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「兄弟車」&「姉妹車」って何? なんか違うの!? クルマは「男」or「女」どっちなのか

くるまのニュース / 2024年6月9日 8時40分

「兄弟車」や「姉妹車」という表現がありますが、どちらが正しい表現なのでしょうか。それらの言葉の成り立ちについて検証してみました。

■「兄弟車」と「姉妹車」、どっちが正しい?

 トヨタ「アルファード」と「ヴェルファイア」のように、そのほとんどの部分を共有するモデルを「兄弟車」などと呼ぶことがあります。
 
 近い表現として「姉妹車」と呼ぶケースもみられますが、これらの表現とはいったいどのような意味で使われるのでしょうか。その由来も含めて検証します。

 兄弟車というのはあくまで俗語であり、そこに厳密な定義があるわけではありませんが、クルマの場合は自動車メーカーの販売戦略から誕生した側面があります。

 国内の例で見てみましょう。

 高度成長期から1990年代まで、多くの国内メーカーでは系列の販売店チャンネルが複数存在しました。

 例えばトヨタの大衆車「カローラ」(トヨタカローラ店系で販売)をベースに、デザインやキャラクター付けなどを変更したモデルに「スプリンター」(トヨタオート店系、のちのネッツ店)と名付けて販売されていました。

 このように同じベース車両を異なる販売店系列で売るケースは数多く見られ、これらが兄弟車といわれていました。

 また近年は、いわゆるOEM車のようにエンブレム以外の違いがほとんどないモデル同士を指すことも多いようです。

 一方、兄弟車と似た言葉に姉妹車というものがあります。

 自動車専門メディアなどにおいても、兄弟車と姉妹車を厳密に使い分けているケースはほとんどなく、両者はほとんど同じ意味合いを持つ言葉として考えられているようです。

 では兄弟車と姉妹車には本当に違いがないのでしょうか。

 もちろん、どちらも現に用いられている表現であるため、どちらか一方が正しいものである、あるいは間違っているものであると断ずるのはナンセンスです。

 そもそも、本来性別が存在しないもの同士の深い関係性を示す際に、兄弟/姉妹という表現を用いるのは日本語独自の表現ではありません。

 その起源には諸説ありますが、1956年に米国で設立された「シスター・シティ・インターナショナル(Sister Cities International)」というNGO団体が、もっとも古い例のひとつであるようです。

 それぞれの都市が協定を結ぶことで、行政や市民のパートナーシップを深めることをねらいとしたこのNGO団体は、当時の大統領であるドワイト・アイゼンハワー氏によって設立されました。

 その概念はすぐに日本へも広まり、「シスター・シティ(Sister Cities)」を「姉妹都市」と訳したことで、こうした表現が生まれたと言われています。

 では、なぜ「兄弟都市」つまり「ブラザー・シティ(Brother Cities)」 ではなかったのでしょうか?

 この点についてもさまざまな議論がありますが、フランス語やドイツ語などで「都市」を意味する言葉の多くが女性名詞であることが大きく関係していると考えられています。

 もちろん、現代英語に名詞ごとに性別があるわけではありません。ただ、フランス語やドイツ語、そして英語は、かつて「インド・ヨーロッパ祖語」と呼ばれる同じ言語から派生したものと考えられているため、英語でも「都市」を女性的にとらえるのはその名残であると言えそうです。

■「クルマ」は男性?それとも女性!?

 では、名詞に性別がある言語の場合、「クルマ」を表す言葉の性はどのようになっているのでしょうか。

 たとえば、フランス語の「voiture」は女性名詞とされています。つまり、フランス語をベースとするのであれば「姉妹車」という表現のほうが適切と言えるかもしれません。

同じ“デリカ”シリーズでも、異なる成り立ちのクルマ同士に「兄弟・姉妹」の表現をするケースは少ないようです[左:SUVテイストの軽スーパーハイトワゴン 三菱「デリカミニ」/右:3列シートのクロスオーバーミニバン 三菱「デリカD:5」]同じ“デリカ”シリーズでも、異なる成り立ちのクルマ同士に「兄弟・姉妹」の表現をするケースは少ないようです[左:SUVテイストの軽スーパーハイトワゴン 三菱「デリカミニ」/右:3列シートのクロスオーバーミニバン 三菱「デリカD:5」]

 一方、スペイン語の「coche」は男性名詞です。そのため、スペイン語圏では「兄弟車」という表現のほうがよさそうです。

 ドイツ語の場合は少々複雑です。

 クルマと訳されることの多い「wagen」は男性名詞であるにもかかわらず、「自動車」のように少しフォーマルなニュアンスを含む「auto」は中性名詞とされているためです。

 このように、同じ言語から派生したものとされる言語であってもその性別は千差万別であり、そこに明確な法則はありません。

 こうした背景を考えると、「兄弟車」と「姉妹車」のどちらが正しいかを論ずるのは、やはりナンセンスです。

 ただ、日本語においては「兄弟車」と呼ばれるケースが多いのも事実です。

 おそらく、日本においては「クルマ」そのものが男性的なイメージが強かったことや、男性優位の社会形態が長らく続いてきたことなどが関係しているのかもしれません。

 一方、そうした表現にも変化が見られつつあるようです。

 個人主義が基本となっている米国では、「兄」や「姉」と「弟」や「妹」の間に社会的な優劣があるという考えはそれほど強くありません。

 一方、日本をはじめとする東アジア諸国では、「兄」や「姉」を敬うべきであるという考え方も根強く、「姉妹都市」のような表現は双方の優劣が問題となりやすい場合があります。

 そこで、「姉妹都市」ではなく、「提携都市」や「友好都市」などと表現するケースも増えています。

 クルマについても、たとえばアルファードとヴェルファイアのあいだに明確な優劣があるわけではないため、今後は「兄弟車」や「姉妹車」という表現そのものが見直されていく可能性も考えられそうです。

※ ※ ※

 昨今の自動車業界では、少数のプラットフォームから多くのモデルを開発することが主流となっています。また、グループ内での部品の共用もめずらしいことではありません。

 言い方を変えれば、ほかのモデルと一切部品を共有していないモデルというのはほとんど存在せず、その意味においては「すべてのクルマはみな兄弟/姉妹」と言えるのかもしれません。

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