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トヨタもホンダも「アイドリングストップ」なぜ廃止する? ユーザーにメリットなし!? “消えゆく存在”となった理由とは

くるまのニュース / 2024年8月15日 12時50分

停車中にエンジンを止めて、燃料を節約する「アイドリングストップ機構」ですが、採用する車種が徐々に減少しています。その背景には、いくつかの理由があるようです。

■「アイドリングストップ機能」なぜ廃止の方向へ?

 発売からわずか1か月で約3万8000台の受注を受け、ホンダ新型「フリード」は幸先の良いスタートを切りました。
 
 そんな新型フリードに関して、“従来はあったけれど、新型で廃止された装備”が話題になっています。それは「アイドリングストップ機能」です。

 先代フリードのガソリン車にはアイドリングストップ機能が備わっていたのですが、実は新型モデルには装備されていません。

 アイドリングストップ機能とは、クルマが信号待ちなどで停車するとエンジンを自動停止して燃料を節約、発進する際は自動でエンジンを始動するシステムです。

 何を隠そう、アイドリングストップ機能が廃止されたホンダ車はフリードに限りません。「フィット」や「ヴェゼル」はマイナーチェンジでひっそりと装備から消えました。

 また新規車種の「WR-V」は最初からアイドリングを非採用。すなわち、最近のホンダ車ではアイドリングストップ機能をやめる方向となっていることがわかります。

 しかも、そんな流れはホンダだけではありません。トヨタは「ヴィッツ」の実質的な後継車として2020年に「ヤリス」を発売しましたが、このヤリスにもアイドリングストップ機能は備わっていません。

 果たして、どんな事情があるのでしょうか。

 ヤリスがデビューしたとき、筆者(工藤貴宏)は開発者にその理由を尋ねました。すると“3つの理由”を答えてくれました。

 ひとつは、カタログの燃費数値に対してアイドリングストップ機能が与える貢献が少なくなったことです。

 2017年からカタログに記載される燃費の計測方法が日本独自の「JC08」から世界基準の「WLTC」に変わり、計測モードの変更によって停止状態の燃費が全体の燃費数値にあたえる影響が小さくなったのです。

 ふたつめは、アイドリングストップ機能を使って徹底的に燃費数値を良くする必要が、以前ほどなくなったこと。

 現在は全体的な燃費性能が底上げされ、アイドリングストップ機能を装着しなくても良好な燃費を引き出せるようになりました。

 その結果、アイドリングストップ機能に頼らなくても、低燃費車購入時の税金優遇制度を受けられるようになったことも大きな理由なのです。

 また、10年ほど前には新車購入の際にカタログの燃費数値をシビアに気にするユーザーがたくさんいましたが、全体の燃費性能が底上げされたことでそこまで気にする人が減ったことも背景にあるでしょう。

■節約したガソリン代を上回る“別の出費”も!?

 そしてもうひとつの理由は「結局、アイドリングストップ機能はユーザーのメリットにならない」ということです。

 確かに、市街地走行をすればアイドリングストップ機能により確実に使うガソリンを減らせます。だからガソリン代の節約になるのは間違いないのですが、しかし、問題はそれ以外の出費です。

アイドリングストップ無しで36.0km/Lの低燃費を実現するトヨタ「ヤリス」アイドリングストップ無しで36.0km/Lの低燃費を実現するトヨタ「ヤリス」

 アイドリングストップ機能装着車はバッテリーの寿命が短く、しかも“普通のバッテリー”に対して高価なアイドリングストップ機能車用のバッテリーが指定されることが多いので、バッテリー交換の出費がかさむのです。

「少しずつガソリンを節約しても、バッテリー交換で一気に、またはそれ以上(ガソリン節約で浮いたお金以上)が消えてしまうので、お客様へのメリットがない」という開発者の言葉が印象的でした。

 もちろん、アイドリングストップ機能の搭載にもコストがかかるので、その機能をつけなければ車両価格も抑えられることになります。

 トヨタはヤリスだけでなく、「ノア/ヴォクシー」や「アルファード/ヴェルファイア」など、多くの車種でアイドリングストップ機能非搭載としました。

 ガソリンを節約し二酸化炭素を減らす効果はゼロではありませんが、費用対効果の面で見合わず消えゆく存在となっているのです。

 他メーカーのエンジニアは「さらに理由がある」と言います。それは運転時の違和感です。

 停車中のアイドリングストップ機能状態から発進しようとすると、エンジンを始動する必要があるのでアクセルを踏んでもほんのわずかだけ発進にタイムラグがあり、短い時間ですがそれが運転の違和感となってしまうのです。

 また多くの車両はエンジン再始動時にわずかながら音や振動があり「それを気にする人が多くいると認識している」と言います。

 アイドリングストップ機能を嫌い、機能をオフにしているドライバーも多くいる理由はまさにそこにあるのでしょう。

 というわけでメリットもあるものの、さまざまな状況を加味して非装着の方向。それがアイドリングストップ機能の現在の立ち位置なのです。

 ちなみにハイブリッド車は、停止中だけでなく状況によって走行中にもエンジンを止めるのが一般的。非ハイブリッドのアイドリングストップ機能装着車よりもその燃費向上効果が高いのに加え、走行用バッテリーとは別に搭載されている補器類バッテリー交換時の金銭的負担も少なく済むからです。

 また、エンジン始動方法の違いにより、その際の音や振動もガソリン車の再始動時とは明確に異なるスムーズさなのもハイブリッドの特徴です。

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