トヨタで”一番売れてる”「コンパクトミニバン」はなぜ人気? デビュー2年目も「シエンタ」絶好調の理由とは
くるまのニュース / 2024年4月1日 10時10分
トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」の販売が好調です。安定した売れ行きを維持する「人気の理由」について検証します。
■イマドキの「人気モデルの条件」をすべて満たす「シエンタ」のスゴさ
トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」が売れまくっています。2022年夏にモデルチェンジして以降、月販約1万台をコンスタントにマークする売れ行きで、2023年には19万4364台のトヨタ「ヤリス」と15万4870台の「カローラ」に次ぐ13万2332台を販売し、4位の10万2508台の日産「ノート」を大きく引き離して堂々の3位となりました。
そんなシエンンタ人気のヒケツについて、再検証してみました。
いまクルマの売れ行きを左右するのは、「価格」と「デザイン」と「サイズ」にかかっていると筆者(モータージャーナリスト 岡本 幸一郎)は思いますが、その点でいうとシエンタはどれも「大丈夫!」です。
しかも乗り心地も走りもよくて燃費もいい。欠点らしい欠点も見当たりません。小さくても、車内は広々としています。
乗り込むときに印象的なのは、フロアが低いことです。同じトヨタの「ヴォクシー/ノア」など、一般的なMクラス以上のミニバンとはそこがぜんぜん違って、サイドシルよりもずっと低い位置にフロアがあるので、より乗り降りしやすく、車内が広く感じられます。
乗り込んでシートに座ると、適当に高めの目線により見晴らしが良いんです。
ダッシュボードが低くフードの先端が高いので見切りが良くて車両感覚もつかみやすく、すべてのガラスウインドウが切り立っているから、狭さを感じることもありません。
車内は色使いがフレンドリーで、ソファのような生地のシートや、目に入りやすい場所にファブリックが張られていたりと、雰囲気づくりも巧いなと感じます。
そのうえ、本当に機能的に設計されていて感心させられます。
運転席と助手席が仕切られていないので開放的で、左右にも前後にもウォークスルーできるほか、収納スペースがこれでもかというほど各部に用意されています。
ドリンクホルダーやフックがいたるところに設けられていて、運転席と助手席のドアパネルには1リットルのペットボトルが入るスペースもあります。
取り回しのよい小さなボディサイズながら、2列目は広々としていて、いざとなればさらに収納式の3列目シートが床下からひょっこり出現します。
「どうせオマケみたいなシートでしょ」というのは間違いで、乗り込んでしまえば意外とちゃんと座れる広さが確保されていることに驚きます。
ふだんは夫婦と子供で乗って、たまにおじいちゃんとおばあちゃんを乗せてお出かけするような、一般的なヤングファミリーの使い方にもってこいなのです。
■狭い街中やショッピングモールの駐車場でもラクチン!
このサイズ感も、もちろんシエンタの強みです。
筆者が住んでいる東京都23区の郊外エリアでは、裏道に一歩入ると昔ながらの狭い路地がたくさんあります。
そんな場所でも、シエンタなら大きさを気にすることなく走れます。
またショッピングセンターの狭い駐車場で、Mクラス以上のミニバンだと何度も切り返さないと入れないようなスペースでも、シエンタなら一発で収めることができます。
トヨタ 3代目(新型)「シエンタ」(3列シート・5人乗り仕様)
先進運転支援装備も充実していて、歩行者や自転車を検知する性能も高く、カメラが周囲をよく見てくれていて、もし人がいたら適宜警報を発してくれるので、より安心して走れます。
メーカーオプションのカーナビなどインフォテイメント系も画面が大きくて見やすく、このクラスでこれ以上はないくらい機能が充実しています。USB端子もいたるところにあります。
小柄でも、装備はもうぜんぜん上級機種に見劣りすることはありません。まさにいたれりつくせりな感じです。
走りの完成度が高くて、本当に乗りやすくて快適に走れるのも高ポイントです。
シエンタのハイブリッドはモーターが上手く機能していて、とても車速をコントロールしやすく、市街地はもちろん、狭い道をちょっと加速して減速するのを繰り返すような乗り方も大得意なのです。
それほどエコランを意識しなくても、燃費は平気で20km/Lを超えてくるあたりも、さすがトヨタのハイブリッド車というほかありません。
こういうかわいらしいカタチのクルマなので、もたついたりぐらついたりするかと思いきや、そんなこともありません。
ドライブフィールにぜんぜんミニバンっぽさはなく、コンパクトカーの延長上の感覚で走れるので、運転がおっくうになりません。
■秀逸なデザインは「シエンタ」最大の魅力
そしてシエンタは、なによりデザインがイイ。シエンタが受けている最大の要因だと思います。
ガンガン使い倒せそうな道具感と、パイクカー的な要素を兼ね備えたデザインは、見た目にも印象的でありながら、かわいいけれどかわいすぎない絶妙なデザインだと思います。
かわいいけどかわいすぎない! 「シエンタ」のデザインはそんな絶妙なアンバイが好ましいのです
そう考えると、過去2世代のシエンタはもう少し個性(クセ)の強いデザインでした。
もちろんあれがいいという人も大勢いた半面、最初から眼中に入らないという人も少なくなかったはず。
その点、現行型は老若男女とわず誰でも普通に選べるようになりました。筆者のような昭和世代のオジサンだって、気恥ずかしい思いをすることなく乗れます。
最後に価格について触れておきます。
車両価格(消費税込み)が195万円から310万8000円ということで、乗り出し価格が200万円台半ばから後半になると、当初はコンパクトミニバンとしては高い印象を受けたものです。
しかし最近では、軽スーパーハイトワゴンでもそれぐらいかかるケースは珍しくありません。
むしろシエンタの高いバリューに対してこの価格は、良心的に感じられるようになってきました。
クルマ自体の質も高く、ぜんぜん安っぽい感じがしません。
※ ※ ※
とっつきやすくてそつがなく、なんらストレスを感じることなく便利に使える万能性と、絶妙なキャラクターの持ち主であるところが、シエンタの人気のヒケツだと思います。
そのことをあらためて確認することができました。
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