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なぜ教習所で「ポールを用いた縦列駐車」を教える? 公道には“ポール”ないのに… 路上では「あまり役立たない」教習が必要な理由とは

くるまのニュース / 2023年12月2日 17時10分

自動車教習所の技能教習で、縦列駐車を学ぶとき、ポールの位置を覚えるように教えられます。なぜ、公道ではそのような目印もないのに、ポールを使って教えているのでしょうか。

■なぜ役に立たない「ポールの縦列駐車」教える?

 自動車教習所の技能教習で、難しい項目として挙げられるのが縦列駐車です。これを学ぶとき、教習コース上に設けられたポールを目印にして、ステアリングを切るように教えられます。
 
 しかし、免許を取得し路上(公道)に出ると、ポールのような分かりやすい目印などないのが当たり前です。なぜそんな教え方をするのでしょうか。

 運転免許を取得するために、ほとんどの人が自動車教習所に通います。

 もちろん、公道に出て役に立つ知識や技術がほとんどなのですが、一部の教習では、「これは必要なのか」「意味はあるのか」と内容に疑問や不満を感じる部分も少しばかりあります。

 そのひとつが、公道には設置されていないポールを用いた縦列駐車です。実際には「Cピラーと◯本目のポールが重なったら、目一杯ステアリングを切って」というような教えかたをするケースも見受けられます。

 この教習について、かつて自動車教習所で指導員を務めていたI氏は以下のように話します。

「言い訳ではありませんが、教習所はあくまで路上で走行できる資格となる普通免許の取得を第一の目的にしています。

 限られた教習時間を有効に使うため、またできる限り最短ですべての教習生の皆さんに免許を取得していただくため、目安を事前に教えているんです」

 前提として、教習所で合格=即、路上でもスイスイというわけではなく、あくまで教習所で学ぶのは基本的な運転技能のみとなっています。

 そうしたなかで、日々いろいろな教習生を相手にする教習所としては、個人の能力や体格差、性別などを考慮した細かいカリキュラムを構築するのはほぼ不可能です。

 必然的に、“誰でも試験に合格できる”ような教え方となり、縦列駐車も簡単にできるようにポールを設置した教習となっています。

「実際の路上は状況がすべて違うためご自身で対応してもらうしかないのですが、第二段階を経て仮免許を取得、路上教習へ繋ぐための試験に合格することを念頭にした教えかたになっているのです。

 そしてあのポール(を用いた教習)も、実際の障害物を想定したもので、運転席から見える位置に配置したものなのです。実際にコンクリートブロックなどを設置したら、教習車が傷だらけになってしまいますから」

 このように、教習所は最大公約数的に基本的な運転技術を覚えてもらうための機関となったわけなのです。限られた技能教習時間のなかでは、なかなか個別指導は難しいとI氏は言います。

■ポール以外にも「公道では遭遇しない」教習項目がある

 同様に、教習所に設けられている狭いS字カーブやクランクも、実際の路上ではまずお目にかかることはありません。

 これらの教習は、どのように役に立つものなのでしょうか。

「ここで学んだことを、実際の路上でもすり抜けや狭い路地での取り回しなどで応用して欲しいと考えて作られているんです。

 決して教習生に嫌がらせしているわけではないのはご理解いただきたいですね」

教習所は基礎を学びつつ、応用力も鍛える教習所は基礎を学びつつ、応用力も鍛える

 ポール同様に、公道にないS字やクランクが設置されているのも、応用力として狭い道での車両感覚やステアリングの操作方法といった運転技術を身につけてもらうためなのだそうです。

 そしてこの応用力を身につける教習項目がもうひとつあります。それが所内で行う「切り返し・方向転換」です。

 前進と後進にステアリング操作を組み合わせることでバック駐車の基礎にもなりますし、実際の路上でもUターンの仕方にバリエーションが増えることになるといいます。

 特に日本では、狭い商業施設の駐車場でもバック駐車が多いこともあり、何十年も必須とされている技能教習になっているのだそうです。

 最近はバックカメラが装着されるクルマが増えていますが、後進は死角も多いですし、バックではステアリングがクルマの動きと相反するのを覚えるのは慣れが必要です。

 こうした経験の積み重ねがもととなり、公道に出てさまざまな場面に遭遇した際に応用力として活きてくるのです。

※ ※ ※

 必ずしも教習所で習う項目が、すべて公道で活きてくるというわけではなく、「指定時間で最短で免許を取得できる」ようなカリキュラムになっているため、内容によっては役に立たなかった、と感じることもあるかもしれません。

 しかし、そこで学んだ基本的な技能が、公道に出た際に何事もなくスムーズに走れることにつながっているのを、改めて実感してみるといいかもしれません。

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