デビュー7年でも販売好調! マツダの「定番SUV」なぜ人気? 「CX-5」が最新「CX-60」より売れてるワケとは
くるまのニュース / 2024年1月11日 10時10分
登場から7年を迎えるマツダ「CX-5」は、設計が新しい「CX-60」よりも好調に売れています。CX-5が定番の人気車となったのは、なぜなのでしょうか。
■ちょうど良いサイズがCX-5の魅力
今のマツダは「魂動デザイン」と「スカイアクティブ技術」により、カッコ良くて運転が楽しいクルマ造りを大切にしています。
その象徴がスポーツカーの「ロードスター」ですが、最近では2022年に登場したSUVの「CX-60」も注目されます。
CX-60は新開発された後輪駆動のプラットフォームを使っています。そのためにエンジンは縦向きに搭載され、同じく新開発された3.3リッター直列6気筒クリーンディーゼルターボも用意しました。
ところが登録台数を見ると、2023年1月~11月に国内で最も多く登録されたマツダ車は、前輪駆動のプラットフォームを採用するSUVの「CX-5」でした。
1か月平均登録台数は、CX-5が約2180台で、CX-60は約2110台ですからマツダ車では僅差で2位です。3位はコンパクトカーの「マツダ2」で約1700台でした。
特に直近の2023年9月~11月は、CX-60の毎月の登録台数は1000台以下です。その点でCX-5は1400台~2000台に達しており、好調に売られています。
CX-60が発売されたのは前述の2022年ですが、CX-5は2017年です。登場から間もなく7年を迎える設計の古いCX-5が、登録台数でCX-60を上まわる理由は何でしょうか。
まず考えられるのは納期です。CX-5の納期がCX-60よりも短ければ、納車が迅速に進んで登録台数も増えるでしょう。
マツダの販売店に聞いてみると、「今は以前に比べて納期が短く、CX-5、CX-60ともに2~3か月で納車できます」と返答されました。
納期の違いによってCX-5の登録台数が多いわけではないようです。
それなら売れ行きに差が生じた理由は何なのか、改めて販売店に尋ねると、以下のように返答されました。
「CX-5は先代型も好調に売られたので、現行型に乗り替えるお客さまも多いです。上級移行される人はCX-60を選びますが、CX-5のサイズがちょうど良いと気に入っているお客さまも多いです。CX-5なら、マンションなどの駐車場も使いやすいからです」
確かにCX-5のボディサイズは注目されます。全長は4575mmで、全幅は1845mmです。全幅は日本での使いやすさを考えると1800mm以内に抑えたいですが、今のSUVは海外市場を重視して開発されるため、大半が1800mmを超えます。1850mm以内に収まれば、今はワイドとはいえません。
その点でCX-60は、全長は4740mm、全幅は1890mmに広がります。CX-5よりも全幅が45mm広いのですが、駐車場の使い勝手では明暗を分けることもあります。
販売店のスタッフも、CX-60はボディが大きいと指摘されることがあると述べています。
そしてCX-60の全長はCX-5に比べて165mm長いですが、後輪駆動の採用に伴って、ボンネットなどボディの前側が長く伸びています。そのために後席の足元空間を含めて、前後方向の広さは両車とも同程度です。
つまりCX-5は、ボディサイズの割に車内が広く、運転のしやすさと優れた快適性を両立させて息の長い人気を得ました。
■ほかのマツダSUVよりもCX-5はお買い得!?
ほかの理由はどうでしょうか。
価格が割安なこともCX-5の特徴です。CX-60も後輪駆動の上級SUVの中では求めやすい部類ですが、CX-5はさらに安く、価格はコンパクトSUVの「CX-30」に近いです。
CX-5のエンジンは、2リッターおよび2.5リッターのガソリン、2.2リッターのクリーンディーゼルターボの3つを設定。
買い得グレードは「ブラックトーンエディション」で、クルージング&トラフィックサポート、10.25インチセンターディスプレイ、運転席の電動調節機能、前席シートヒーターなどを標準装着しています。
特別仕様車「CX-5 レトロスポーツエディション」
2WDの価格は、2リッターガソリンエンジンを搭載する「20Sブラックトーンエディション」が323万9500円、2.2リッタークリーンディーゼルターボの「XDブラックトーンエディション」は355万8500円です。
コンパクトSUVのCX-30にもブラックトーンエディションが用意されます。運転席の電動調節機能や前席シートヒーターなどのセットオプション(6万6000円)を加えてCX-5と条件を合わせると、価格は2リッターガソリンエンジンのブラックトーンエディションが305万6900円となり、CX-5の価格はCX-30に比べて18万2600円の上乗せに収まります。
また、CX-30の1.8リッタークリーンディーゼルターボは326万5900円(ブラックトーンエディション)で、CX-5のディーゼルエンジンのほうが29万2600円高いのですが、エンジン排気量が異なり、CX-5では2.2リッターに拡大されます。
最高出力は1.5倍、最大トルクは1.7倍に増強され、CX-5はミドルサイズのボディを備える割に価格を安く抑えているといえるでしょう。
CX-60はどうでしょうか。CX-5ブラックトーンエディションに相当する仕様は、「Sパッケージ」にクルージングトラフィックサポートなどを含んだセットオプション(19万2500円)、運転席の電動調節機能などを含んだセットオプション(8万2500円)を加えた仕様です。
これらの装備を加えた合計価格は、CX-60に2.5リッターガソリンエンジンを搭載した「25S・S」パッケージの場合は349万8000円です。
CX-5のブラックトーンエディションは323万9500円ですから、価格差は25万8500円でとなり、CX-60は後輪駆動を採用してガソリンエンジン排気量も2.5リッターとしながら、価格差は約26万円と意外に割安に感じられるかもしれません。
しかしCX-60の2.5リッターガソリン車は、売れ筋ではありません。人気が高いのは3.3リッター直列6気筒クリーンディーゼルターボです。
そこで、同エンジンを搭載する「CX-60 XD・Sパッケージ」に安全装備のセットオプション(14万8500円)を加えてCX-5ブラックトーンエディションと条件を合わせると、価格は396万円に達し、2.2リッタークリーンディーゼルターボを搭載したCX-5(355万8500円)に比べると約40万円高くなるのです。
つまりCX-60の価格は、2.5リッターガソリンエンジン車であれば後輪駆動の上級プラットフォームを採用しながら割安ですが、売れ筋は直列6気筒ディーゼルです。そのために、結果的に直列4気筒ディーゼルを搭載するCX-5の買い得度が際立つというわけです。
※ ※ ※
CX-5は、快適で実用的な室内空間を確保しながら、ボディは運転のしにくさを感じさせない大きさです。価格はガソリンエンジン車、人気のディーゼルエンジン車とも割安にしました。
さまざまな要素をバランス良く造り込み、なおかつカッコ良くて運転の楽しいマツダ車らしさも明確に表現したことで、息の長い人気車になっています。
「優れた機能」「ブランドイメージの明確な表現」「割安な価格」は、好調に売れるクルマの3大条件です。CX-5はこれを満たしたことで、成功を収めているのです。
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