えええええ!? 都営バス「約8割が赤字」でも生き残っているワケ 「一発逆転の黒字化」を阻む「東京都心」という魔境地帯
くるまのニュース / 2024年10月23日 5時50分
東京都心の隅々に路線を巡らせる都営バスですが、経営的には赤字だと言います。なぜ黒字が難しいのでしょうか。背景には東京特有の事情もあるといいます。
■都営バス 意外と経営苦しい現状
東京の都心部で生活や仕事をしている人は、都営バスに乗る機会も少なくないでしょう。大都会を走るバスというだけあって「乗っても座れない場合がほとんど」と感じるかもしれません。
言い換えれば「繁盛している」ように見えますが、実のところ都営バスは経営的に赤字です。
東京都交通局が発行している2023年版の『経営レポート』によると、都営バスの「営業収益」は約387億円。これは、一般企業の売上高に当たるものです。
一方で、最終的な損益になると、約18億円の純損失です。地下鉄などを含めた都営交通全体で見ても、約21億円の損失となっています。
路線別に見ると、「赤字路線」「黒字路線」は大きくばらつきがあります。これらを判断する指標が「営業係数
というものです。
営業係数というのは「100円の収入を得るのにかかる費用」のこと。100を切れば一応の儲けが出る状態、逆に100を上回ると収入より費用の方が多くかかっている状態です。
具体例を出すと、錦糸町駅前〜門前仲町を結ぶ「都07」系統は、1日あたりの収入が300万円超で、営業係数も78と優秀な数字を残しています。
起終点の両方が複数路線を持つ駅であることだけでなく、途中のルートには都営新宿線の西大島駅や商店街・大型商業施設が並び住民も多い砂町エリア、江東運転免許試験場、東京メトロ東西線の木場駅など、移動需要を効率的にピックアップしています。
他にも、錦糸町駅前~東京駅丸の内北口を結ぶ「東22」系統、池袋駅東口から明治通りを進み王子駅前から荒川を越えて西新井駅前に至る「王40」系統など、ターミナル駅や企業も住民も多い地域の路線が「営業係数100未満」の黒字路線です。
こうした、営業係数が100を切る系統は、全127系統のうちわずか26系統しかありません。残りは収支がトントンか赤字というわけです。
走れば走るほど赤字がかさんでいく都営バスの現状。しかし都営バスは「公営の路線バス」です。私企業が参入を渋るような、儲けを出しにくい「交通空白地帯」を埋める役割を持つことも少なくないからです。また、高齢者や障がい者といった「交通弱者」にとって、日常の足となっているケースもあります。
そもそも、営業係数こそ100を大きく上回る赤字路線なものの、1日あたりの乗車人員の絶対数は1万人前後の路線もいくつか見られます。その路線を必要としている利用者自体はかなり多いということです。
やはり都営バスは「財政規模が大きい」という点が大きいです。地域内の経済状況も良好な東京都が運営しているため、日本の他地域の路線バスから比べればまだ良い環境にあるのかもしれません。
■都営バスの経営に関する東京都交通局の考えは?
とはいえ、あまりにも収益性が悪いと、持続的な経営に影響しかねません。この点での対策を東京都交通局に聞くと、以下の回答がありました。
都営バスが導入した電気バス(画像:写真AC)。
「都営バスでは、経営改善に向け、収入、支出の両面からさまざまな取り組みを行っています。
支出面ではこれまでも、民間事業者への営業所の管理の委託や、現業系職員の給与水準の見直しにより、効率的な事業運営に努めてきました。
さらに、コロナ禍を受け、営業所の水道光熱費などの経常的経費や、車両の更新などの投資的経費について幅広く見直しを行っています。
一方、収入面では、需要が高まっている地域においては、路線やダイヤを増強するとともに、大規模な集客施設等とのタイアップや広報誌の発行などにより沿線の魅力をPRし、需要の創出を図っています」
ところで、政府は自動運転の普及によって、ドライバーなどの人手不足を解決しようとしています。すでに路線バスではレベル4の導入が各地で実証段階に入っています。ただし、都営バスにとって、これを採るには障害があるようです。
「都営バスは、都内の厳しい走行環境で運行しており、自動運転の実現には、駐停車車両や自転車の急な飛び出し等を回避することや、急制動時のお客様の安全確保などの技術的な課題があります。
また、自動運転のシステムや安全性に対するお客様や地域住民の方々の理解など、社会的に受け入れられる環境が整うことも必要と考えています」(交通局担当者)
そのうえで、決して活用の可能性が乏しいわけではなく、「将来的に乗務員不足の解消にも資する技術であると考えています。今後も、開発動向を注視するとともに、都営バスのフィールドや運行上のノウハウの提供等を通じて技術開発に協力していきます」と話します。
人口減少など、都営バスに限らず公共交通機関には経営がますます難しい時代になっていきそうです。今後の展望を東京都交通局に聞くと、次の回答がありました。
「都営バスは、関東大震災で被害を受けた都電の代替として100年前にスタートしました。これまで、急激な需要の変化があった際も、路線・ダイヤの工夫により、限られた人員や車両などを最大限活用して、多くのお客様にご利用いただいてきました。
また、東京都が経営する公共交通機関として、車両のバリアフリー化や先進的な環境対応、大規模災害時における被災者の緊急輸送など、都政並びに社会の課題解決に貢献しています。
一方、今後は、人員不足のほか、鉄道新線の開業や新たな交通手段の普及など、事業環境は大きく変化していくことが予想されますが、これからも、お客様や都民の皆様のご利用やご声援を力に、時代の変化に的確に対応することで、期待に応えていきます。次の100年もよろしくお願いいたします」
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