トヨタ「プリウス」なぜ人気復活? 飽和状態のハイブリッド市場で“先駆者”が再び注目を集めるワケ
くるまのニュース / 2024年4月25日 10時10分
トヨタ「プリウス」は2023年1月に5代目へと全面刷新し、それと同時に人気も復活しました。なぜプリウスは再び注目されることとなったのでしょうか。
■全面刷新で販売台数が3倍に爆上げ!
トヨタのハイブリッド専用車「プリウス」は、現行モデルが2023年1月に発売された5代目です。
2023年には1か月平均で8262台を登録しており、この販売実績は前年(2022年)の約3倍となっています。
新型車とあって登録台数が増えるのは当然ですが、それにしても非常に多く売れているといえるでしょう。
しかも現行プリウスの売れ方を見ると、その約10%をPHEV、つまり充電可能なプラグイン方式のハイブリッドが占めています。現行プリウスは、なぜ販売が好調なのでしょうか。
プリウスが好調な理由について、トヨタの販売店スタッフに聞いてみました。
「現行プリウスは、従来型に比べて、外観が明らかにカッコ良くなりました。エンジンの排気量も従来型は1.8リッターでしたが、現行型は2リッターが主力となり、動力性能も向上しています。
これらの影響で、今までプリウスを選ばなかったクルマ好きのお客さまも現行型を購入するようになりました。
下取り車も、例えばフォルクスワーゲン『ゴルフ』などの欧州車が入っています。先代型からの乗り替えも含め、いろいろなお客さまから選ばれて売れ行きを増やしています」
初代プリウスは、世界初の本格量産ハイブリッド車として1997年に発売されました。その後もハイブリッド専用車として進化を続け、特に2009年に発売された3代目は、トヨタの全店が扱うようになった影響もあり、登録台数が大幅に増えました。
ところが2015年に登場した4代目は売れ行きが低下。内外装のデザインも不評でしたが、それ以上に災いしたのは、ほかのトヨタ車にもハイブリッドが増えたことです。
2011年にはコンパクトなハイブリッド専用車の「アクア」が発売され、法人ユーザーを中心に売れ行きを伸ばしました。「カローラシリーズ」や「ノア/ヴォクシー」、「シエンタ」など、トヨタの大半の売れ筋車種でハイブリッドを選べるようになったのです。
そうなるとハイブリッド専用車のプリウスを買う必要性は薄れます。その結果、ユーザーがいろいろなトヨタ車のハイブリッドに分散され、4代目の先代プリウスは売れ行きを下げたというわけです。
この時に、ハイブリッドを普及させるというプリウスの使命は果たしたと考えて、廃止する方法もあったでしょう。
しかしプリウスは伝統あるハイブリッド車ですから廃止は避けたいです。そこで現行プリウスは、もはや当たり前になったハイブリッドの低燃費ではなく「ハイブリッドの付加価値」に注目して開発されました。
最も重視したのは、機敏に反応するモーター駆動を生かした滑らかで力強い加速です。
そこで販売店スタッフが話す通り、主力グレードのエンジン排気量を2リッターに拡大しました。エンジンとモーター駆動の相乗効果に基づくシステム最高出力は、2リッターの2WDが196馬力ですから、1.8リッターの140馬力に比べると1.4倍に強化されています。先代型の1.8リッターと比較すれば1.6倍です。
外観も大きく変わりました。全高は40mm低い1430mmに抑えられ、全幅は20mmワイド化されて1780mmに拡大されています。リアゲートを寝かせた5ドアクーペ風のスタイルへとカッコ良く進化しました。
全高を40mm下げたことで低重心化され、全幅の拡大と相まって走行安定性も向上。
「滑らかで速い走り」というハイブリッドの付加価値が、カッコいい外観と併せて訴求され、現行型プリウスは、従来型に魅力を感じなかったクルマ好きのユーザーも取り込んだというわけです。
■最上級のPHEVがハイブリッドよりも安く買えるカラクリ
プリウスは価格も注目されます。2リッターエンジンを搭載する主力グレードの「G」は320万円ですから、1.8リッターを搭載する「X」の275万円に比べて45万円高いです。
その代わり8インチディスプレイオーディオを始めとするセットオプション(Xのオプション価格は22万7700円)や19インチアルミホイール(同11万2200円)、上級ファブリックのシート表皮(7万2600円)など41万円相当の装備が加わります。
そうなると価格差の45万円から41万円を差し引いた4万円となり、さらにGは動力性能の高い2リッターエンジンを使ったハイブリッドを搭載していますから、余裕のある走りや充実した装備の割に、価格を抑えて買い得なのです。
トヨタ「プリウス PHEV」
PHEV(プラグインハイブリッド)の機能と価格も注目されます。「PHEV Z」の価格は460万円で、ハイブリッドZの370万円に比べると90万円高いです。
しかしPHEVでは、申請を行うと補助金が交付され、国からの交付額は55万円です。90万円の価格差の内、半額以上が交付され、実質価格差は35万円に縮まります。
さらに東京都では、国とは別に55万円(10万円のメーカー別上乗せ額を含む)の補助金も交付しており、合計110万円です。
補助金交付額が価格差の90万円を上まわり、東京都ではPHEV ZをハイブリッドZよりも20万円安く手に入れられます。
このように自治体によっては、ハイブリッドとの実質価格が逆転することもあり、PHEVはさらに買い得度を強めたのです。
しかもプリウスPHEVは、1回の充電により、エンジンを始動させずにWLTCモードで87kmを走行できます。システム最高出力も223馬力ですから、2リッターハイブリッドの196馬力と比べて14%の上乗せです。
このようにプリウスPHEVは高機能で、なおかつ補助金の活用により、割安に手に入れられます。PHEVの機能と買い得度も、プリウスの人気を高めた秘訣です。
このほかプリウスは、定額制カーリースのKINTOにも力を入れています。KINTO専用グレードの「U」も用意され、契約後に安全装備などを追加(アップグレード)できるサービスも展開されています。
こうしたKINTOのアップグレードサービスも、プリウスの登録台数を増やす要因でしょう。
※ ※ ※
新型プリウスは「ハイブリッド=低燃費」の図式から脱して、外観をほかの車種よりもカッコ良く仕上げ、走りは楽しく、価格は割安に抑えました。
KINTOなどの利用方法も含めて、知恵と工夫を凝らすことで売れ行きを増やしました。
今の売れ筋カテゴリーは、実用重視の軽自動車/コンパクトカー/ミニバンで、趣味性を強めても好調に売るにはSUVが限界です。
全高が1500mmを下まわるセダン/ワゴン/ハッチバックは、全般的に販売が低調ですが、このカテゴリーで成功するには、さまざまな観点から魅力を身に付けることが不可欠で、プリウスはその代表でしょう。
(プリウスは2024年4月17日に後席ドアハンドルの開スイッチの防水性能が不十分とのことでリコールを届け出ており、生産が中止されています)
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