ホンダの「“VTEC”エンジン」何がスゴい? 他メーカーがマネしない理由がある? 熱狂を呼んだ「超高回転ユニット」独自開発の凄さとは
くるまのニュース / 2024年6月11日 20時10分
今ではホンダの代名詞とも言えるエンジン機構「VTEC(ブイテック)」。その名を知るクルマ好きは多いでしょうが、ではこのVTECは一体どのような機構で、何が凄かったのでしょうか。
■究極のエンジンを目指した「VTEC」とは
1989年に登場し「カッコインテグラ」のキャッチコピーでも一斉を風靡したホンダ2代目「インテグラ」には、当時ホンダが新開発した“全く新しいエンジン機構”が搭載されていました。
それが、今ではホンダエンジンの代名詞とも言える「VTEC(ブイテック)」です。
以降、VTECはホンダのスポーツマシンを中心として欠かすことの出来ない存在となりましたが、ではこのVTECは一体どのような機構で、何が凄かったのでしょうか。
VTECとは、4ストロークサイクルエンジン用にホンダが開発したテクノロジーです。
VTECは正式には「Variable valve Timing and lift Electronic Control system」と呼び、日本語に訳すると「可変バルブタイミングリフト機構」。
まず4ストロークサイクルエンジンとはその名の通り、「燃焼ガスを取り込む(吸気)」「燃焼ガスを圧縮する」「燃焼させる」「不要になったガスを排気する」という4つの動作(サイクル)を繰り返して、動力を生み出します。
そしてこのうち吸気と排気は、「バルブ」と呼ばれる部分を開閉させることで行うのですが、この時に取り込む燃焼ガスの量が多ければ、それだけ大きな爆発を起こすことが可能となり、それがより大きなパワーを引き出すことに繋がります。
そのため、パワーが必要な高回転域では、バルブの開閉時間を“長くする”のが理想です。
しかし、そこまでパワーが必要のない低回転域では、バルブの開閉時間が長いとパワーが不安定になってしまうというデメリットが生じます。
そこでホンダは、「低回転域でも高回転域でもちょうどよいバルブの開きになる仕組みを作ろう」と考えました。
これがVTECが誕生するに至るストーリーです。
VTECが生まれる以前のエンジンは、バルブの開きが一定のため、エンジンの構造を高回転寄りにすれば低回転で不安定になり、低回転域に寄せると高回転域でパワーが不足する―――と、調整が非常にシビアでした。
ホンダはこの課題を解決するために、「カム」と「ロッカーアーム」というバルブを押し下げるエンジン部品を、低回転域用と高回転域用の2タイプ同時に装着。
低回転域では低回転域用のみが作動し、高回転域になると油圧によって自動的に高回転域用が作動する仕組みを作り上げました。
この結果、低回転域と高回転域のどちらにも対応できる画期的なエンジン「VTEC」が世に誕生したのです。
くわえて吸・排気も的確にコントロールすることで、従来よりも効率的にエンジンパワーが引き出すことにも成功。
世界で初めてVTECを搭載したB16A型エンジンは、量産型のNAエンジンでは初となる“排気量1リッター当り100馬力”を達成しました。
また、VTECがもたらす低回転域での安定性と、中・高回転域からの突き抜けるようにパワーが湧き出る独自のフィーリングは、多くのスポーツカー好きをとりこにしました。
そうしてVTECは、スーパーカー「NSX」や、「シビック」「CR-X」などのスポーツモデルに採用され、ホンダのラインナップ内で普及していきます。
その後、VTECには吸気側のみをコントロールする「SOHC VTEC」や、低燃費を・低排出ガスを目的とする「VTEC-E」、ホンダ史上屈指のパワーを発揮する「VTEC TURBO」など様々な派生タイプが誕生。
今やスポーツカーだけでなく軽自動車にも採用されており、ホンダのクルマに欠かせないものとなっています。
※ ※ ※
このようにして開発されたVTECは、それまでのエンジンの常識を打ち破ったホンダらしい画期的なテクノロジーでした。
名機と名高い初代VTECエンジンのB16Aを搭載したモデルは、現在では中古市場でも非常に貴重なものになっており、入手は困難。
もし乗ることが可能という貴重な機会に出会えたときは、歴史を動かした初代VTECならではのフィーリングを味わってみてはいかがでしょうか。
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