“実質130万円”で日産「最新軽ワゴン」買える!? ラグジュアリーな軽がバク売れ、なぜ? サクラはどんな人が買ってるのか
くるまのニュース / 2024年12月3日 18時30分
日産「サクラ」は、いまや電気自動車で最も売れているモデルとなりました。航続距離は短く、軽自動車としては価格も高いのですが、なぜ急成長したのでしょうか。
■「サクラ」どんな人が購入してる?
2024年度上半期(2024年の4月から9月)に国内で販売された軽/小型/普通乗用車のうち、マイルドタイプを含むハイブリッドの比率は55%に達しました。今では乗用車の半数以上がハイブリッド車です。
しかし、エンジンを搭載せず、充電された電気だけで走る電気自動車は、乗用車市場に占める割合はわずか1.5%です。ハイブリッド車の普及と併せて「電動車」の販売比率も高まりましたが、純粋な電気自動車の売れ行きは少ないです。
日本では、充電機能を備えた電気自動車とプラグインハイブリッドは売りにくい状況で、その理由のひとつに、総世帯数の40%がマンションなどの集合住宅に住む現実があります。
充電設備のある集合住宅はわずかなので、電気自動車を所有できる世帯は一戸建てに限られ、電気自動車とプラグインハイブリッドの販売は低調ですが、電気自動車の日産「サクラ」は唯一の例外です。
2024年度上半期に1か月平均で約1700台を販売して、乗用電気自動車全体に占める割合は37%に達しました。
2023年の販売比率は42%とさらに高く、電気自動車ではサクラの売れ行きが圧倒的に多いです。
さらに、2023年はサクラの姉妹車である三菱「eKクロスEV」も1か月平均で約600台が販売され、サクラとeKクロスEVを合計すると、電気自動車全体の約50%に達します。
なぜサクラは売れ行きが堅調なのでしょうか。
日産の販売店スタッフに聞くと、「サクラは、それまで1台のクルマを使っていた一戸建てのお客様が、セカンドカーとして新たに買うことが多いです。主に買い物などに使われ、自宅で充電できて給油に出かける必要がないから便利という話もあります」と言います。
電気自動車には充電設備が必要で、一戸建てに住むユーザーが所有しやすいです。そして一戸建ての場合、以前からSUVやミニバンなどのファーストカーと、軽自動車やコンパクトカーのセカンドカーを併用する傾向が見られ、サクラやeKクロスEVはこのセカンドカーとして使われているのです。
そんな電気自動車ですが「1回の充電で走行できる距離が短い」という弱点が指摘されています。
そこで、1回の充電で長い距離を走れるようにすると、リチウムイオン電池の容量を拡大する必要が生じます。
そうなるとボディが重くなり、そのため高出力のモーターを搭載することになり、その結果、さらに大きなリチウムイオン電池が必要になる…、という悪循環に陥ります。二酸化炭素の排出量も増えるため、電気自動車の目的を達成できません。
その点で軽自動車のサクラなら、販売店のコメントにあった通り、小さなボディによってセカンドカーとして買い物などに使われます。
軽自動車である以上、長い距離を走る必要はなく、大容量のリチウムイオン電池も不要です。
その結果、ボディは軽くなり、軽自動車のコンパクトなサイズと相まって、移動に要するエネルギーを小さく抑えられるというわけです。
■条件次第では130万円で買える“カラクリ”がスゴい!
サクラXが1回の充電で走行できる距離はWLTCモードで180kmに留まりますが、車両重量も1070kgと電気自動車のなかでは軽く、1km走行当たりの電力消費量は124Whです。
一方、日産「アリア」はSUVスタイルの電気自動車で、「B6・2WD」は、1回の充電でサクラの2.6倍に相当する470kmを走行できます。
その代わり車両重量も1920kgとサクラの1.8倍重く、1km走行当たりの電力消費量もサクラの1.3倍に相当する166Whに増えます。
つまりサクラは、アリアB6に比べるとボディがコンパクトで運転もしやすく、電気代も25%節約できます。
特にサクラは走行速度の低い領域で電力消費量が抑えられ、WLTCモードの市街地モードは1km走行当たり100Whです。アリアB6の市街地モードは159Whですから、街中を中心にした使い方ならサクラは電気代を37%節約できます。
日産の軽EV「サクラ」
そしてサクラが販売面で決定的に有利な要素は価格でしょう。
サクラXの車両価格は259万9300円で、国から交付される補助金額は55万円です。
補助金額は車両価格の21%に達して、車両価格から補助金額を差し引いた実質価格は約205万円となります。
一方、アリアB6は車両価格が659万100円で、国の補助金額は85万円です。補助金額は車両価格の13%で、車両価格から補助金額を差し引いた実質価格は約574万円になります。
このようにサクラは、価格が安いだけでなく、価格に対する補助金の割合が大きいという特徴があり、そのため実質価格が205万円に下がり、ガソリン車で同等のサイズを持つ軽ハイトワゴンである日産「デイズ」の最上級グレードと同程度の価格で手に入ります。
さらに自治体によっては、国とは別に補助金を交付しています。
例えば東京都の場合、2024年度には、電気自動車は給電機能付きの場合で通常額が45万円、日産はメーカー別上乗せ補助額の10万円も加わって55万円を交付しています。この補助金額は、サクラでもアリアでも同額です。
東京都に住んでいる人がサクラを買うと、国の補助金額と合計して110万円が交付されます。
そうなるとサクラXであれば、車両価格から補助金額を差し引いた実質価格が150万円に収まり、デイズのベーシックグレードと同程度の出費で手に入ります。
※ ※ ※
補助金の原資は税金で、電気自動車は前述のように誰でも買える商品ではありません。
そこに国だけでなく自治体も含めて多額の補助金が投入される状況は賛否両論でしょう。公平性を考えると、少なくとも国と自治体の連携は図るべきでしょう。
259万9300円のサクラXに、国と東京都を合計すると110万円(東京都千代田区ならさらに20万円が加わって合計130万円!)の補助金が交付されるのは、過剰といえます。
この課題も含めて、サクラには、販売面で有利な要素が数多く集まっています。その結果、乗用電気自動車の40%近くを占める主力車種になったのです。
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