超人気のスズキ「ジムニー」なぜ納車待ち解消されない? 増産したのにどんどん売れる!? 新型5ドア国内導入の目処は?
くるまのニュース / 2023年11月16日 17時10分
スズキ「ジムニー/ジムニーシエラ」の人気が続いており、納期遅れが目立ちます。一体なぜ多くのユーザーから支持されるのでしょうか。また、導入が期待される「ジムニー5ドア」はどうなるのでしょうか。
■ジムニーの納期はなぜ短縮されない?
新型コロナウイルスの感染拡大により、半導体やワイヤーハーネスなどの供給が滞り、クルマの納期が一斉に遅れました。ただしすべての納期遅延が、新型コロナウイルスの影響によるものではありません。車種によってはそれ以前から納期が遅れていました。
その典型が軽自動車のスズキ「ジムニー」と、小型車版の「ジムニーシエラ」です。
両車ともに2018年7月に発売されると早々に納期が1年以上となり、今でも同じ状態が続いています。
2018年の段階ではジムニーとジムニーシエラは生産規模が小さく、ジムニーが1年間に1万5000台(1か月当たり1250台)、ジムニーシエラは1年間に1200台(1か月当たり100台)でした。
ちなみにジムニーは、フルモデルチェンジの直前となる2017年でも、1か月平均で1124台を届け出していました。
2018年に行われたフルモデルチェンジは実に20年ぶりで、新型の登場を待っていたユーザーも多かったことを考えると、国内販売目標が1か月当たり1250台では納期遅延に陥って当然でしょう。
そこでスズキは生産規模を増やしました。ジムニーの2018年後半の届け出台数は、1か月に1700台から2000台と国内販売目標を少し上まわる程度でしたが、2019年には2500台を超えて国内販売目標の2倍以上です。
さらに2020年には、ジムニーは新型コロナウイルスの影響を受けながらも1か月平均3171台となり、2021年は3285台、2022年は3450台まで増えました。
先代ジムニーは特殊な軽自動車とされ、10年前の2013年の1か月平均届け出台数は1299台でしたが、現行型になって急増したのです。
現行ジムニーが人気を高めた理由は、大きく分けて2つあります。1つ目はデザインを含めた商品力の向上です。
外観は直線基調でシンプルに仕上げ、悪路向けのSUVらしさを濃厚に感じさせます。内装もブラックで統一されてデザインはシンプルですが、質感は高く、さらには衝突被害軽減ブレーキなどの装備も充実させました。
このように現行ジムニーは魅力を増して、売れ行きも増加したのです。
2つ目の理由は、SUVを取り巻く市場の変化です。今はSUVの人気が高く、新車として売られる小型/普通乗用車の30%以上を占めます。SUVはミニバンを抜いて、コンパクトカーと並ぶ人気のカテゴリに拡大しました。
ただし、昨今のSUVは、乗用車と共通のプラットフォームを使うシティ派がメイン。コンパクトなトヨタ「ヤリスクロス」からミドルサイズのトヨタ「ハリアー」など、デザインは都会的で、運転感覚も乗用車と変わらず、しかも価格が高く、似通った雰囲気のSUVが増えました。
この影響で、SUVユーザーの間で原点回帰の傾向が見られるようになりました。トヨタ「ランドクルーザー」や輸入車のジープ「ラングラー」など、後輪駆動をベースにした4WDを採用する悪路走破力の優れた伝統的なSUVが注目されています。
ジムニーもまさにこのタイプで、売れ行きが伸びています。ジムニーとジムニーシエラの長い納期も、原点回帰の根強い人気によるものだといえます。
■新型「ジムニ―5ドア」国内導入はどうなる?
ジムニーの人気と納期について、スズキの販売店は以下のようにいいます。
「ジムニーとジムニーシエラの納期は、今でもジムニーが1年から1年半、ジムニーシエラは2年近くを要することもあります。
メーカーは増産していますが、それに応じて受注台数も増える不思議な状態が続いています」
ジムニーの届け出台数は、先に述べた通り2018年の後半は1か月に1700台~2000台でしたが、2022年は2倍前後の3450台に増えています。それでも納期は短くならないのです。
それなら生産規模を大幅に増やす方法もあるでしょう。特にインドで発売されたジムニーシエラの5ドア仕様は、国内投入に期待しているユーザーも多いです。
後席ドアを備えた新型「ジムニー5ドア」
ジムニー5ドアをインドから輸入する方法もありますが、日本で生産すれば台数を大きく増やせます。
しかしメーカーには、国内の増産に踏み切れない事情もあります。メーカーや販売店の話を総合すると、2つの理由がありました。
1つ目の理由は、生産設備を増やして増産すると、その後も同等の生産台数を保たねばならないことです。人気が下がって生産台数も減ると、メーカーは過剰な生産設備を持つことになるため、なかなか増産に踏み切れません。
2つ目の理由はジムニーの燃費が悪いことです。今は二酸化炭素の排出抑制を目的に、企業別平均燃費規制が実施されています。各メーカーの全車種の燃費数値と販売台数に応じた平均燃費を算出して、それを一定の範囲内に収めねばなりません。
欧州では平均燃費規制値を達成できないと罰金を請求されます。国内では今のところ罰則はありませんが、努力目標とされているのです。
スズキは軽自動車とコンパクトカーが中心のメーカーですから、乗用車の燃費数値は全般的に優れていますが、ジムニーとジムニーシエラは例外的です。
例えばジムニー/ジムニーシエラの4速ATはWLTCモード燃費が14.3km/Lです。ベーシック軽コンパクト「アルト」の23.5km/L~27.7km/Lに比べると、2倍近い燃料を消費します。
燃料消費量の多いジムニーやジムニーシエラが数多く売られると、スズキの平均燃費値が悪化。スズキの販売店では「燃費規制とのバランスもあり、ジムニーの大量な生産と販売には踏み込めない事情もあるでしょう」と述べています。
ジムニーは、従来型に比べて国内需要が格段に増えたのに、燃費規制などによって大量に生産しにくい事情があります。これらの原因が相まって、納期が常に1年以上に延びているのです。
そしてジムニー5ドアは車両重量が3ドアを上まわり、燃費性能はさらに悪くなることが予想され、しかも国内に導入すれば間違いなくヒット商品になるはずです。そうすると納期も一層遅延することになり、そのため現状では国内発売は考えにくいと言わざるを得ません。
ジムニー5ドアへの望みがあるとすれば、燃費を向上させることが必要でしょう。ジムニーシエラのエンジンは、先代型は直列4気筒1.3リッター(M13A型)でしたが、現行型では設計の新しい1.5リッター(K15B型)を搭載しています。
フルモデルチェンジで間もなく新型になる「スイフト」は、さらに新しい1.2リッター直列3気筒(Z12E型)を採用します。このエンジンの排気量を拡大して、AT車も日本向けのCVT(無段変速AT)に切り替える工夫を施せば、ジムニー5ドアの国内投入が可能になるかもしれません。
軽自動車のジムニーの燃費も同様です。今は「R06A型」を搭載していますが、新型「スペーシア」のNAエンジン車などには、設計の新しい「R06D型」を採用。燃費性能が向上しており、ジムニーも燃費改善の余地があるでしょう。
※ ※ ※
日本のユーザーが求めているのは、威圧感のある大型のSUVではなく、ジムニーや5ドアボディを含めたジムニーシエラのような車種だと筆者(渡辺陽一郎)は思います。
ジムニーは国内市場に最適な商品で、新型ではファンも増えました。燃費規制などに対応して商品力を向上させ、ジムニー5ドアも加えて欲しいところです。
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