意外な場所で「日本の個人タクシー」発見! なぜ気合い入りまくりの「ティアナ」存在? 北京で見た光景とは
くるまのニュース / 2024年6月22日 14時10分
北京に日本の個人タクシーが存在すると言います。その正体はどのようなものなのでしょうか。
■構想2年!ついに完成した個タク仕様の「日産ティアナ」
先日中国・北京を訪れた際、意外な乗り物に遭遇しました。
北京市内のレストランの前に日産「ティアナ」の個人タクシーがとまっていたのです。
屋根の上には黄色い「個人」の行灯が載っています。
なぜ日本のタクシーに北京のナンバーがついていますが、走っているにでしょうか。
外観は白地に青いラインの個人タクシーでボディには「富井タクシー」と書かれています。
よく見ると他のステッカー類もすべて日本のタクシーと同じです。
「これはいったい何?」と思っため、オーナー(Wilhelm Fangさん)に話を聞いてみました。
―― なぜ、ティアナを個人タクシー仕様にしたのですか?
日本の個人タクシーを認識したのは、小さい時に遊んでいたトミカのクラウンマジェスタ個人タクシーが最初でした。
白い車体に青いストライプというカラーリングがカッコよくて、お気に入りのトミカでした。
それから15歳の時に初めて日本に旅行で訪れた際、実際に東京の街を走る個人タクシーを見て昔遊んでいたトミカと同じタクシーの実物が目の前に現れた事にとても感動しました。
ティアナは元々家にあったクルマで古くなってきた事もあり、そろそろイジっても良いタイミングだろうと考えて実行に移しました。
―― これまでどのようなクルマに乗ってきましたか?
基本的に古いクルマが好きなので、学生時代に半分置物として買ったメルセデスベンツ560SEL(W126)(過去所有)、アウディ200(C3、中国専売車)、フォルクスワーゲンサンタナ(B2)、マーキュリーグランドマーキー(過去所有)。
メルセデスベンツ190E(W201)(オーストラリア留学時に所有)、メルセデスベンツE200K(W210)(過去所有)、アウディ100(C3)、アウディ200(C3、本国仕様)、そしてA6 Allroad(C8)(家の車)です。
―― ティアナは発案から完成までどれくらい時間がかかりましたか?
2年前くらいから、友人(KK)と日本の働くクルマを中国で再現したいという計画を立てていました。
元々の色は黒だったので、とりあえず簡易的な赤色灯で覆面パトカー仕様などもして遊んでいましたが、塗装がやれてきたのでオールペンついでに色を白に変え、個人タクシーを作ろうという運びになりました。
―― 最も苦労したカスタムはどこですか?
なんといっても車体のステッカーになると思います。
友人(KK)が一時帰国する度(合計3回)に少しずつ、乗車した個人タクシーの中で撮ったり、休憩中の運転手さんにお願いして採寸させて頂いたステッカーもあります。
近年は私が東京旅行した際にステッカーの大きさやディテールを、迷惑にならないよう道路脇に駐車している車体を撮影し、何度も大量の資料や画像と見比べながら、友人(KK)と私で画像をステッカーに起こしました。
意図を理解してくれる実家が印刷業の親しい友人などにもお願いしてディテールアップしていきました。
ある意味1/1スケールのプラモデルみたいなものです。
―― こだわりの部分を教えてください。なぜ、そこにこだわりましたか。
ディテールに拘っているので沢山ありますが、アイテムで言うと日産純正のハーフレースのシートカバーや、でんでん虫マークの行燈。
こういった物は作ろうと思えば、中国でも似たような物は作れると思いますが、本物のタクシーに使われた“本国パーツ”のほうがワクワクするものです。
“富井タクシー”の名前は幼少期から(現在まで)TOMYのミニカーで遊んで来た事、そしてトミカあっての自動車に強い関心を持てた事に基付いてネーミングしました。
また、車内の広告には私自身が好きなコンテンツの広告、東京ディズニーランドやテイラー・スウィフトの日本ライブツアーの広告など、違和感なく自身の好みを反映させています。
―― ティアナはもともと所有していましたか?ティアナの魅力を教えてください
家族が新車で買いました。小さい頃は乗り心地の良いセダンという印象でしたが、後にカタログや当時の資料などで「おもてなし」という言葉を知り、当時の日本らしさ溢れる開発コンセプトに感銘を受けました。
エクステリアセフィーロやローレルなどから継承されたセダンらしい優雅なフォルム、J32型のティアナはある意味最後の純粋なティアナだと感じています。
■反対気味だった母も完成するとお気に入りに!
