トヨタ「カローラ」なぜ“旧型モデル”を継続販売する? しかも意外と売れている!? 「5ナンバー車」が求められる現状とは
くるまのニュース / 2024年1月7日 14時10分
全7モデルをラインナップするトヨタ「カローラ」ですが、このうちの2モデルは先代の「カローラアクシオ」と「カローラフィールダー」です。いずれも5ナンバーのコンパクトなモデルですが、なぜ旧型のモデルを販売し続けているのでしょうか。
■なぜ継続生産型も含めて「カローラ」は7モデルもあるのか?
トヨタは、新型「クラウン」に従来のセダンのみならず、SUVの「クロスオーバー/スポーツ/エステート」もラインナップし、4つのモデルを「クラウンシリーズ」として展開しています。
これを上まわるのが「カローラシリーズ」です。2018年以降に投入された設計が比較的新しい3ナンバー車には、「カローラ」(セダン)、「カローラツーリング」(ワゴン)、「カローラスポーツ(ハッチバック)、「カローラクロス」(SUV)、「GRカローラ」(スポーツハッチ)があります。
さらに2012年に発売された継続生産車として、5ナンバーサイズに収まるセダンの「カローラアクシオ」とワゴンの「カローラフィールダー」も用意。合計7タイプとなり、ここまで豊富にそろえる車種はカローラシリーズだけです。
2023年1月から11月におけるカローラシリーズ全体の1か月平均登録台数は、約1万2900台でした。
各モデルの販売比率は、カローラクロスが44%、カローラツーリングが26%、カローラセダンが9%、カローラフィールダーが8%、カローラスポーツが7%、カローラアクシオが5%、GRカローラが1%です。SUVのカローラクロスと3ナンバーワゴンのカローラツーリングだけで、カローラシリーズ全体の70%を占めます。
先代モデルのカローラアクシオ/フィールダーで13%を占めているのですが、これは決して少なくない数字です。
すでに10年以上が経過した旧型のカローラを造り続ける理由は何でしょうか。
2019年に3ナンバー車のカローラツーリングやセダンが発売された時、開発者は以下のようにコメントしました。
「カローラには、さまざまなニーズがあります。新型は走行安定性や乗り心地などの質感を高めるため、GA-Cプラットフォームを採用しました。
日本の使用環境を考えて全幅を狭く抑えましたが、それでも1745mmが限界です。お客さまから要望の多い5ナンバーサイズには収まりません。
そこで5ナンバー車になる従来型のカローラアクシオとフィールダーも、新型と併せて継続販売することにしました」
この時点で、カローラアクシオとフィールダーの併売期間を尋ねると「おそらく1年半から2年後には終了するでしょう」と返答されました。これは2019年のことですから、すでに4年間が経過しています。
カローラアクシオ/フィールダーの人気がそこまで高く、長続きする理由は何でしょうか。
この点は直近で販売店に聞いてみました。
「カローラアクシオとフィールダーは、受注の終了が近付いています。それでも長年にわたって生産と販売を続けた理由は、運転のしやすい5ナンバーサイズのボディが高い人気を得たからです。
また設計が古い代わりに、装備がシンプルで、ロングセラーということもあって信頼性も高いです。
今のクルマは昔に比べて故障が減りましたが、そのなかでもカローラアクシオとカローラフィールダーは特にトラブルが少ないです」
カローラアクシオ/フィールダーは、どのような人が使っているのでしょうか。
「運転のしやすさと価格の安さにより、仕事で使う法人のお客さまが中心です。
また今は5ナンバーサイズのセダンやワゴンが減ったため、運転のしやすさを重視する一般のお客さまも購入しています」(トヨタの販売店スタッフ)
カローラアクシオとカローラフィールダーでは、どちらの人気が高いのでしょうか。
「現時点ではカローラフィールダーです。5ナンバー車で運転しやすく、ワゴンだから荷物も積みやすいので、法人のお客さまはバンとして使っています」
トヨタにはバンの「プロボックス」もありますが、商用車の規格に基づいて、荷室が広い代わりに後席の足元空間は狭いです。
その点でカローラフィールダーは、後席が広く4名で快適に乗車できます。後席を格納すると広い荷室も得られます。
カローラフィールダーは装備も充実しており、プロボックスに用意されないサイド&カーテンエアバッグやプッシュボタンスタートシステムなどが全車に標準装着されています。
■やっぱり日本では「5ナンバー車」が人気?
カローラアクシオとフィールダーは、5ナンバー車が減った今では貴重な存在です。
根強い需要に支えられ、販売店では「カローラフィールダーは今後も改良をおこなって販売を続けて欲しいです。実際にそうなる可能性も高いです」と述べています。
その一方で、3ナンバーサイズのカローラでは、前述の通りSUVのカローラクロスとワゴンのカローラツーリングを合計するとシリーズ全体の70%を占めており、5ドアハッチバックのスポーツとセダンは少数派です。
この内、セダンはカテゴリー全体の人気が下がり、ほかのセダンでも販売の好調な車種はほとんどありません。
5ナンバーサイズのワゴン車「カローラフィールダー」
セダンのなかでも、登録台数がもっとも多いのがカローラセダンです。カローラシリーズ全体に占めるセダンの販売比率は9%と少ないですが、それでも1か月平均で1100台から1200台は登録され、セダンのカテゴリーではベストセラーです。
カローラスポーツのような3ナンバー車のミドルサイズハッチバックも、今では売れ行きを減らしました。
外観が似ている5ナンバーサイズのコンパクトカーが豊富に用意され、運転しやすくて価格も割安になるからです。
しかもコンパクトカーは、ボディが小さいのに車内の広さはミドルサイズハッチバックと比べて大差ありません。
走行性能や乗り心地はミドルサイズハッチバックが優れていますが、多くのユーザーは運転がしやすく実用的で価格の割安なコンパクトカーを選びます。
特にトヨタは、コンパクトカーの「ヤリス」と「アクア」を割安な価格で設定して販売も好調です。この2車種と比較されると、カローラスポーツは不利で売れ行きも低迷しています。
日本はやはり「5ナンバー車王国」なのでしょう。5ナンバーサイズのコンパクトカーが好調で、カローラスポーツのような3ナンバーサイズのハッチバックは低調です。
3ナンバーサイズのカローラセダンも売れず、5ナンバー車のカローラアクシオ/フィールダーが長続きしています。
日本車では長い商品開発の実績によって5ナンバー車の商品力が優れ、今でも日本の道路環境や平均所得との親和性が高いです。
ヤリスなどと同じGA-Bプラットフォームを使って、5ナンバーサイズに収まる安全性の優れた新型カローラアクシオ/フィールダーを開発して欲しいです。
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