmの荷室長を確保したことが人気の秘訣で、荷物をタップリと積めて、ボディは4ナンバーサイズに収まり、最小回転半径も5mだから街中でも運転しやすいです。
そのハイエースにボンネットを加えてエンジンを収めると、全長が大幅に拡大されます。海外版のボンネットを備えたハイエースでは、荷室長が2910mmのタイプは、全長が5265mmに達するのです。
つまりボンネットのない4ナンバーサイズの国内仕様のハイエースに比べると、荷室長は90mm短く、全長は570mm長いです。
海外版は全幅もワイドですから、倉庫の中での荷物の積み降ろしなどにも不都合が生じる場合があります。そうなると日本の流通や運搬のインフラにとって、4ナンバーサイズのハイエースは不可欠です。
これからもハイエースは、ボディサイズやデザインは大きく変えず、しかしパワーユニットや安全性は着実に進化していくでしょう。
特に人手不足などによって日本の物流が危ぶまれる今日、進化するハイエースの果たす役割はきわめて大きいです。
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