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えっ!「車検」通らなくなる!? “今夏”から始まる「ロービーム検査」って何? 考えられる対策とは

くるまのニュース / 2024年5月15日 11時10分

車検のときには、ヘッドライトをいろいろ検査します。中でも明るさに関しては、この夏から検査方法の改正が完全施行される(10運輸局のうち、6運輸局では延期、4運輸局「北海道・東北・北陸信越・中国」では実施)ので、「ちょっと古いクルマ」には大変な問題になってくる可能性があります。今回は、検査方法の改正内容とそれまでにユーザーが準備できる対策について説明していきます。

■ロービーム検査って何?

 クルマのヘッドライトは、遠くを照らす通称「ハイビーム」と、近くを照らす「ロービーム」で構成されています。
 
 法令では通常時はハイビームで走行し、前にクルマがいたり対向車がいるときのみロービームに切り替え、それ以外の時はハイビームで走行するように定められています。

 近頃はハイビームとロービームを自動で切換えるクルマが出てきていますが、まだ多くのクルマではドライバー自身がヘッドライトのレバースイッチを中立位置にしておくとロービーム、レバースイッチを奥側に倒すとハイビームに切り替えられるようになっています。

 走行時の基本はハイビームであることから、これまでのヘッドライトの明るさ検査はハイビームの状態で行っていました。

 しかしこの法令は自動車の台数が少ない時代に定められたものであり、自動車台数が増えた現代では、ロービームで走行する時間の方が圧倒的に長くなっています。

 そこで使用の実状に合わせて、2015年9月1日から、「平成10年(1998年)9月1日以降に生産された車は、検査を原則としてロービームで行う」ことに改正されました。

 しかし、試験する機械の都合や一部の測定困難な車両では、ハイビームで試験をしてもかまわないとの経過措置が付け加えられていたのです。

 それから約9年間が経過、検査方法改正の周知や機械の準備が整い、2024年8月1日以降はロービームによる検査を開始することになりました(10運輸局のうち、6運輸局では延期、4運輸局「北海道・東北・北陸信越・中国」では実施)。

「ヘッドライトの明るさの規制が厳しくなるならともかく、ハイとローなど検査する向きが変わるだけで何か問題があるの?」と思えるかもしれません。

 しかしこれが大ありなのです。

 ヘッドライトが光を発生する仕組みには、いくつかの種類があります。

 すでに家庭用照明でもおなじみのLED方式のほか、1990年代後半から急速に増えて最近は少なくなったHID式、そして自動車普及の頃から使用されている、淡黄色の光を放つ電球式です。

 電球式の中でも形状や内部構造でいくつかの分類があり、主流となっているのは1個の電球の中にハイビーム用とロービーム用それぞれの光る部分が内蔵された「H4式」というものです。

 この方式は、ロービームを選んだときはロービーム用の部分だけが光り、ハイビームを選んだときにはロービームの方が消えてハイビームの方が光るようになっています。

 仕様上は、ハイビームの方が若干明るい光を放つ構造になっています。

 このことを利用し、車検の際にロービームで明るさが検査基準を満たさなかった場合には、ハイビームに切り替えて合格させる、などのテクニックがありました。

 ところが、今回の経過措置終了により、このテクニックに頼っていたクルマは車検に通らなくなる可能性が出てくるのです。

■ヘッドライトは暗くなるなぜ暗くなるのか

 ヘッドライトの明るさは、車が古くなってくるといくつかの理由で低下してきます。

 その原因と対処方法について、S県でメカニックをしているMさんに解説してもらいました。

磨くことできれいになることも磨くことできれいになることも

 一つ目は電球自体の劣化です。

 電球は、電球自体の寿命が近づいてくると電球ガラスの内側に劣化した成分が付着して、光が遮られて暗くなってきます。

 二つ目は、電球に電気を送る配線の劣化です。

 配線の途中にはコンセントの様に抜き差しできるコネクタがあるのですが、この金属部分に水が侵入するなどして錆びてくることがあります。

 錆は電気を通しにくいために電球に作用する電力が低下して、電球が十分な性能を発揮できなくなります。

 三つ目は、ヘッドライトの電球の奥にある、きらきらとした反射板が曇ったりはがれたりすることです。

 電球の光はそのままヘッドライトから出ていくのではなく、反射板で反射した光でクルマの前方を照らしています。

 反射板は電球の光りの熱によって曇ったりはがれたりしてしまうことがあり、そうなる照らす光も減少してしまいます。

 四つ目は、特にちょっと古くなったクルマによくある、ヘッドライト表面の透明なプラスチック製ヘッドライトカバーの劣化です。

 ヘッドライトカバーには劣化を防ぐコーティングが施されてはいるのですが、太陽や電球の紫外線、空気中の汚れなどによって黄色っぽく変色したり、細かいひび割れが発生したりします。

 変色やひび割れは、電球の光を遮ったり、光を乱反射させて前方を照らす光を減らす原因になります。

 ヘッドライトの明るさ検査は、クルマの前に検査機器を置き、法令で決められた方向や位置に決められた明るさがあるかどうかを確認することで行います。

 人間の目で見ると明るく見える光でも、検査では不合格になることもあります。

 実際のクルマでは、これらの4種類の原因が複合的に発生していることが多くなります。

■光量低下に対する対策は?

