ホンダ新型「”超スゴイ”SUV」登場! ガソリン不要な“画期的システム”搭載! 2年ぶり復活の「CR-V e:FCEV」は実際どう?
くるまのニュース / 2024年12月12日 22時10分
ホンダが2024年7月に発売した新型「CR-V e:FCEV」は、国産車初の外部充電機能を持つ新しい燃料電池自動車(FCEV)です。公道での印象について紹介します。
■燃料電池車(FCEV)に電気自動車(BEV)の機能を融合!?
ホンダは2024年7月、新型SUV「CR-V e:FCEV(シーアールブイ イーエフシーイーブイ)」を発売しました。
2022年の先代モデル販売終了以来、久しぶりの国内復活となる“CR-V”ですが、新型は国産車初の外部充電機能を持つ新たな燃料電池自動車(FCEV)として生まれ変わりました。
久しぶりの国内復活となる新型「CR-V」が搭載する「画期的なパワートレイン」とは!?
1995年に誕生した初代CR-Vは、手頃な価格とサイズや親しみやすいキャラクターがうけて、日本でも人気を博しました。
その後CR-Vは代を重ねるごとにより上級路線へとシフトしていき、日本よりもアメリカや中国で人気を博するようになりました。
一方の日本では、小柄で価格が手ごろな「ヴェゼル」のような出来のよい弟分が出てきて、そちらに目が向けられるようになりました。
そんな事情により、海外で2022年に登場した6代目となる現行型のCR-Vは日本では販売されていませんでしたが、こういう形でお目見えするはこびとなりました。
ホンダは1980年代の後半にいちはやく燃料電池の基礎研究に着手して以降、技術向上に努め、これまで1998年のプロトタイプをはじめ、2002年に「FCX」、2008年に「FCXクラリティ」、2016年に「クラリティ フューエルセル」といったFCEVを送り出してきました。
次なる一手として、ホンダではより多くの人にFCEVを使ってもらうことを念頭において、便利に使えて人気のカテゴリーであるSUVをベースにFCEVを作ることにしました。
そんなことから誕生した新型CR-V e:FCEVですが、日本国内メーカー製のFCEVで初となるプラグイン機能が与えられたのが最大のポイントです。
FCEVが持つ長い航続距離(約621km/WLTCモード)と、わずか3分で水素をフルチャージできる充填時間の短さといったメリットをそのままに、プラグイン方式のAC充給電機能やDC給電機能(CHAdeMO)が備わり、家庭や外出先で外部から充電できるようになりました。
普段は水素を消費することなく、近所の日常づかいならBEV(バッテリーEV:電気自動車)のような乗り方もできる一方、長距離ではFCEVとして使い分けることができるのです。
さらには電源車としても活躍させることもできるクルマになっていて、AC充電口にコネクターを通すことで1500Wまでの家電製品を、DC給電口から可搬型外部給電機へ、それぞれ給電することが可能です。
電動車のよさを100%引き出すことができる、現時点でもっとも現実的なFCEVになったと、新型CR-V e:FCEVの開発関係者も自負しています。
■大改造せず「CR-V」の“土台”を活用出来た理由とは
新型CR-V e:FCEVに搭載されるFCスタック(燃料電池システム)は、アメリカのGM(ゼネラルモーターズ)との共同開発により生み出されたものです。
時差が大きく、言語や企業文化の異なる中での開発は多くのさまざまな苦労をともなったものの、時差があるからこそ、まさに24時間体制で進化させることができたと開発担当者は述べています。
その甲斐あって、新開発のFCスタックは従来に比べてコストは3分の1、耐久性は2倍以上を実現できました。
新型「CR-V e:FCEV」の限られた荷室空間の有効活用を図るべく搭載された「フレキシブルボード」
さらに低ハイトでコンパクトなギアボックスを新開発し、駆動用モーターとともに、FCスタックシステムを中心としたパワーユニットをボンネット下に一体化して搭載することができたのも、大きなブレークスルーのひとつです。
これにより、ガソリン車のエンジンマウントをそのまま使うことが可能となりました。
専用プラットフォーム化することなく、FCEVのさらなる普及を見据えて既存のCR-Vのプラットフォームを活用するとともに、軽快な走りとNV性能の向上を図ることもできました。
なお同システムを搭載するため、新型CR-V e:FCEVはベース車に対し、フロントオーバーハングを120mm伸ばした専用のデザインとされ、ボディサイズは全長4805mm×全幅1865mm×全高1690mmとなっています。
大容量のIPUバッテリーは既存のPHEVと同じく床下に、水素タンクは居住性、走行安定性、衝突安全性などへの配慮からリアシート下部と背面側に計2本が配置されています。
トランクが狭くなるのを逆手にとり、フレキシブルボードを活用して新しい使い方ができるように工夫されているのもポイントです。
そのあたりが大いに評価されて、新型CR-V e:FCEVは「日本カー・オブ・ザ・イヤー」部門賞である「2024-2025 テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞することができました。
■自然な走行フィールに感激! もはや「特殊なクルマ」ではない!
