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紀伊半島の「最南端」に大変化!? 無料の高速「串本太地道路」工事進行中! 関西エリアの交通を一変する「巨大ネットワーク計画」とは

くるまのニュース / 2024年11月22日 7時40分

紀伊半島の先端部にある和歌山県串本町と同県那智勝浦町を結ぶ「串本太地道路」の建設が、2021年度より始まっています。なぜこの道路が建設されるのか、紀南河川国道事務所の担当者に聞きました。

 紀伊半島の先端部にある和歌山県串本町と那智勝浦町を結ぶ「串本太地道路」の建設が、2021年度より始まっています。

 この道路が開通すれば、一体どう便利にあるのでしょうか。

 日本の国土を詳細に見ると、平地が少なく山が多い地形となっています。半島部も同様で、沿岸部の狭い平地で人が暮らし、すぐそばに山がそびえるというのは、各地でよく見られる光景です。

 こうした日本各地の半島の地形は、交通や防災の面で弱点にもなりえます。

 例えば「日本一細長い半島」と呼ばれる四国の佐田岬半島に国道が通ったのは戦後になってからで、それまで住民は陸上より海上交通に頼る比率が高い状態でした。

 また、2024年元日に発生した能登半島地震では、やはり半島特有の地形が影響し、現在も復旧、復興が行われている状況にあります。

 現在、紀伊半島南部で建設が進む「串本太地道路」は、半島のこうした弱点を補強する意味合いを持つ自動車専用道路で、従来から紀伊半島沿岸部を結んでいる「国道42号」をバイパスする役割があります。

 串本太地道路は串本町と那智勝浦町をつなぐ18.4kmの道路で、幅員は12.0mの2車線(片側1車線)です。

 北東側はすでに開通している那智勝浦道路と接続し、西側ではこちらも建設中の「すさみ串本道路」と接続します。

 この他、国道42号のエリアでは「熊野道路」や「紀宝熊野道路」の建設が進んでおり、これらが完成すると既存の道路と合わせて紀伊半島を周回する自動車専用道路網ができ上がります。

 道路網によって利便性が上がるだけではありません。国土交通省 近畿地方整備局 紀南河川国道事務所の担当者は、次のように話します。

「現状の国道42号は、沿岸部を走っています。そのため、南海トラフ地震が発生すると、串本太地道路と併行する区間の国道42号の8割が浸水するとされています」(同)

 つまり、南海トラフ地震が発生した際、周辺地域が交通面で孤立しない役割を串本太地道路が担っているということです。また、新宮市に住み、国道42号を車で走る機会の多い筆者の知人に話を聞くと、次のような現状の不安と開通への期待を教えてくれました。

「新宮や太地の方から串本へ行くときは、海と急勾配の山に挟まれている場所も多いのです。なので、運転中は津波が来ても家族を抱えて駆け上がれる場所がないか、チェックしながら走っています。

 串本太地道路には、移動の利便性以上にこうした被害の抑制や災害時の物資運搬経路として期待しています」(筆者知人)

■ほかにも様々な役割を担う「串本太地道路」

 医療面での役割もあります。

「串本太地道路の区間内に古座川町があり、ここから比較的近い救急医療施設に『くしもと町立病院』や『新宮市立医療センター』があります。開通によってやはりアクセスは向上しますが、これらは二次救急医療施設です。

観光地の「橋杭岩」(画像:国土交通省)。観光地の「橋杭岩」(画像:国土交通省)。

 より重篤な患者を受け入れられるのは、三次救急医療施設です。古座川町から田辺市の三次救急医療施設『南和歌山医療センター』まで現在は約70分かかりますが、串本太地道路とすさみ串本道路の開通後はアクセス性が向上することで約49分まで短縮される見込みです」(前出担当者)

 一方、観光面について串本太地道路の周囲に見どころがあるかと事務所担当者に聞いたところ、「有名なところでは、『橋杭岩(はしぐいいわ)』などの奇岩や、厳密には観光地ではありませんが最近話題となっている民間ロケット発射場の『スペースポート紀伊』があります」との回答でした。

 橋杭岩は、串本町の沿岸部にある岩が直線的に並ぶ場所。橋脚のように見えることから、この名が付けられたそうです。

 一方、スペースポート紀伊は民間のロケット発射場。3月に打ち上げられた初号機は残念ながら自律的な飛行中断によって打ち上げ失敗となりましたが、2024年12月に2号機の打ち上げが予定されており、以降、3号機、4号機の打ち上げも期待されます。

 串本太地道路の開通によって、地域の新たな魅力を発見できる他、宇宙とのつながりも感じられそうです。

■津波被害を防ぐために必要な「時間」

 なお、串本太地道路がいつ開通するかは、未定です。また、工事の難しさから、事業化が2018年度に決定しながら、工事着手は2021年度となりました。その難しさとは、以下のような地理的な理由によるものです。

串本太地道路の防災機能(画像:国土交通省)。串本太地道路の防災機能(画像:国土交通省)。

「道路をつくるためには測量や設計を行い、計画地の用地取得に御協力いただいて始めて工事に着手できます。また、串本太地道路は津波の影響を避けるため、山側につくっています。工事においても現在の国道42号方面からJR紀勢本線の線路を越えて現場へたどり着く工事用道路を整備するのにも、時間がかかります」(担当者)

 もっとも、山側に新たな道路をつくることは津波被害予防以外のメリットもあります。串本太地道路は並行する既存の国道と比べて、直線的な経路となっています。山や谷をカーブで避けて通るのではなく、トンネルや橋を通すことで、直線的な道路ができ、ドライバーの負担が軽減されます。

 よって、開通後はそれまでと比べて走りやすくなる期待があります。

 前出の筆者の知人は、アクセス面でも「現在は新宮市から和歌山市まで約3時間かかるため、それが短縮されるのでありがたいです」と話していました。

 ※ ※ ※

 紀南河川国道事務所の担当者は、地元の人々へのメッセージとして「災害時の交通確保、救急医療活動の支援、広域周遊観光の支援を目的に近畿自動車道紀勢線の整備を進めております。早期供用に向けて頑張ります」とコメントしました。

 2024年は、南海トラフ地震の臨時情報が発表されたこともあり、串本太地道路やそれと接続する自動車専用道路は、まさに紀伊半島南部の「生命線」となりそうです。

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