バスの乗客が転んだら誰の責任? 現実は「運転士&会社のせい」… 危険を避けるためでもなぜ「バス側」が悪い? 運転士“なり手不足”原因のひとつか
くるまのニュース / 2024年4月15日 11時10分
バスが急停車し車内で転倒事故が発生した場合、誰に責任があるのでしょうか。
■乗客がつかまっていなくても「運転士のせい」?
バスの発進時や停止時に乗客が転倒してケガを負った場合、誰の責任になるのでしょうか。
バス運転中、子どもや自転車が飛び出してきたり、ほかのクルマに横から割り込まれたりすると、急ブレーキを踏むことになります。
それにより、車内が大きく揺れ、乗客がつまずくこともあります。少し身体が揺さぶられる程度なら問題ないのですが、乗客が不注意により手すりにつかまっていなかったり座席を立つ途中だったりすると、バス車内で転倒してしまうことも少なくありません。
国土交通省「交通事故統計及び事故事例の分析に基づき実施すべき死亡・重傷事故の低減対策のポイント」の調査によると、バス車内での転倒による重大な事故は年間28件発生しており、とりわけ75~84歳の女性がケガをすることが多いようです。
さらに、バスの車内転倒は急停止時だけではなく、発進時や等速(一定の速度で走行中)時にも起こっています。
こういったバス車内での転倒事故でケガをした場合、基本的にバス運転士やバス会社に責任が問われることが多いとされています。
そのため、仮に急停止時や急発進時にバス車内で転倒した場合、乗客はバス運転士やバス会社にケガの治療費を請求するケースがほとんどです。
とはいえ、車内アナウンスでは、つり革や手すりにつかまることや、バス停での停車時はバスが停まるまで席を立たないことなど、安全についての注意喚起がおこなわれています。
その安全注意喚起に従わず、バス車内で発生した事故もバス運転士の責任となってしまうのでしょうか。
このことについて、国土交通省 物流・自動車局 安全対策課の担当者は以下のように話します。
「バス車内事故の問題は、道路交通法と道路運送法が関係しています。
そもそも、交通事故には行政上の責任や刑法上の責任などがあります。基本的にバス車内の事故では、乗客が行政上の責任を負うことはありません。そのため、道路交通法上、責任がバス運転士に課される形になりやすくなります。
乗客に責任が発生することはほとんどありません。高い確率でバス運転士の責任になると思われます」
ただし、状況によってはバス運転士だけが責任を負うことにはならないケースもあります。前出の担当者は、次のように話します。
「ほかの周囲を走っていたクルマがバスの前に割り込んできて、急ブレーキをかけて乗客が倒れたケースといった事例ではバス運転士に責任が課されない可能性があります。
このケースでは、バス前方に割り込んできたクルマの運転士の責任になることが多くなります」
■バス運転士「なり手不足」とする見方も
このように、バス車内の転倒事故は、必ずしもバス運転士の責任になるとは限らないようです。
しかし、現実にはほとんどの場合でバス運転士やバス会社が責任を問われ、ケガの治療費や賠償金を支払うことも少なくありません。
乗客がつり革や手すりにつかまっていなかったり、バスが完全に停止する前に席を立ったりして、安全注意をおこなえていなかったことが確認できれば賠償金が減額されることもあるようですが、道路交通法上ではバス運転士の責任はゼロにならないのです。
一方で、車内アナウンスに従わなかった乗客が転倒した場合、バス運転士に責任が問われることに疑問を感じるという意見も多くあります。
乗客は転ばないようにつり革や手すりにつかまることが必要(画像はイメージです)
近年では、バス運転士のなり手不足が問題視され、バスが減便になったり、路線自体を廃止したりする事業者も増加しています。
そんなバス運転士不足に拍車をかけるとされているのが、「2024年問題」です。
2024年問題とは働き方改革の一環で、バス運転士の年間労働時間の上限が3300時間に引き下げられるほか、退勤から次の出勤までの休息時間を現状の規定より長く確保することなどが定められています。
バス運転士のなり手不足は今後も続き、2030年度には9万3000人まで減少し、3万6000人のバス運転士が不足する見通しのようです。
一方で、割に合わない賃金や連日勤務といった労働条件などの問題だけではなく、バス車内転倒事故時の責任の大きさも関連しているのではないかとする見方もあります。
この責任の有無についてはまだまだ議論の余地があると言えるかもしれません。今後は少しでもバス運転士が増えるような取り組みが望まれます。
※ ※ ※
バス運転士は安全運転を心がけているものの、何かしらの理由で急停止または急発進してしまうこともあります。
そのため、乗客としてバスに乗車する際は、つり革や手すりにしっかりとつかまり、完全に停止するまで席を立たないということを強く意識する必要があると言えるでしょう。
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