新型CR-V e:FCEVのドライブフィールは、FCEVらしく静かでなめらかでリニアな走りが印象的で、爽快そのものです。
定格出力60kW、最大出力130kWの数値どおり、ビックリするような速さではありませんが、31Nmの最大トルクを低速から安定して発揮する特性により、非常に車速をコントロールしやすいことも印象的でした。
新型「CR-V e:FCEV」の極めて自然な乗り味に感激!
ノーマルモードでもストレスなく走れますが、スポーツモードではよりアクセルレスポンスが俊敏になります。
エネルギーマネージメントについて、FC電力とバッテリー電力を自動でマネージメントする「AUTO」、バッテリー残量を維持する「SAVE」、FCからバッテリーを充電する「CHARGE」、十分に充電されている状態でバッテリー電力を優先して使う「EV」という4つのモードが選択できるようになっています。
FCEVなので充電するときに音もなく、出るのは水だけで、排出ガスやCO2を出すこともありません。もちろん走行時だけでなく外部に給電するときも同じなので、罪悪感がありません。
車内は広々としていて乗り心地も非常に快適です。
これにはバイオ合皮を用いたというたっぷりとしたサイズで肉厚のシートも効いているに違いありません。ステアリングホイールにも触感のよい合皮が適用されています。
走りに重々しさもなく、現行CR-Vのハイブリッドモデル「e:HEV」(2WD)に比べ、重量配分は0.8%だけフロントが増えていますが、重心高が11mm低くなったことが効いてか、ロールの遅れが小さく、一体感のある走りを実現しています。
さらには、車体の各部が強化されているほか、フロアカバーやフロントのボトムへのスポイラーやストレイキの追加などの空力対策により、試乗では接地感と直進安定性の向上が図られた効果らしき点も感じられます。
なお新型CR-V e:FCEVは、アメリカのオハイオの工場で生産された車両が日本に輸入され、年間に70台だけ導入される予定となっています。
せっかく、より多くの人にFCEVに乗ってもらえるようにと企画されたクルマであり、実際にもこのクルマに関心を持つ人は大勢いると思うので、もっと増えるといいのにと願うばかりです。
海外市場で販売される6代目「CR-V」は、国内導入がはじまった新型「CR-V e:FCEV」とはフロントまわりなどのスタイリングが異なります
※ ※ ※
今回の試乗を通じて、ベースの“CR-V”というクルマ自体の素性の良さも同時にヒシヒシと伝わってきました。
いろいろ事情はあると思いますが、せっかくなので通常のCR-Vも日本に導入して欲しいと思わずにいられません。
実は海外市場では販売されているCR-Vには、ガソリンVTECターボ車やe:HEV、e:PHEV(プラグインハイブリッド)など、さまざまなパワートレインを載せたモデルが用意されています。
筆者(モータージャーナリスト 岡本 幸一郎)は残念ながらいずれも未試乗なので、ぜひそちらにも一度日本で確かめてみたいと切に願うところです。
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