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新型ヴェルファイアがさらに上質&スポーティな走り心地に!? HKSの車高調「HIPERMAX S」に試乗して感じた「ブレないコンセプト」とは

くるまのニュース / 2024年8月20日 8時30分

自動車用アフターパーツメーカーのHKS(エッチ・ケー・エス)が販売しているサスペンション「HIPERMAX S」と「HIPERMAX R」の体感試乗会が2024年6月15日、観光有料道路「アネスト岩田 ターンパイク箱根」にて開催されました。今回は、発売されて間もない新型ヴェルファイア用サスペンションの試乗レビューをお届けします。

■新型ヴェルファイアのオーナーは乗り心地に不満を感じている?

“アルヴェル”ことトヨタの「アルファード/ヴェルファイア」は2023年6月の発売から1年以上が経過し、街でも頻繁に見かけるようになりました。先代モデルの販売台数ではアルファードの圧勝でしたが、現行モデルは筆者の肌感覚で五分五分と言った印象です。

 なぜ現行モデルではヴェルファイアを見かけることが多くなったのか。それは単なる意匠の違いだけでなく、ショーファーニーズまで考慮したサルーン的なアルファード、運転する楽しさを追求したツアラー的なヴェルファイアと、走りに違いを持たせたことによって、顧客の好みでクルマを選ぶことができるようになった点が大きく影響していると筆者は分析しています。

 ただ、ヴェルファイアユーザーの声を聞くと、「走りがいいのはわかるけど、乗り心地がちょっとね……」と言う意見があり、アルファードユーザーの声を聞くと、「乗り心地はいいけどフワつきが気になる……」と、純正のサスペンションだといいとこ取りができていないのが現状としてチラホラあるようです。

 この乗り心地の不満を解消できるというアイテムが、今回紹介するHKSの車高調整式サスペンション「HIPERMAX S(ハイパーマックス エス)」です。

 ミニバンは基本素性が悪いことから、走りのレベルを引き上げるには快適性を犠牲にせざるを得ない、というのがこれまでの定説でした。その一方で、ちまたでは「ノーマルより乗り心地が良くなる」というサスペンションキットも発売されていますが、それらの多くはバネレートをかなり低く設定し、乗り心地全振りという割り切ったセットのモノが多いのも事実……。

HKSの車高調整式サスペンション「HIPERMAX」のSとR。共通のキャッチコピーは「走り心地」だHKSの車高調整式サスペンション「HIPERMAX」のSとR。共通のキャッチコピーは「走り心地」だ

 ちなみにHIPERMAXシリーズ共通のキャッチコピーは「走り心地」です。これを要約すると、楽しいだけでも、快適なだけでもないHKSのサスペンションに対する考え方で、数値にはなかなか出てこないが、ドライバーが感じる部分……例えば、扱いやすい/安心感/懐の深さ/走りやすさといった“官能的”な領域までこだわったモノづくりを示しています。

 そんなこだわりがミニバンでも感じられるのか? 今回はHIPERMAX Sが装着されたヴェルファイア・エグゼクティブラウンジで、一般道~ワインディングを中心に試乗してきました。

 なお、このヴェルファイアにはYOKOHAMA AVS MODEL F50(20×8.5J +35 5H-120)のホイールと、同じく横浜ゴムのタイヤ、アドバンdB V552(245/45R20)が装着されています。一般的にインチアップされたタイヤホイールは乗り心地が悪化する傾向にあるのですが、そのあたりがどう影響してくるのかにも注目です。

試乗車にはAVS MODEL F50とADVAN dB V552が装着されていた。適度なローダウンも相まってスポーティで上質な外観だ試乗車にはAVS MODEL F50とADVAN dB V552が装着されていた。適度なローダウンも相まってスポーティで上質な外観だ

 アルファードとヴェルファイアではボディ補強のセットアップが異なるため、ヴェルファイア用のHIPERMAX Sには独自のセッティング/バネレート(フロント:7kg/リア:10kg)が与えられえていますが、シリーズとしては「単筒式(安定した減衰力特性)、「倒立式(シッカリとした剛性感)」、「全長調整式(ストローク量確保)」、「Dual PVS(素早い減衰の立ち上がり)」、「WRニードル(ワイドレンジ減衰力調整:30段)」、「アドバンスドバンプラバー(急激な動きの変化を抑える」などの技術が採用されている点はアルファード用も共通です。

 HIPERMAX S出荷時の基準車高もアルファード/ヴェルファイアでは異なり、ヴェルファイア用ではフロント39mm、リア22mmのローダウン量になっています。実際にクルマを見てみると「いやらしくない適度なローダウン量」ですが、クルマ全体のスポーティさがかなり引き上げられた印象です。

