雪道で「FF」と「FR」どっちが有利? ツルッと滑る…実はその「前後」で明確な違いがあった!? 一体どういうことなのか
くるまのニュース / 2025年1月18日 19時10分
滑りやすい雪道などでは「FF」と「FR」どちらの駆動方式が有利になるのでしょうか。実はそれぞれに「一長一短」があるといいます。
■冬の滑りやすい路面 FFとFRの「挙動」の違いとは?
「雪道では4WDが最強」は、とてもよく知られています。
では「FF」と「FR」を比べたとき、雪道で有利なのはどちらなのでしょうか。
まずは、FFとFRの特徴からおさらいしましょう。
FFは「Front engine Front drive」の略で、クルマの前方にエンジンがあり、前輪を駆動する方式のことです。
FRは「Front engine Rear drive」の略で、クルマの前方にエンジンがあり、後輪で駆動する方式のことです。
FFでは、クルマを進める駆動とクルマの向きを変える操舵(そうだ)の両方を前輪が担います。
対してFRは、操舵は前輪、駆動は後輪と役割が分かれています。
FFもFRも重たいエンジンはクルマの前方にあり、重さ(荷重)は後輪より前輪に強くかかるという点は同じです。
この特色は、滑りやすい雪道や凍結路を走行するときの走行の安定性に直接的に関係します。
クルマは、タイヤと路面の間に生じる摩擦力を使って走っています。
物と物、2つの物が接しているときの摩擦の度合いを「摩擦係数」といい、この数値が小さいと「滑りやすい」状態となります。
道路で最も滑りやすいのは、氷の上に水の膜が張った状態のときで、このときの摩擦係数は0.1前後。
通常の乾燥した路面では0.45以上、一般的な雪道(圧雪路)では0.3前後となります。
路面の状態が同じで、タイヤ自体の性能も揃えたとき、摩擦を強くする要素は「タイヤにかかる荷重を大きくすること」が大切です。
つまり、タイヤにかかる荷重が少ないと、滑りやすくなります。
FFでは、クルマを進める前輪の近くに重たいエンジンやトランスミッションなどがあることで、「駆動輪に荷重がかかりやすい状態」だといえます。
対してFRは、クルマを進める後輪の近くに重たいものがないため、「駆動輪の荷重が前輪より大きく減る状態」になってしまうのです。
となると、駆動輪にかかる荷重については、FFのほうが大きくなります。
そして、クルマを前に進める力と同等に重要な要素は「操舵」です。ハンドルを切ってクルマの進む方向を定めるからです。
操舵輪は、当たり前ではありますが、FFもFRも前輪です。
ちなみに後輪を操舵するのは、フォークリフトなどごく限られた乗り物だけになります。クルマがバックするとき、前進より回転半径が小さくなる(小回りが効く)のは、操舵が後輪になりハンドルを切った方向に車体を押し出す力が大きく働くからです。
操舵も摩擦を利用しています。
クルマは慣性の法則に従って前へ前へと進もうとしますが、ハンドルを操作して進む方向を変化させるとき、実はタイヤはわずかな滑りを発生させているのです。
もし、タイヤと路面の間に滑りがまったくない状態では、ハンドルを切ってもタイヤが路面と接着材でくっつけたように、方向を変えようとせず、タイヤがたわんでクルマの姿勢が崩れるなどの破綻が生じてしまいます。
その反対に、摩擦係数が低いと、いくらハンドルを切ったとしてもクルマの方向を変えられずにまっすぐ進んでしまいます。スリップしてハンドルが効かないのはこのためです。
つまり滑りやすい路面では、操舵輪に荷重がかかるFFが有利となります。
ここまでの話では、雪道ではFFのほうが圧倒的に優れている、となります。
■FRの強みは「万が一のとき」に発揮!?
しかし、これはあくまで「滑らないための話」が前提です。
画像はイメージ
雪道など滑りやすい路面では、さらに「滑った後の制御のしやすさ」も忘れてはならない要素です。
この点においては逆に、FFよりFRのほうが有利となります。
FFは荷重がクルマの前側にあり、駆動と操舵の両方を前輪で担っているため、いったん滑り出すと、重たいエンジンを中心にコマを回すようにスピンしやすくなります。
また、FFはカーブを曲がっている途中にブレーキを掛けると、減速時に荷重がクルマの後ろから前へと移動し、後輪がわずかに浮き摩擦力を弱めてしまいます。
このときにハンドルを大きく切るなど車体に対して横方向の力が加わると、摩擦係数が小さくなった後輪が横滑りします。
この状態は「タックイン」と呼ばれ、サーキットでレーサーが使うような高度なコーナリングテクニックでもあるのですが、雪道でこれが起こると、クルマはコマのようにスピンしやすくなるので危険です。
また、FFはクルマの荷重が前輪に集中するため、滑り出した後の姿勢の立て直しが難しくなります。
対して、FRでは前輪が操舵、後輪が駆動と役割分担されているため、滑り出したとしても姿勢の立て直しは比較的簡単になります。
FRでカーブを曲がっている途中で横滑りし始めたら、後輪に駆動力を与えながら(=アクセルをある程度踏みながら)、車体が曲がっていく方向と逆にハンドルを切る(=カウンターステアを当てる)ことで、スピンをすることなく曲がっていくことができます。
これを発展させたのが、「ドリフト」と言われるドライビングテクニックです。
FRは、滑った後の制御のしやすさがあるというメリットがありますが、逆に言えば、滑りやすい駆動方式となります。
ドリフト競技車両がFRなのは、この理由です。
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