なんで教えてくれないの? 「給油の方法」「パッシング」… 教習所で習わないドライバー間の「暗黙のルール」 指導しない理由とは
くるまのニュース / 2023年11月25日 9時10分
公道を走行すると、教習所では習わない暗黙のルールがあります。なぜ、教習では教えてくれないのでしょうか。
■なんで教えてくれないの? ドライバー間の「暗黙のルール」
公道を走行するうえで、法規だけでなく運転の常識や知識、マナーなどがいくつもあります。しかし、こうした「暗黙のルール」は教習所では一切教えてくれません。
なぜ、一般ドライバーが当たり前のように行なっている常識やマナーを、教習所では教えてくれないのでしょうか。
その代表的なものが給油の方法です。教習所では乗る前の安全確認はマストでしたが、給油に関しては、給油口すら開けることはありませんでした。
特に最近はフルサービスのガソリンスタンドが減少する一方、セルフ式スタンドが増加しているなかで、どう給油すべきか戸惑ってあたふたした経験があるという人もいるかもしれません。
これについて、東京都内の自動車教習所で指導員を勤めていたI氏は、以下のように話します。
「(なぜ給油方法を教えないかというと)答えは簡単で、自動車免許を取得できるほどの知識とスキルがあれば誰でも給油できるからです。それにほかの人の給油方法を見ていれば、やりかたはすぐに覚えられるはずだからです」
しかし、給油口が左右どちらなのか、給油ホースとノズルの使いかたなど、もう少しレクチャーしてくれたほうがいいのではないでしょうか。
「そういった意味ではカリキュラムに含まれていないのは不親切とも言えますが、そもそも有人式(スタッフが常駐している)ガソリンスタンドしかなかった時代に教習内容ができているので、今の時代に合っていない部分はあるのかもしれません」(I氏)
教習所の言い分としては、給油機は操作方法も明確で、音声や図によってやり方を明示してくれる点があります。
給油ノズルも目一杯にぎれば、満タンになると自動ストップがかかるなど、操作がそれほど難しくないのも事実です。
またセルフ式であっても、スタンドのスタッフを呼ぶインターホンが設けられていることもあるため、教習所でわざわざ教えなくてもいいという判断なのでしょう。
では、ハザードの使いかたはどうでしょうか。合流時に後続車が譲ってくれた際に使う「サンキューハザード」など、路上に出てはじめて知った方も少なくないはずです。
「一応、教習所でも合流で道を譲ってもらったときは手を挙げる、2・3回ハザードを点滅させる方法は伝えたつもりです。
しかし、そもそもハザードは『非常点滅表示灯』であり、あくまで非常事態を周囲に知らせるための装備なのです。
逆にあまりに長いハザード点滅は、周囲に異常をアピールしている意味になりますし、交通違反とまではいかなくても後続車はびっくりするでしょう」
正しい交通ルールを教えるという点では、ドライバーの習慣よりも、ハザードの本来の使い方を教えることのほうが正しいのかもしれません。
また高速の合流で最近よく聞く「ファスナー合流」も習っていません。免許を取り立ての初心者でも、うまく合流できる方法を教えたほうがいいのではないでしょうか。
「この『ファスナー合流』は、高速道路の運営会社であるNEXCOが数年前から使い始めたワードで、ファスナーのように1台ごとにスムーズに合流しましょう、というスローガンのようなものです。
教習所では『加速車線で十分に加速し、ウインカーを出しながら本線の流れを乱さないようにスムーズに合流』と教えています。
ただ、必ずしも1台ごとに道を譲ってくれるドライバーばかりではないので、臨機応変に対応することも大切です」
あくまでNEXCOが推奨する方法ということであるため、まず教習ではドライバーの譲り合いをもとにした合流方法ではなく、安全かつ確実に合流できるような指導方法をとっているようです。
■「パッシング」「クラクション」 トラブルの元にもなる合図は?
初心者で難しいのがクラクションの使い方です。これについても教習所ではあまり教えてくれません。
街中では信号待ちなどで発進が遅いとすぐに鳴らされることもありますが、状況によっては周囲のクルマにかなりのプレッシャーをあたえ、イラッとさせる原因にもなりかねないものです。
「そもそもクラクションはハザードと同様で非常時や山岳路などで周囲に自車の存在を知らせるためのものですから、決して感情表現の装置ではないのです。
それが原因で『あおり運転』を誘発したり、道を塞ぐ、急ブレーキをかけるなどの危険行為を誘発する可能性もあります。
余程のことがない限り、クラクションは使わないほうがいいでしょう」
教習所ではまず基本を抑えるが、車社会への慣れも大切
さらに、初心者で難しいのがパッシングの使い方も挙げられます。よく右折時に道を譲ってくれるクルマがパッシングで教えてくれたりしますが、あれも教わっていません。
「これについても道路交通法では、適切なのか判断が難しいところです。しかも状況によっては道を譲ってくれたのではなく『先に行くぞ』という意味合いの場合もあります」
パッシングは状況によってその意味が異なり、多くの場合は対向車が譲ってくれる場合が多いのですが、一部では急いでいるから先に行かせてくれという強い意志を示す場合もあるようです。
しかし、教習中もしくは運転初心者がパッシングを使い、先行車を譲ったりする場面はあまりなく、こうした「ベテラン」のような技術を教えるよりも、確実な運転操作や道路交通法を教える時間に割き、運転経験を積むほうがいいのかもしれません。
パッシングも上手に使えば優しい運転になるのですが、ハイビーム状態が長すぎたり何度も行うと、こちらがあおり運転認定されてしまう可能性もあります。
このあたりは慣れの問題もあるとI氏は話しますが、手で合図したりなどほかの方法を使い、あまり過度に使わないほうが得策のようです。
※ ※ ※
このように、教習所ではドライバー間のマナーや暗黙の了解というよりも、さらに重要な基本的な運転技術や知識を教わる場所なのです。
もちろん、運転経験を積むことにより慣れていけば心理的にも余裕が生まれるので、ファスナー合流やサンキューハザード、パッシングの使い方などをマスターするのも良さそうです。
むしろ教習所で教わったにもかかわらず、多くのユーザーが実施できていない日常点検(特にタイヤ)や、乗り降り・発進時に周囲の歩行者や障害物がないかの確認を徹底したほうが安全かもしれません。
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