 一つ目の電球の問題は、電球自体を新品に交換することで解消される場合があります。

 ただし、電球自体はそれほど高額ではありませんが、電球を交換するためにエンジンルームの色々な部品を取り外す必要がある車がありますので、工賃が高額になる場合があります。

 二つ目の配線の問題は、コネクタを外して金属部分を磨くことで解消される場合があります。

 ただし事故を修理したクルマなどでは配線の修理が不十分であることがあり、配線の痛んだ部分を見つけるのに大変な手間がかかることがあります。

 三つ目の反射板の問題は、残念ながらヘッドライト自体を新品や程度の良い中古品などに交換する方法しかありません。

 最近は中古車が海外に輸出されてしまい、国内で程度の良い中古部品を探すのに苦労する場合や、新品部品は製造廃止になっていることがあります。

 また、車検に落ちたら交換するといっても、交換用の部品がすぐに手に入るとは限りません。

 極端に部品価格が上がっていることも増えています。

 次回の車検は受けずにクルマを買い替える予定でしたら、慎重に検討していただきたいものです。

 四つ目の変色の件は、新品や中古品への交換以外にも試せることがあります。

 一般的なのが、ヘッドライトカバーの研磨です。

 変色した部分がコーティング層の表面にとどまっている場合には、この方法で解消されることがあります。

 カー用品店などで販売されているヘッドライト研磨・コーティング用品は、プラスチックにやさしい研磨力なので、ユーザーの方が少々力を入れすぎて研磨作業を行っても、削りすぎてしまうことはあまりありません。

 強い効果を望むあまり、塗装表面用の研磨剤や金属用の研磨剤、紙やすりを使う人もいるようですが、削りすぎてしまうと元通りにならず、ヘッドライトを交換しなくてはならなくなる場合があります。

 一般ユーザーにはあまりお勧めできません。

 プロ用のもう少し強力な製品や施工が難しい再コーティング剤もありますので、プロに相談するほうが良いでしょう。

 また、研磨しても基準の明るさまでもう一歩、という場合には、こんな方法もあります。

 HIDがなかった頃のクルマ好きは、同じ電力でもより明るい光を放つ電球に交換していました。

 ハイパーハロゲンなどの製品名で、多くの電球メーカーから発売されていたものです。

 HIDやLEDの普及でそれらの製品は廃れましたが、今回の検査方法改正に合わせて電球メーカーは、車検対策品として明るい電球の復刻をはじめました。

 また、家庭用照明の電球をLEDに交換するように、電球部分をLEDにする製品 も多数販売されています。

 ただしこの方法は、製品選びに注意が必要です。

 明るさが検査基準を満たしていない製品、照らす方向が検査機器からずれてしまったり、日本の法規制を満たさない製品、寿命が著しく短い粗悪品も流通しているようです。

 仮に車検には合格しても、ユーザーの方によっては不都合を感じることもあるようです。

 人間の目には個人差があり、電球の淡黄色は良く見えるけれど、LEDの青白い光は良く見えない例もあります。

 LED自体もかなり安価になってはきたものの、それでも電球よりは高額で、数万円がかかります。

 LEDは発熱量が小さいために、降雪時にライト表面に付着した雪が溶けない課題も残っています。

「これをすれば絶対に車検に合格する」という方法はありませんから、ユーザーの予算や考え方を聞きながら決めています。

 整備のプロでもすぐに対処できるとは限りませんから、実際にクルマを診てもらう時間を取ることが大切なようです。

■そもそもヘッドライトを劣化させない方法は?

 もしヘッドライト自体を新品などに交換したり、あるいは車を買い替えた際に、次は困らないようにするための対策はないのでしょうか。

 そもそもヘッドライトカバーの変色問題が発生し始めたのは、ヘッドライトがプラスチック製になり始めた1990年代末頃からです。

 その後徐々にコーティング技術が改善されてきたのか、最近では完全な黄色にまで変色しているクルマは少なくなってきているようです。

 しかし完全な解消までには至っておらず、例えば初代トヨタ「86」など2010年代前半頃の車でも変色している個体を目にするようになってきています。

 まさか、ヘッドライトの変色を防ぐためにクルマを使わない人はいないでしょうが、普段の努力で変色を遅らせることはできるようです。

洗車で予防になることも洗車で予防になることも

 M氏は、続いてこのように語っています。

「乗りっぱなしにしていたり、洗車もされていないような車だと、比較的早く変色するようです。

 また、南側や西側を向けて駐車している車も、変色が早いように感じます。

 クルマが古くなっても、ユーザーが定期的に洗車したり、時々市販のヘッドライト研磨・コーティング剤を使っている場合には、比較的透明さが維持されているようですね。

 日頃のメンテナンスのひと手間が、ヘッドライトの寿命を長くしているのは間違いないでしょう。

 当社にもヘッドライトコーティングのサービスはありますので、定期点検に来てくれる人にはお勧めしていますよ。

 クルマが新しいうちは利用してくれる方もいらっしゃるのですが、本当は利用して欲しい、少し古い車にお乗りの方ほど、メンテナンスにお金をかけてくれないことが課題です。

 いずれにしても、車検の有効期間まで時間がないクルマだと、できること自体が限られてしまいます。

 有効期限の充分前の時期にお越しいただいて、対策について相談してほしいです」

 一般ユーザーのレベルでも、カー用品店に行くと各種のヘッドライト研磨剤やコーティング剤が販売されています。

 それらの製品の性能も徐々に向上し、最近では変色を溶解させて落とす製品や、コーティング被膜が2年間も耐久するとしている製品もあります。

 使用方法や効果のほどはいろいろですから、店員さんとよく相談したうえで選ぶと良いでしょう。

 いずれにしても、8月以降に車検を控えているちょっと古いクルマに乗っているユーザーは、早いうちに自動車整備工場に相談し、対策を考えておいたほうがいいかもしれません。

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