“軽”全盛の時代に「コンパクトカー」は必要? 安全性? 燃費? 実はめちゃ“メリット”多かった? 押され気味の小型車をあえて選ぶ理由とは
くるまのニュース / 2024年1月11日 15時40分
新車のうち軽自動車が4割を占めるほど「軽全盛の時代」と言えますが、そのなかで今、コンパクトカーを選ぶ理由は何があるのでしょうか。
■「軽があればコンパクトカーは要らない」のか?
軽自動車が売れています。2022年の国内新車販売台数約345万台のうち、軽自動車は約122万台です。約36%を軽自動車が占めています。
また、過去10年のうち5回にわたって、ホンダの軽自動車「N-BOX」が国内販売で登録車を含む年度販売台数ナンバー1を記録しています。過去5年に至っては4回が「N-BOX」でした。それだけ軽自動車が売れているのです。
そうとなると、存在感が危ぶまれるのが、コンパクトカーです。「軽自動車があれば、コンパクトカーはいらないんじゃないの?」という危惧です。
日本で最も売れている軽自動車のホンダ「N-BOX」
実際、軽自動車の魅力は年々高まっています。何度かの規格変更を経て車体寸法は大きくなり、また、箱型ボディが流行したこともあり、室内空間はむしろ軽自動車の方が広かったりもします。
新車の価格帯も、軽自動車が100万~250万円、コンパクトカーで150~300万円と、一部が重なります。
それでいて軽自動車は、年間の維持費に大きく響く自動車税(種別割)が1万800円しかかかりません。コンパクトカーは排気量次第ですが、1~1.5リッターなら3万500円で、年間2万円ほども差が生じるのです。
また、軽自動車のタイヤやエンジンは小さいため、タイヤ交換やブレーキパッド交換、エンジン・オイル交換の費用も安く上がります。この維持費の安さが、軽自動車最大の魅力といえるでしょう。
では、コンパクトカーのメリットは何でしょうか。
まず挙げられるのが、乗車定員です。軽はどんなに車内が広くても、最大で4人。一方、コンパクトカーは5人まで乗れます。
また、1.5リッターエンジンのトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」は、3列で最大7人までOK。家族が多いのに複数台のクルマを所有したくないという人にとって、コンパクトカーは、ごく当然の選択となります。
また、コンパクトカーは軽よりも車体が大きいため、衝突した時の衝撃を逃がす構造が作りやすく、補強材もより多く使えます。軽の安全性は確かに高まってはいますが、安全性を第三者が評価するJ-NCAP(自動車アセスメント)の近年の結果を見ても、軽は総合評価が70~90%に対して、コンパクトカーは80~90%と一歩勝っています。
このため安全性という点では、コンパクトカーが勝ります。万が一を考えて、軽ではなくコンパクトカーを選ぶという人もいるはずです。
■まだある「コンパクトカー」を選ぶ理由
また、コンパクトカーは、エンジン排気量が軽に比べて大きいため、パワーの余裕も十分。高速道路や山道、坂道では、やはり軽は物足りないと感じる人がいるはず。
さらにコンパクトカーは、日本だけでなく、速度域の高い欧州地域でも販売される車種もあり、そうした車種は大抵、優れた操安性能を備えています。一方、軽は背の高い箱型ボディが流行したため、多くのクルマが重心の高い、走りに向かないフォルムをしています。
マイナーチェンジしたホンダ新型「フィット」(画像はフィットRS)
そして走行性能に大きな影響を与えるタイヤのサイズが異なります。軽は13~14インチが主流。「N-BOX」でいえば155/65R14インチが中心です。一方、コンパクトカーは「フィット」で185/60R15です。
「N-BOX」の155という数字は、タイヤの幅が155mmであることを意味します。それに対して「フィット」は185mm。タイヤ幅が1.2倍も違います。タイヤの性能差という土台の部分で、コンパクトカーは軽よりも有利なのです。
さらにコンパクトカーは、軽よりも選択肢が広いというのも魅力です。先に挙げた3列シートのコンパクトなミニバンもありますし、ホンダ「WR-V」のようなコンパクトSUVもあります。フルハイブリッドもコンパクトカーならではのもの。そして輸入車を選べるのもコンパクトカーの利点のひとつでしょう。
そして最後のコンパクトカー選択の理由は、軽の黄色いナンバーへの忌避でしょう。存在を強く主張する黄色いナンバーよりも、白ナンバーの方がボディカラーとの調和も上。ですから、東京オリンピックやラグビーワールドカップなどを契機に導入された図柄入りや白地のナンバーは高い人気を集めました。
冷静に考えれば、コンパクトカーを選ぶ理由は、意外にも多いことが分かります。確かに、維持費というコストだけを考えれば軽を選ぶのが合理的でしょう。しかし、クルマは経済性だけで選ばれるものではありません。
クルマは、人それぞれ異なる生活を支える大きな柱になります。さらには個人のパーソナリティを示す存在ともなっています。当然、ユーザー側のニーズは非常に多彩です。それを経済性というひとつの物差しで測ることはできません。
売れる数が少なくても、それを求める人は確実に存在するのです。だからこそ自動車メーカーは、数が少なくとも、スポーツカーを作り続けています。
ユーザーも、「安い」だけのクルマしか提示されなければ、クルマを買おうという気にもならないはず。それこそクルマ離れになります。
魅力的なコンパクトカーの存在することは、ユーザー側からすれば多彩な選択肢が存在することを意味します。自由で豊かな生活のために、コンパクトカーは、なくてはならない存在といえるでしょう。
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