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トヨタ新型「ランクルe」登場は? 新型「ジムニーe」は白紙に? 本格「フレームSUV」の課題とは… 悩みは「Gクラスe」が解決?

くるまのニュース / 2024年11月13日 7時10分

BEV(電気自動車)でも本格クロスカントリー4WDの実現は可能でした。その解答を具現化してみせたのが、メルセデス・ベンツ「G 580 with EQ Technology」です。

■ランクルのBEV「ランクルe」、ジムニーのBEV「ジムニーe」、GクラスのBEV「Gクラスe」それぞれの動きとは

 長年本格的なラダーフレームSUVを電気自動車(BEV)に仕立てるのは難しいと思われてきました。
 
 実際に、スズキからも「ジムニーEVを諦めた」と思われる発言が出ています。
 
 一方でトヨタ「ランドクルーザー」もBEVを検討していますが、果たしてそれぞれの次期モデルの答えはどこにあるのでしょうか。

 スズキは先日、新型BEV「eビターラ」を発表して世界の注目を集めました。

 その発表会で複数のメディアに対して、鈴木俊宏社長は「ジムニーEVの発売をしない」という旨の発言をしました。

 鈴木社長は「ジムニーをEV化すると、もっともいい部分を台無しにするだろう」という主旨のコメントをしましたが、要は重量増によってオフロード性能が削れるという意味のようですが、これによって欧州でのジムニーの販売は不透明な先行きとなりました。

 スズキはすでに、2024年7月に欧州向けのジムニーの生産中止を発表しています。

 スズキが販売を取りやめたのは、ジムニーの環境性能では欧州の排ガス規制をクリアできなくなることが要因だと思われますが、その対策と思われていたのが、2023年に発表された欧州向けのジムニーEVでした。

 ジムニーEVについては、筆者は非常に懐疑的な見方を持っていました。

 スズキはHVの分野でも性能の高い製品を投入できておらす、果たしてクロカン4WDとして成立するだけのBEV技術が完成しているのだろうか、ということです。

 ジムニーのコンパクトなサイズの中に、十分な航続距離性能を持ったバッテリーと、パートタイム4WD車に匹敵する悪路走破性を持ったパワートレーンを入れなければならないのです。

 ちなみに、すでにコンセプトカーとして発表されているトヨタ「ランドクルーザーSeコンセプト」も、現段階では海のものとも山のものとも判断がつきません。

 パワートレーンシステムは、前輪車軸上に1モーター、後輪車軸上に2モーターを配置したものではと予想されていますが、それも確実ではありません。

 ただ、ランドクルーザーファンからは、“ランクルの性能がBEVで実現できるのか?”という声が多く出ているのも確かです。

 というのも、クロスカントリー4WDの市場は特殊で、ランドクルーザーもジムニーもリアルにオフロード性能を必要とするプロフェッショナルが使うからです。

 しかもこうしたユーザーは、苛酷な環境下で長期間にわたって使用するというのがスタンダードであり、そのためのラダーフレーム構造やリジッドアクスル式サスペンションだったりするわけです。

 BEVはそれとある意味で対極の構造にあります。安全性や耐久性を確保しつつも、駆動用電池の搭載による重量増を考えて、各部をできるだけ軽量化します。

 ランドローバー「ディフェンダー」のように、軽量化=ボディ剛性の低下にはつながらないことを実証したクルマもあります。

 しかし、ランドクルーザーの開発者に聞いたところでは、モノコックボディは堅牢性の点ではまだ未知数だということでした。

 さらに前述の通り、果たしてBEVでプロが納得する悪路走破性を発揮できるかという点も。

 たしかにモーターはエンジンよりも、悪路でのタイヤトラクションの制御が容易で、オンロードタイヤを履いていてもハードな泥濘地をクリアするようなパフォーマンスを見せます。

