まじ? ブレーキダストやタイヤまで環境規制の対象に! 欧州排ガス規制「EURO7」が日本車に与える影響とは
くるまのニュース / 2024年7月10日 23時10分
メディア向けでは日本初公開、ブレーキの粉塵を計測するという珍しい試験機を神奈川県内で拝見しました。
■ブレーキダストやタイヤまで環境規制の対象に
ユーザーが所有車を洗車する際、ホイールの汚れを気にする場合があるでしょう。
最も気になるのは、泥やホコリではなく、黒いススのようなものでホイールの表面にこびりついてしまうことではないでしょうか。
それが、ブレーキのパッドや、ブレーキローターが摩耗して発生するブレーキの粉塵です。
このブレーキの粉塵について、欧州での次期環境規制であるEURO7で規制が始まることを受けて、自動車メーカーや自動車部品メーカー各社では対応策の協議が本格化しているところです。
欧州の自動車に対する環境規制は、これまで主に排気ガスに含まれる成分に対して規定されてきました。
それが2020年代に入り、グローバルでカーボンニュートラルに代表されるように地球環境に対する厳しい目が産業界に向けられるようになり、そうした流れの中で今後はブレーキの粉塵に対する規制が導入されるのです。
日本を含めて世界の主要国や地域がそれぞれ、自動車に対する環境規制を行っていますが、欧州が先頭を切ってブレーキの粉塵対する規制を決めた形です。
現時点でのEURO7施行予定は、新車では乗用車と小型商用バンが2026年11月末とし、2027年11月末までのすべての車が対象となります。
大型車は若干遅れて、それぞれ2028年5月末と2029年5月末になる見込みです。
では、ブレーキの粉塵をどうやって計測するのでしょうか。
ブレーキの粉塵を計測するという珍しい試験機をメディア向けでは日本初公開
今回、オーストリアの自動車関連大手のAVL(エイヴィエル)ジャパンが自社のテクニカルセンターに導入したばかりのブレーキ粉塵規則テストシステムを一部メディアに公開しました。
第一印象としては、システム全体としての見た目がかなり大きいという点です。
基本的な構造は、車両全体ではなく、計測するブレーキシステムだけが作動する制御装置に取り付けるもの。
そこに整流された空気をあてて、ブレーキシステムから発生する粒子状物質(パティキュラー・マター:PM)を計測する仕組みです。
こうしたブレーキの粉塵に対する計測方法は、世界技術規則(ゼネラル・テクニカル・レギュレーション:GTR)によって公開されており、AVLのシステムもそれに従った上で、AVLが複数の特許を取得しているトータルシステムとして仕上げてあります。
計測のためのブレーキ作動のサイクルは、国際基準であるWLTP(ワールドワイド・ハーモナイズド・ライトヴィークル・テスト・プロシージャ)を用います。
WLTPには燃費や排ガス対応のサイクルがありますが、こちらはブレーキの粉塵計測の専用基準となります。
総時間は1万6000秒(4.4時間)で距離にして192kmで303回のブレーキ操作を行うという厳しい内容です。
この試験方法で計測できるのは、発生する粒子の質量と、粒子の数。
ただし、現在、EURO7で明らかにしている規制値は、PM10という種類の粒子での質量7mgだけ。
今後は、PM10に対する粒子の数や、他の種類の粒子についての質量や数について規制値が設定される可能性があります。
AVLジャパンが自社のテクニカルセンターに導入したばかりのブレーキ粉塵規則テストシステム
さて、一般的には欧州車は日本車と比べてブレーキダストが多く、ホイールが汚れる度合いが大きいという印象があります。
欧州車は、ドイツのアウトバーン等の超高速走行が対象となるため、ブレーキパッドだけではなくブレーキローターの摩耗度が大きくなるブレーキの基本設計をしていると言われています。
実際、EURO7を対象としたブレーキの粉塵の計測を行うと、そうした事実が確認できているようです。
むろん、日本車も欧州の走行環境ではブレーキの負担は日本と比べて厳しくなりますが、
多くの日本車はブレーキパッドによる摩耗を重視する設計の傾向があるようです。
また、日本車はハイブリッド車の導入比率がグローバルで高いため、モーターの回生による回生ブレーキが機械式ブレーキの負担を減らしているということも事実です。
EVを含めて、電動車に対しては、EURO7のブレーキの粉塵の規制値設定を調整しているところです。
今後、日本における環境規制、また型式指定の認証でブレーキの粉塵に対する規制や基準が組み込まれる可能性は十分にあるため、日本の自動車メーカー各社は現状よりもさらに環境にやさしいブレーキシステムの研究開発を進めることになりそうです。
このほか、世界技術規則(ゼネラル・テクニカル・レギュレーション:GTR)ではタイヤの摩耗におけるPMなどの規制についても今後実施することを明らかにしています。
その試験方法や規制値については現在のところ未確定ですが、タイヤについてもタイヤメーカーと自動車メーカーは新たなる環境対応が必要になることは間違いありません。
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