―― 「個タク」カスタム。家族や周囲の友人の反応は?
父親はある程度クルマ好きで理解を示してくれましたが、母親は「そんなに家のクルマに手間を掛けなくても」と、反対気味でした。
なので、とりあえず最初は「白に全塗装するだけ」で話を進めました。
個タクカラーは、のちに就職が決まってからなのでその頃には特別反対される事もありませんでした。
カラーリングが完成した今では、実は母親もお気に入りです。
車好きの友人や車のイベントなどでは勿論大絶賛を受けますが、車好きじゃない友人に見せても、日本に旅行した事があったり、日本のドラマや映画が好きで、個人タクシーに見覚えがあると面白がってくれます。
―― 街で知らない人に声を掛けられることはありますか?
街中で振り向かれる事は多いですね。勿論中国にも色々な人が居ますから、日本語のステッカーが貼ってあるだけで嫌悪感を覚える人も居るとは思いますが、異国のはたらくクルマが街を走っているというのは、やはりユニークな光景だと思います。
北京の街中に溶け込む日本の個人タクシー(画像提供:Wilhelm Fang)
―― 中国はクルマのカスタムがやりにくいと聞いていますが、そのあたりはいかがでしょうか?
主な問題としては各地域による車検基準の差、そして改造の基準がアバウトで、例えばステアリングやシフトノブなど、内装で安全に関わるパーツはどんな物に変更しても一切問題ないのに、ホイールの大きさや、純正或いは正規メーカーの外装パーツなどが地域によって改造が許されないケースがあります。
つまり現状として、パーツは売られているのに、車検上は付けてはいけない(勿論、いわゆる闇車検や規制の緩い地域での車検などでやり過ごす方法はある)という事に対して、不合理性を感じる事はあります。
ドイツのテュフや日本の車検対応パーツなどといった規定された改造の基準に伴う認証があれば、大分改善されるとは思います。
でもこういった点も含めて、私のような、いわゆるステッカーチューンというのは中国の現状や法律にしっかり適した車のカスタム方法なのかもしれません。
―― 日本に来られた際、タクシーに乗りましたか?
実は東京の公共交通機関が便利過ぎて、(そしてタクシー代も安くないので)乗る機会はありませんでしたが、次回行った際には必ず乗って体験してみたいと思います。
旅行中の街中では常に観察していました。
特に東京の個人タクシーは車種のバリエーションにも富んでいて見ごたえがありますね。
―― これからやってみたいカスタムはありますか?
日本仕様の純正ナビ(および日本語のスイッチ)、タクシーメーター、そして追加の内装のステッカー。
ダミーの緑ナンバー、お金を入れるトレー(キャッシュレス化が進んだ中国では、日本らしいあのフサフサのついたトレーが案外入手困難でした)などなど、もっとディテーライズしていきたいです。
―― 日本車の中で気になるクルマはありますか?旧車、新車あればいろいろ教えてください
ティアナのオーナーとして取材を受けていますが、基本的に古いクルマが大好きなんです。
230セドリックHT、、130クラウンステーションワゴン、R31スカイラインあたりが好みです。
新しい車といっても20年以上前の車で恐縮ですが17系クラウンエステート、2代目センチュリー 、Z33のフェアレディZあたりが好きです。
※ ※ ※
本物の個人タクシーへのこだわりが凄まじいですが、近くで見ても本物と全く見分けがつかないほどの仕上がりに改めて驚きました。
まだ25歳と若いFangさんですが、こんなにも日本のタクシーと旧車を愛してくれているのは嬉しい気持ちになります。
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