「若者のクルマ離れ」は本当? 10年経って「若者層」に変化あり? 実際は「クルマに興味ある人」多いが“ハードルの高さ”が課題か
くるまのニュース / 2024年5月25日 12時10分
「若者のクルマ離れ」と叫ばれてから10年ほどが経過しました。では、今の若者はクルマに興味はないのでしょうか。これまでの取材を元に考察してみました。
■本当に「若者のクルマ離れ」進んでいる?
「若者のクルマ離れ」という言葉は自動車業界でよく聞こえてくる言葉です。この言葉が騒がれてから10年ほどが経過している気がします。
10年もすれば若者と言われる人たちも世代交代するはず。そこで今回は1997年生まれの若手自動車ジャーナリストの筆者(西川昇吾)が、「若者のクルマ離れ」に対して、若者の当事者目線で考察していきます。
結論から言えば、「世間が思うほど若者のクルマ離れは起きていない」というのが筆者の答えです。
確かに1980年代から90年代初頭のバブル期などに代表されるように、クルマが若者文化の中心であった時代に比べたら、若者のクルマ離れは進んでいるでしょう。しかし、それは時代の進化と共に娯楽が増えたのが大きな理由と言えます。
実際にオーナー参加型イベントや走行会の取材に行くと、若手参加者が多く見られます。
このような光景を見ると「世間が思うほど若者のクルマ離れは起きていない」と自信を持って言えるのです。
反対にこれらのイベントでは30代半ばから40代前半あたりの中間の世代が少ないと感じます。これはちょうど10年ほど前に若者のクルマ離れが騒がれ始めた当時の若者に当たる年齢層です。
こうした世代の「クルマ熱の有無」を考察してみると、当時の経済状況や雇用状況がクルマ離れの進行に大きく影響していると考えられます。
先にも挙げたように、「あの頃の日本車や自動車文化は良かった」と言われることが多いのはバブル期が中心です。
クルマが若者文化の中心であり、映画やドラマでもクルマが「名脇役」として多く登場することで「あのクルマに乗るのがカッコイイ」と、一種のファッションアイテムとしての役割も担っていた、そんな時代でした。
そして、今時の若者はそんなバブルの恩恵を受けた世代を親に持つ人たちが多いのです。
現場で取材をしていると、親御さんからの影響でクルマ好きになったと、そんな声も多く聞こえます。
そんな今時の若者たちは、昨今の物価高などをはじめとするさまざまな要因から実質賃金が上がらず、残念ながらバブル期よりも収入には余裕がありません。
若手オーナーに取材をしてみると、燃料代や車両価格が高騰するなか、皆さまざまな工夫をして好きなクルマを維持しているといった様子。
しかし、雇用環境は売り手市場であり、収入が完全に無くなるという心配は少ない状況にあります。
対して30代半ばから40代前半あたりの年齢層はいわゆる「就職氷河期」の影響を受けた世代です。
先行きが読めない世情のなか、お金のかかるクルマという趣味に割く余裕が全体的になかったとも言えます。
クルマの購入は大きな買い物です。欲しいクルマのためにはローンを組む人も多いと思いますが、不安定な雇用状況ではローンを組むことに踏み切れなかったり、ローンが通らないといったケースも多かったはずです。
さらに、今の若者は本音の部分で実は「クルマ好き」だなと感じる調査もあるのです。
トヨタ車のサブスクサービスなどを展開するKINTOが2022年から毎年続けている「Z世代のクルマに対する意識比較調査」では、この事実が如実に表れています。
例えば「自動車を運転することが好きだと感じますか?」という質問に対し、地方では66.4%、東京では66.2%が「とても感じる」「やや感じる」という肯定的な回答がありました。
また、「将来的に自身の自動車を欲しいと思うか?」という質問に対しては、地方で78.1%、東京で68.8%が肯定的な回答をしました。
この結果は、現代の若者の多くが実はクルマに興味があったというのに、十分な説得力があると言えます。
そして、クルマ選びに関して着目してみても、若者はクルマ好きだと感じたことがありました。
以前、各自動車メーカーに「20~30代の購入比率が多い車種を教えてください」と質問し、各メーカーから回答を得た際、選択にこだわりが見える車種が上位に来ていたのです。
各メーカーに質問したので様々な車種が挙げられたのですが、トヨタ「RAV4」やホンダ「シビック」、日産「エクストレイル」などエントリークラスではないモデルが多く見られました。
こうしたことから、購入価格や維持費などの安さで選んでいるという消極的理由ではなく、「このクルマが欲しい」というポジティブな理由がクルマ選びに現れていると感じさせました。
日本のクルマ文化、そして世界に戦える自動車産業を維持していくには、クルマ好きな若者たちがもっと活躍でき、クルマに触れやすい環境へと変容していくことが必要であると、筆者は感じています。
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