“まるでカフェ”な次世代の「路線バス」もうすぐ登場? 超デカイ進化系「SRT」! 名古屋で進む“新たな移動手段”の狙いとは
くるまのニュース / 2024年1月13日 22時10分
名古屋市が、新たな路面公共交通システム「SRT」の導入を進めています。市の住宅都市局にその詳細を聞きました。
■「SRT」を整備する狙いは
名古屋市で現在、ある画期的なバス路線の計画が進んでいます。それは、路面公共交通システムの「SRT」です。名古屋市中心部で2025年度の運行開始を目指しているそうですが、どのような計画なのでしょうか。市に話を聞きました。
市によると、SRTは「Smart Roadway Transit」の略です。
「技術の先進性による快適な乗り心地やスムーズな乗降、洗練されたデザインなどのスマート(Smart)さを備え、路面(Roadway)を走ることでまちの回遊性や賑わいを生み出す、今までにない新しい移動手段(Transit)」を表す概念といいます。まず、名古屋駅と栄地区を結ぶ路線を整備する計画です。
このSRTの背景には、2027年以降に開業するリニア中央新幹線の存在があります。
リニアの開業によって、名古屋~東京(品川)間は最速40分まで短縮され、それによる都市圏同士の拡大が見込まれています。
さらに、近年ではアジアを中心とした外国人旅行者も増加。名古屋圏への来訪者も増える見込みです。
また、名古屋駅周辺や栄地区は開発需要も高まっています。さらに、市の観光シンボルである名古屋城(名古屋市中区)では天守閣の木造復元が進むなど、観光スポットの整備も進んでいます。
SRTは、そのような名古屋駅周辺から栄地区や市内のスポットを接続しつつ、その回遊性を高めるのが目的です。
もちろん、名古屋駅と栄地区をつなぐ交通手段は、現時点で存在します。しかし、その主要な手段である地下鉄東山線などは混雑傾向にある上、名古屋駅から名古屋城や大須(名古屋市中区)へ向かう場合、乗り換えが必要です。
実際、愛知県在住の筆者(鈴木伊玖馬)の肌感覚としても、名古屋市を通る地下鉄各線はすでに通勤客などでかなり混んでいる印象があります。また、地下駅の通路もさほど広くないため、乗り換えにも苦労するイメージを持っています。そのため、地図上では近く感じる名古屋駅と栄地区ですが、実際に移動してみると思った以上に時間と手間がかかってしまいます。
それだけに、この新路線には個人的にかなり期待を寄せています。今回はそのSRTの概要や特徴について、市に話を聞きました。
■すでに「テラス型バス停」でテスト
名古屋市住宅都市局によると、SRTは「車両、走行空間、乗降・待合空間や運行サービスが相互に連携した新たな都市のシステムとして構想を策定」されました。前述したように、賑いの創出と回遊性の向上による都心部の活性を狙いとしています。
そのためSRTはただの新路線にとどまらず、名古屋を訪れる人に新しい移動価値を提供し、また魅了する移動手段になることを目指しています。
例えば採用予定の車両は、シンボル性の高いデザインのものを導入する予定です。もちろん車内は、ユニバーサルデザインなども考慮されます。
また、車両だけでなく、走行空間や乗降・待合空間、運行サービスなどもコンセプトに合わせてデザインされる予定です。すでに2023年度には、運行のルートとなる広小路通で約2か月半の間テラス型バス停を暫定整備し、既存バスの正着性や乗降のしやすさなどをテストしています。
2023年に実施されたテラス型バス停「なごまちテラス」の社会実験(画像:名古屋市)
このように、SRTは既存の市バスとは異なり、都心部の活性化に寄与するような交通システムになることを目指しています。
また、次世代の交通システムとして思い出されるのが、栃木県で2023年8月に開業したLRT(Light Rail Transit、次世代型路面電車システム)の宇都宮ライトレール(通称「ライトライン」)です。日本国内の路面電車の路線としては、富山県の万葉線以来75年ぶりの新規開業ということもあり、話題となりました。
名古屋市でも、計画段階でLRTやBRT(Bus Rapid Transit、バス高速輸送システム)も検討したそうですが、軌道の設置は道路インフラや自動車交通に与える影響が大きかった点もあり、最終的にはSRT(Smart Roadway Transit)方式が採用されました。
※ ※ ※
住宅都市局は、SRTについて「昨今のデジタル技術を活用した運行サービスなどを積極的に取り入れ、移動しながら名古屋都心のまちを楽しんでもらう、新しい都市のシステムを目指していきたいと考えています」と述べています。
ただの公共交通機関にとどまらない魅力を持たせようとするSRT。すでに提案されている車両デザインは、車体側面の大半がガラス張りになっているなど、非常に未来的なエクステリアをしています。また、デジタル案内板での情報提供なども計画しており、魅力・利便性ともに優れた交通システムになりそうです。
2025年の名古屋がもっと魅力的なまちになるのを、筆者としても祈っております。
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