エンジン車は無くなるの? 世界の流れ…変わった? トヨタ・スバル・マツダが「新型エンジン」開発!電動化時代でも「内燃機関を残す」 カギはCN燃料か
くるまのニュース / 2024年9月2日 5時50分
今後、内燃機関・エンジンは生き残るのでしょうか。日本政府は2035年までに販売される車の100%を電動車とする方針を固めています。一方、同様の方針を掲げていた欧州連合(EU)は、エンジン車を2035年以降も一部容認する方向転換をしました。昨今の状況を振り返りつつ、課題などを見ていきます。
■「内燃機関を残す」 カギは?
日本政府は2035年までに販売される車の100%を電動車とする方針を固めています。
一方、同様の方針を掲げていた欧州連合(EU)は、エンジン車を2035年以降も一部容認する方向転換をしました。
そうしたエンジン車の将来が不確定な中で2024年5月28日にトヨタ・スバル・マツダは新たなエンジン開発を発表する他、各社のカーボンニュートラルへの取り組みならびマルチパスウェイ戦略を明かしています。
気候変動の要因とされる温室効果ガス(GHG)の削減、とりわけその大半を占める二酸化炭素(CO2)削減のため、さまざまな業界、分野でカーボンニュートラルが進められています。
カーボンニュートラルとは、CO2の排出を削減する対策をした上で、どうしても減らせない部分も森林などのCO2吸収量以下にまで抑え、排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)を目指すものです。
CO2排出が実質ゼロとなることで、産業革命(18〜19世紀)以前の平均気温から気温上昇を1.5度以内とするのを目指しています。
平均気温の上昇が1.5度を超えると、気候変動がさらに激しくなるとシミュレーションされているためです。
燃料をエンジンの中で燃やして走るクルマ、そして自動車業界も、カーボンニュートラルへ向けて対策が行われていることは、知られるところです。
20世紀の終わりから各メーカーがハイブリッド車を開発、販売していることは、その代表例といえるでしょう。
そして、走行時に限っていえばまったくCO2を排出しない電気自動車(EV)も、航続距離やコストといった弱点の改善に向けた開発が続いています。
そこで必然的に生じるのが、CO2を排出するガソリン車をなくそうとする世界的な流れです。
2015年の第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で、前述の平均気温上昇の幅を1.5度以内に抑えるなどが盛り込まれた「パリ協定」が採択されて以降、多くの国がおおむね2030〜2035年までにエンジンのみで動くクルマの販売を禁止する方針を示しました。
日本政府も、2035年までにエンジン車の販売をゼロとすることを目標としています。
もっとも、ハイブリッド車はこれ以降も販売が認められる方針であるため、ガソリンや軽油を燃やす仕組みがクルマから完全に消え去るわけではありません。
しかし、ここ1年ほどの間で「エンジン車撤廃」の流れに変化が出始めました。
EUは2023年3月、2035年のエンジン車販売を禁止するという方針を一部変更。
GHG排出のネットゼロを実現できるe-fuel(合成燃料)を使用するのであれば、エンジン車の販売継続を容認する姿勢に転じたのです。
これは、世界的にも大きなインパクトを与えるニュースとなりました。
前述の通り、欧州域内の国々は2015年以降よりエンジン車禁止を打ち出し、EUとしても2021年、気候変動政策パッケージの「Fit for 55 Package」の中でエンジン車の販売禁止を盛り込んでいました。つまり、わずか2年ほどで容認に転じたことになります。
背景には、フォルクスワーゲングループをはじめとした自動車メーカーを抱えるドイツが、e-fuelの使用を条件にエンジン車の販売継続を主張したことにあります。
結果としてEUはドイツの主張を受け入れ、原則的にはエンジン車の販売禁止を掲げつつも、全面禁止とはなりませんでした。なお、e-fuelは既存のエンジンにもそのまま使える燃料です。
今のところ、EU以外の政府レベルで追随する動きは見られません。しかし、メーカーとしてはエンジン車を存続させたい意向も垣間見え、とりわけドイツと同様に自動車が一大産業である日本においては顕著です。
トヨタ・スバル・マツダはスーパー耐久にて「GR86」「BRZ」「MAZDA3」「ロードスター」にCN燃料を用いて参戦している(画像はBRZ)
前述の2024年5月28日に行われた トヨタ・スバル・マツダの発表ではそれぞれの「カーボンニュートラルの実現」「内燃機関を見捨てない」「エンジンって良いよね」という共通の想い、そして各社の個性を活かした新開発エンジン技術が発表されました。
なお新開発エンジンでは、化石燃料から脱却し、e-fuel(合成燃料)やバイオ燃料、液体水素など多様な燃料に対応することでカーボンニュートラルを実現することにより、CN燃料の普及にも貢献することを目指すとしています。
なおCN燃料に関して、日産やホンダもe-fuelの研究を進めており、さらにホンダではパワーユニットサプライヤーとして復帰予定のフォーミュラ1(F1)は2026年より燃料の100%をCN燃料とすることが決まっています。
またトヨタはかねてから既存のエンジンを改良して、水素エンジンの開発を行っています。
すでに日本のスーパー耐久シリーズなどでレースに参戦し、研究を進めており、燃料電池車(FCEV)と共に水素社会の実現に取り組んでいます。
■今後、エンジンはどうなる? e-fuelの課題は?
とはいえ、2030年代に向けてエンジンが生き残るのか、それとも、なくなっていくのかはいまだ不透明です。
理由のひとつはEU加盟国も含め、エンジン車販売禁止・ゼロの方針を変えた国は少ないことが挙げられます。
それとは別に、前述のe-fuelが必要な量を確保できるのか、という問題もあります。
従来、環境に優しい燃料としてトウモロコシを原料としたバイオエタノールがありましたが、「食料か、燃料か」という論争がありました。
つまり、食糧不足の国・地域がある中で、トウモロコシを燃料に使うのはいかがなものか、という意見があったのです。
e-fuelは、穀物由来ではなく水素とCO2の合成燃料ではありますが、「効率よく」「クリーンに」「需要に見合う」水素を生産する技術はまだ研究開発の途上です。
トヨタ・スバル・マツダはスーパー耐久にて「P1レーシング・フューエルズ」のCN燃料を使っている
また、CN燃料となると水素の他、バイオマス(植物の使われない部分などが原料)由来や廃油由来などの場合があります。
やはり原料がどれだけ確保できるのかという問題が生じますし、「燃料のために植物を育てるのか」といったバイオエタノールと似たような議論が起こる可能性もあるでしょう。
※ ※ ※
e-fuelを使うエンジン車も、EVやハイブリッド車といった電動車も、それぞれ長所と短所があります。
各国の首脳、メーカー、有識者はもちろん、ひとりひとりの一般市民も正しい選択は何かを考える必要に迫られているといえるでしょう。
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