 三菱「アウトランダーPHEV」が好例で、かつての名車「パジェロ」でも厳しかった路面をラクラク走ります。

 ただし、大きな段差や岩場といったスペシャルなシーンでは別です。

 通常で考えれば、サブトランスファーのついた4WD車でローレンジにシフトし、強力な駆動力をもって望む必要があります。

 さらに、強靱な骨格、つまりラダーフレームやリジッドアクスルがないと障害物にボディをぶつけた時に走行不能になるのではと不安です。

 ですが、BEVでも本格クロスカントリー4WDの実現は可能でした。

 その解答を具現化してみせたのが、メルセデス・ベンツ「G 580 with EQ Technology」です。

■これが答え? ランクル・ジムニーの未来を示した「G 580」とは

 Gクラスといえば現在は高級SUVの感がありますが、生粋のクロスカントリー4WDとして、また軍用車として知られています。

 Gクラスの祖先ともいうべき「ゲレンヴァーゲン」は、メルセデスファンだった旧イラクのパーレビ国王が国境警備用に造らせたと言われています。

 その後、様々な国が軍用として採用しただけでなく、世界中でプロフェッショナルの道具として重宝されました。

 Gクラスに名を変えてからは高級車という立ち位置になり、さらに2018年に3代目にスイッチからは実用的なイメージは完全になくなりました。しかしその潜在性能は今もって、本格クロスカントリー4WDであることは間違いありません。

 そんなGクラスの伝統をBEVという新たな形で示したのが、G 580 with EQ Technologyというわけです。

 122kWhという大容量バッテリーによって、航続距離239マイル(約384.6km)という実用性を持っているだけでなく、画期的とも言えるメカニズムによって高い悪路走破性が確保されています。

 基本構造はラダーフレームですが、完全新造のもの。フレームの空いた中央部分に駆動用バッテリーが設置されています。

 サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアはコイルリジッド式。ですが、リアサスはド・ディオン式といってもいいものです。

 サスペンションはラダーフレームの下にアクスルが懸架されるのではなく、ラダーフレームの上に載っているような構造になっています。

 アクスルというと頑丈な鉄製の車軸を思い起こしますが、このクルマのアクスルはミッション、インバーター、そしてモーターによって構成されたメカニズムのブロックのようなもの。

 モーターは両端に配置され、そこから細いドライブシャフトを伝って駆動力がタイヤに伝達されます。

 前後2モーターずつにすることでより強力なパワー&トルクが発揮されるだけでなく、モーターとタイヤを直接細い車軸で繋ぐことで、オフロードで必要な駆動トルクの損失を防いでいるのではないでしょうか。

 また、リアは荷室積載時の耐荷重、そして路面追従性を両立させるためにド・ディオン式にしたと思われます。

 一般的にオフロード性能で考えれば、インディペンデント式のサスはタイヤを押しつける力が生まれないため不利と言われています。

 しかし、BEVの場合はモーター制御でいかようにもタイヤのトラクションをコントロールできるわけですから、むしろ路面追従性を追求した方がオンロードでも有利と言えます。

BEVでも本格クロスカントリー4WDの実現は可能だと示したメルセデス・ベンツ「G 580 with EQ Technology」BEVでも本格クロスカントリー4WDの実現は可能だと示したメルセデス・ベンツ「G 580 with EQ Technology」

 ジムニーEVやランドクルーザーSeコンセプトで気になっていた“4WDローレンジ”問題ですが、このクルマではミッションにローレンジモードを付けるということで解決しました。

 さらに前後アクスルに疑似デフロック機構を備え、ICE車のGクラスと同じようなメカニズムの状態を作り出しています。

 さらに4モーターの特性を活かして、「Gターン」という機能を設定しています。

 これは無限軌道車のように片輪だけを動かすことで、その場で円を描くようにターンができるというものです。

 最大2回転までという制限付きですが、こうした機能は4モーター4WDならではと言えます。

 このように、BEVではクロスカントリー4WDは実現できないのではという疑念を、G 580 with EQ Technologyは見事に払拭し、現実のものとしました。

 しかし、メルセデス・ベンツの技術力、そして2000万円を超えるプライスのクルマだからこそできたのではないかとも言えます。

 果たしてジムニーという車格だと、どのようなBEVになったのでしょうか。それはそれで興味は尽きないところです。

 また、“絶対に生きて帰れる”が命題のランドクルーザーが、果たしてどのようなメカニズムのBEVで登場するのか、果たして価格はいくらになるのかも気になるところです。

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