■上質な乗り心地のカギは「タイヤをいかに味方に付けられるか」

 走り始めてまず感じたのは、試乗車はインチアップされているにもかかわらず「本当にノーマルより乗り心地がいい!!」でした。ただ、フワフワした乗り心地の良さではなく、シャキッとしているけど不快な感じがない、要するに“いなし”の効いた乗り心地です。

インチアップしているにもかかわらず、ノーマルよりも上質でスポーティな乗り味に驚いたインチアップしているにもかかわらず、ノーマルよりも上質でスポーティな乗り味に驚いた

 もう少し具体的に言うと、ギャップを乗り越えた時にノーマルは入力が「ドン」とダイレクトに伝わる上に、吸収は「シュッ」と時間軸が速いので、どこか揺さぶられ感が残るので硬さを感じますが、HIPERMAX Sが装着されたヴェルファイアでは入力は「トン」とオブラートに包まれたような優しさの上に、吸収は「スーッと」と少しだけ時間をかけて収まる印象です。つまり入力の伝わり方に過度な所がないのです。

 バネレートもダンパーの減衰力もノーマルよりハード側の設定になっていますが、そのバランスが整っていることに加えて、偏平タイヤをシッカリ撓(たわ)ませることで初期入力をタイヤで吸収→その先はサスペンション側で吸収、といった連携がノーマル以上に上手にできていると分析できます。

 要するに、乗り心地というのはバネ、ダンパーが柔らかければOKではなく、「タイヤをいかに味方に付けられるか」、「そのためにはバネ/ダンパーはどうあるべきか?」を考えた設定が重要で、それをHIPERMAX Sができている…と言うわけです。

 もちろん、軽量な鍛造ホイールであるAVS MODEL F50のホイールと、プレミアムコンフォートタイヤのADVAN dBが良い仕事をしていることも付け加えておきましょう。

この「沈むけど粘る」乗り味は現行型のレクサス「LM」にかなり近いぞ!この「沈むけど粘る」乗り味は現行型のレクサス「LM」にかなり近いぞ!

 さて、乗り心地が良くなってもハンドリングが悪化したらスポーツサスとしてNGでしょう。しかし、そこに関してはHIPERMAX Sは抜かりなしと言うか、むしろ本領発揮の部分です。

 一言で言うと、ノーマルよりも操作に対して意のままに動くのはもちろん、より自然、より素直に曲がってくれます。もう少し具体的に言うと、コーナリング時はステアリングを切り始めた瞬間からノーズがスッと素直にインを向くので旋回姿勢に持ち込みやすいのと、コーナリング姿勢もまるで重量配分が変わったかのように荷重を4つのタイヤに上手に振り分けてきれいに曲がる印象で、とにかくハンドルで曲げるのではなく、クルマ全体で旋回できている印象が強いと感じました。

 このあたりもバネ/ダンパー/タイヤホイールのバランスによるものです。バネレートはフロントよりもリアのほうが高い値ですが、これによりリアの倒れ込みを抑えることで安定性が増したのと、クルマはよりハッキリ動くようになったことで、フロントもより旋回性に振った味付けにすることができたのでしょう。その結果、サスは「沈み込むけど粘りがある」のです。

 筆者はノーマルのヴェルファイアを先代の「ミニバンの高級車」に対して「高級車のミニバン」と形容していますが、HIPERMAX Sの装着により「ドライビングプレジャーを備えた」というキーワードをプラスしたいくらいです。「この感覚、どこかで味わったことあるな?」と思い出すと、DIRECT4が搭載された現行型のレクサス「LM」にかなり近いな…と。

HIPERMAX Sが「ミニバンでもコンセプトが全くブレていない」ことに驚いた!HIPERMAX Sが「ミニバンでもコンセプトが全くブレていない」ことに驚いた!

 そろそろ結論に行きましょう。筆者は以前、HIPERMAX S/Rを装着したモデルに乗り、「サードパーティーのサスペンションで“乗り味”について語る時が来た」と驚きましたが、その一方で「あのフィーリングがミニバンでも成立するのか?」という心配があったのも事実です。

 ただ、今回試乗してみて「ミニバンでもコンセプトが全くブレていない」ことがわかりました。一般的には「乗り心地ならアルファード」、「走りならヴェルファイア」と言われますが、HIPERMAX Sはどちらも妥協しないサスペンションに仕上がっているのは、筆者が保証しましょう。

 ちなみにヴェルファイア用のHIPERMAX Sはアルファード用とは別設定ですが、具体的には「アルファード(FF)用」「ヴェルファイア(FF)用」「アルファード&ヴェルファイア(4WD)用」と分けられています。もちろんボディ補強の違い、車両重量の違いなどから「理想の仕様は別々」という考え方によるものだと思います。

 ミニバンであっても「ブレないコンセプト」を実現させてしまうことこそが、HKSのHIPERMAX Sのポテンシャルの高さを証明しており、同時に新型アルヴェルの素性の良さも証明している…と言っていいかもしれません。

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