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なぜ軽自動車は「64馬力」が上限? エンジン出力向上&技術力も上がったのに… 「軽の最大出力」現状維持する理由とは

くるまのニュース / 2024年5月31日 14時10分

普通車やバイクなどでは100馬力超えは当たり前なのに、なぜ軽自動車は64馬力が最大なのでしょうか。

■軽自動車が「64馬力止まり」な理由は?

 クルマの出力は、ベーシックなモデルでは100馬力程度の必要十分なものから、500馬力以上のハイパワー車まで幅広く存在します。
 
 しかし軽自動車は、エンジンの性能や効率が大幅に向上した現在でも、最高出力は最大64馬力のまま。一体なぜなのでしょうか。

 軽自動車は日本特有の規格で、1949年に新設されました。

 当初は排気量が360ccでしたが、1975年には550ccに、そして1990年には660ccまで拡大。

 そして規制緩和に伴い車両のサイズも拡大し、現在では全長3.4m以下×全幅1.48m以下×全高2m以下に定められています。

 対して出力(馬力)の面では、特に法律上の規制はなく、排気量やボディサイズを満たしていれば何馬力に設定しても問題ないと言えます。

 しかし、ほぼすべての軽自動車で64馬力を超えるものは存在しません。

 上限が64馬力に制限されているのは、実はメーカーによる自主規制なのです。

 この背景には、1980年代の交通事故による死者の増加が関係していると言います。

 当時はターボやスーパーチャージャーなどの過給器の搭載や、ツインカムの採用などクルマの性能向上が著しく、各メーカー間の高馬力競争が激化していました。

 軽自動車においてもハイパワーなモデルが数多く登場。こうしたことから、死亡事故の増加につながりました。

 そのため、当時の運輸省は、行き過ぎたパワー競争が交通違反や交通事故の増加を招く恐れがあるとし、日本自動車工業会に出力の制限を申し入れ、自動車メーカー各社もこれに従い、自主規制をはじめたのです。

 当時は軽自動車だけでなく乗用車においても馬力の自主規制がおかれ、1989年に登場した日産「フェアレディZ」(Z32型)が国産車最高となる280馬力を達成。これに続いて乗用車は上限が280馬力に制限されました。

 また、1987年に発売されたスズキ「アルトワークス」(初代)では、軽自動車最高の64馬力を達成。これが軽自動車の基準となり、64馬力規制が行われることになったのです。

 なお、乗用車の280馬力規制については2004年に撤廃され、2004年に登場したホンダ「レジェンド」(4代目)で300馬力の大台を達成しています。

 乗用車の規制撤廃については、海外メーカーに対する日本車の競争力強化や、安全性能向上により交通事故死者が減少したことなどが理由とされています。

■なぜ今も「64馬力規制」続く?

 しかし、軽自動車については、現在もそのままの64馬力規制が続いています。これは一体なぜなのでしょうか。

 明確な理由はないようですが、メーカーやユーザーの立場で考えてみると、64馬力規制が継続している理由が見えてきます。

軽自動車であえて馬力を上げる必要はない軽自動車であえて馬力を上げる必要はない

 1つ目の理由は、規制緩和すると軽自動車の税制面での優遇も見直されてしまうためです。

 軽自動車のサイズや出力が大きくなった場合、普通乗用車のコンパクトカーとの差がなくなり、軽自動車を税制優遇する理由が消えてしまうのです。

 さらに、メーカーの視点で考えると、軽自動車のユーザー構成を見れば出力向上を図る必要がないことがわかります。

 現在の軽自動車のユーザーは女性が65%を占め、さらに44%は60歳以上です。

 女性や高齢者が、軽自動車に必要以上の馬力を求めるとは考えにくいでしょう。

 メーカーとしても、ニーズがそれほどない分野で自主規制を解除してまで開発を進める動機はありません。

 また、最近のEV開発の進展も、馬力を上げる必要がない理由のひとつと考えられます。

 軽自動車で馬力が足りないと感じるのは、主に走り出しの加速や坂道でのパワー不足でしょう。

 このパワー不足については、実は馬力がそれほど高くなくてもトルクが大きければ解消できます。

 なぜならばトルクとは、ものを回転させる力を表しており、自転車で例えるとペダルを踏み込む力がトルクで、加速力と大きく関係します。

 一方、出力(馬力)とは、自転車ではペダルの回転数に相当します。

 つまり馬力が大きいほど最高速度が速くなり、トルクが大きいほど加速力が高いと言えます。

 近年ではEVの軽自動車も増えていますが、日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」のスペックを確認すると、馬力は47kW(64馬力)、トルクは195Nmあります。

 馬力は64馬力の規制いっぱいではありますが、トルクの数値ではパワーのあるターボ搭載車をはるかに超えており、一例ではホンダ「N-BOXターボ」(104Nm)の倍近いほか、2リッター自然吸気エンジンの普通車とほぼ同等の数値です。

 ターボ車も軽自動車のなかではトルクが高いですが、EVはさらにパワフルになります。

 こうしたことから、普段使いの軽自動車でEVを選べば、加速が悪いといったことが気にならなくなることでしょう。

 特に加速力不足がイメージされがちな軽自動車にとっては、EVの加速力は魅力的です。

 今後、EVの販売が拡大していけば、馬力の規制を気にせずに軽自動車の運転を楽しめる時代になるでしょう。

※ ※ ※

 このように、昔ながらの規制が現状でも残っているために、今でも軽自動車のほとんどは64馬力が上限になっているようです。

 乗用車では自主規制が撤廃されて20年が経過しますが、軽自動車ではあえて馬力を大きくする必要がないため、おそらく今後も継続していくとみられます。

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