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日産の「ハイブリッド」何が「スゴイ」? トヨタ式ハイブリッドとの「違い」って!? 窮地を救った独自の「技術」とは

くるまのニュース / 2024年7月8日 16時40分

日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER(イーパワー)」が誕生したのは、意外な技術からでした。その特徴について考察します。

■早くからハイブリッドを手がけていた日産だったが…

 日産「電動化」技術の中核とも言える独自のハイブリッドシステム「e-POWER(イーパワー)」。
 
 その特徴はどんなところにあるのでしょうか。登場した経緯も含め紹介します。

 1997年に世界初の量産ハイブリッド車としてトヨタ「プリウス」が誕生して以来、ハイブリッド車(HV)は各社から販売されています。トヨタに続いたのは、1999年発売のホンダ「インサイト」でした。

 ライバルの日産は、2000年に「ティーノ」をベースにしたハイブリッド車「ティーノ ハイブリッド」を発売。

 既存のエンジンを高圧縮・ミラーサイクル化した専用エンジンを用意し、バッテリーには早くもリチウムイオンを搭載するなど、意欲的な設計が行われていました。

 しかし試験販売な意味合いが強く、販売台数はわずか100台。10・15モード燃費の数値が伸びなかったことも指摘されました。

 また、再生を図っていた当時の日産では、コストがかかるハイブリッド車の開発が難しかったことから、国内では、2010年の「フーガ ハイブリッド」までハイブリッド車の開発が行われませんでした。

 北米で販売していた「アルティマ」のハイブリッドシステムには、なんとトヨタ製を採用していたほどです。

 一方で日産は「次世代のクルマの主流はEV(電気自動車)である」と考え、EVの開発に注力。2010年には世界初の量販EV「リーフ」を完成させます。

 その頃トヨタは、コンパクトカー「アクア」などハイブリッド車の販売は絶好調でした。

 対する日産は、2012年発売の2代目「ノート」に1.2リッター3気筒のダウンサイジングエンジンを搭載して臨み、好調な売れ行きを記録。発売後2週間で、2万台以上のオーダーを受けることに成功しています。

 とはいえ、市場はハイブリッド車を欲していたのは確か。日産も営業サイドからもハイブリッド車が欲しいという声があがっていました。

 しかし、すでに勢力を築いていたトヨタとホンダに立ち向かうのは容易ではありませんでした。

■既存技術を有効活用して急きょ誕生した「e-POWER」

 そこで日産はノート用の3気筒エンジンと培ったEVの技術を有効活用。エンジンを発電専用にチューニングの上、モーター・バッテリー・制御装置をリーフから流用して組み合わせたシリーズ式ハイブリッド「e-POWER」を急きょ完成させます。

 そして2016年に実施された、2代目ノートのマイナーチェンジモデルで初採用しました。

量販化に成功した日産独自のEV技術を有効活用し誕生した「e-POWER」量販化に成功した日産独自のEV技術を有効活用し誕生した「e-POWER」

 トヨタのスプリット式ハイブリッド(ストロングハイブリッド)は、状況に応じてメインのパワーソースをモーター・エンジンで使い分けることができるため、絶大な省燃費性能を可能とします。

 ホンダではエンジンを主動力としてモーターがアシストするパラレル式ハイブリッドの「i-DCD」、「IMAシステム」、スプリット式の「e:HEV」などいくつか種類がありますが、いずれも複雑な機構や制御が必要になります。

 ところがe-POWERでは、エンジンを発電専用に割り切ったため、構造が簡単。製造コストも下がりました。

 既存のEV技術応用によって開発コストも抑えられ、他社のハイブリッド車よりもリーズナブルな価格設定を可能としました。

 EVではモーターが走り出してすぐに最大トルクを生むため、アクセルを踏んだ瞬間に気持ちよく加速する特性がありますが、駆動をモーターのみとするe-POWERも、EV同様のレスポンスの良さ・力強い加速を美点としています。

 エンジンは発電しない間は停止するため、静粛性にも優れています。

 心地よい操縦感覚、価格の安さ、燃費の良さからe-POWERを積んだノートは大ヒット。ノートを約30年ぶりに国内での月間販売台数トップへと引き上げました。

 いわば「急ごしらえで誕生」したともいえるe-POWERでしたが、その後2018年にはミニバン「セレナ」(5代目)にも搭載され、好評を博しています。

 現在はインバーターの小型・軽量化、モーター強化などが行われた第2世代e-POWERが、「ノート」(3代目)をはじめ「ノート オーラ」「エクストレイル」「キックス」「セレナ」(6代目)などに搭載されています。

 なおe-POWERには、高速走行時には燃費が落ちるという、EVと同じデメリットもあります。

 そのため、日産と同門のルノーが「ルーテシア」などにハイブリッドシステムを搭載した際、日産の「e-POWER」を選ばず自社で「E-TECH」を開発しています。

 平均速度域が高い欧州では、e-POWERでは不利になると判断したためです。

 こうしたデメリットを解消すべく、エクストレイルや欧州向けの「キャシュカイ」では、発電用エンジンに日産が世界で初めて量産化に成功した可変圧縮比エンジン「VCターボ」を採用して、低燃費と高出力を両立させる工夫を施しています。

 今後も搭載エンジンのさらなる高効率を図るなどし、弱点とされる高速燃費の改善を図っていくものとみられます。

日産では現在、モーター、インバーター、減速機に加えて、発電機、増速機の5つの部品をモジュール化したe-POWER用電動パワートレイン「5-in-1」を開発中。エンジン車同等のコストを目指しているといいます日産では現在、モーター、インバーター、減速機に加えて、発電機、増速機の5つの部品をモジュール化したe-POWER用電動パワートレイン「5-in-1」を開発中。エンジン車同等のコストを目指しているといいます

※ ※ ※

 EVまでの「つなぎ」で出したe-POWERですが、今やEVと並んで日産の象徴となりました。

 日産も今ではe-POWERを今後も電動化戦略の中心に置くとしており、今後も搭載車種の増加は間違いないでしょう。

 2023年3月には、EVとe-POWERの主要部品を共有化してモジュール化した次世代パワートレイン「X-in-1」を発表しています。

 こうした次世代e-POWERが今後どのような車種に搭載されるのか、楽しみにしたいと思います。

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